かっぱえびせん キャッチフレーズ訴訟の顛末

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去年の今頃に「かっぱえびせんのキャッチフレーズは著作物か?」という記事を書いています。かっぱえびせんのCMにおける「やめられない とまらない」というキャッチフレーズを考案したと主張する広告代理店の人がカルビーを訴えていた事件です。本件、地裁で原告敗訴後に控訴されていたようで、知財高裁における控訴審の判決文が最近公開されました。

地裁の段階から検討してみると地裁判決文によれば、原告は以下を請求していました(本人訴訟です)。

1 被告の作品(昭和39年にテレビコマーシャルフィルムの企画制作の発注を被告(注:カルビー(株)のこと)から受けて広告代理店大広放送制作部Aチームが企画制作した作品であるテレビコマーシャル)につき,原告が制作した事実を確認する。

2 被告は,自社の社内報,ホームページに広告代理店大広の社員であった原告が「やめられない,とまらない,かっぱえびせん」を考えた本人であったという事実を記載した記事を掲載せよ。

3 被告は,原告に対し,1億5000万円を支払え。

1については却下、2と3は棄却になっています。1のような法的利益に関係ない「気持ちの問題」の確認訴訟を行なっても不適法な訴えとして門前払い(却下)になってしまいます(弁護士を代理人に付けていればこのような訴状にはならなかったでしょう)。また、その他の点についても、確固たる証拠に基づいた請求ではないので認められていませんし、そもそも、カルビーはCMソングをアストロミュージックという音楽出版社(作詞者のクレジットは「電通」です)の許諾の元に使っているだけなので、カルビーの不法行為を主張してもしょうがないと言えます(まだ、アストロミュージックまたは電通を訴えるならわかります(請求が認められるかはまた別ですが))。

一方、控訴審では弁護士の代理人を付けており、原審の請求棄却の取消、名誉回復記事の掲載、100万円の損害賠償を請求と形式的にはちゃんとなりましたが、結局、全面棄却です。ここでも、テレビや新聞で「本件キャッチフレーズが被控訴人の会議の場において創作された」という趣旨の報道がされたことに対してカルビーを不法行為で訴える理由はない(訴えるならテレビ局や新聞社である)という結論になっています。

地裁判決文公開前に書いた私の記事では「やめられないとまらない」は著作物か、仮に著作物だったとしても法人著作になるのではないか(現在の著作権法ならほぼ確実に法人著作ですが、本件は旧法が適用になるので微妙)等を検討しましたが、ほとんど関係なかったわけです。なお、キャッチフレーズが著作物となり得る範囲はどこまでかというのは、それはそれで大変興味深い論点です。

そもそも、知財高裁で扱い(裁判長は高部眞規子判事です)、判決文のタイトル部には「著作者人格権確認等請求控訴事件」とは書いてあるものの、著作権すらあまり関係なかったですが、一度記事を書いてしまった以上、その顛末ということで書かせていただきました。ところで、裁判所のウェブサイトにはすべての裁判の判決文が載るわけではありません。どういう基準で取捨選択されているのかは不明ですが、公開されることで世の中の人の勉強になるような判決が選ばれるべきです。そうなると、なぜ、敢えてこの訴訟が公開対象になるのかは理解に苦しむところがあります。弁護士使わずに本人訴訟しても結局無駄になりますよ、ということを示すためなのかもしれませんが。