いきなり!ステーキのステーキ提供システム特許が取消に

特許5946491号公報

昨年の8月に「いきなり!ステーキの特許化について」という記事を書きました。ステーキチェーン「いきなり!ステーキ」が提供するステーキの量り売りの方法が特許化されたというお話しでしたが、当該特許(5946491号)は先日の11月28日に異議申立により取消になっています。

異議申立人は個人の方です(異議申立は利害関係を必要としないので事実上ダミーで申し立てることもできてしまいますが、権利者(ペッパーフードサービス)との関係は不明です)。取消理由は「特許法上の発明に該当しない」というものです。特許情報プラットフォームの審決速報メニューで異議番号2016-701090を入力すると決定文を見ることができます。

特許法上、特許の対象となる発明とは「自然法則を利用した技術的思想の創作」と定義されています。要は「技術的アイデア」でないと特許の対象にはなりません(新規性・進歩性等を問われる前の”門前払い”となります)。たとえば、ゲームのルールですとか商売のやり方(5の付く日は半額にする等々)などの人為的取り決めは特許法上の発明ではないとされます。

この特許出願のクレームも元々は以下のようになっていました。

【請求項1】

お客様を立食形式のテーブルに案内するステップと、お客様からステーキの量を伺うステップと、伺ったステーキの量を肉のブロックからカットするステップと、カットした肉を焼くステップと、焼いた肉をお客様のテーブルまで運ぶステップとを含むことを特徴とする、ステーキの提供方法。

これに対して、特許庁は単なる人為的取り決めであって発明に該当しないと拒絶理由を出したのですが、それに対して出願人は「札」、「計量機」、「印し」という物理的モノを加える補正を行ない、単なる人為的取り決めではないと主張して、それが認められて特許化されました(太字が付加部分)。

【請求項1】

お客様を立食形式のテーブルに案内するステップと、お客様からステーキの量を伺うステップと、伺ったステーキの量を肉のブロックからカットするステップと、カットした肉を焼くステップと、焼いた肉をお客様のテーブルまで運ぶステップとを含むステーキの提供方法を実施するステーキの提供システムであって、上記お客様を案内したテーブル番号が記載された札と、上記お客様の要望に応じてカットした肉を計量する計量機と、上記お客様の要望に応じてカットした肉を他のお客様のものと区別する印しとを備えることを特徴とする、ステーキの提供システム。

異議申立で、特許庁は「札」、「計量機」、「印し」等について「それぞれの物が持っている本来の機能の一つの利用態様が示されているのみであって、これらの物を単に道具として用いることが特定されるに過ぎないから、本件特許発明1の技術的意義は、「札」、「計量機」、「印し」、及び「シール」という物自体に向けられたものということは相当でない」と判断し、全体として特許法上の発明に該当しないと判断ました。他のクレームについても同様の判断です。なお、異議申立中に訂正請求によりさらに権利が限定されましたがそれについても同様の判断です。

これは特別な考え方でも何でもなく取消になって当然と考えます。そもそも、この出願がなぜ審査で登録されてしまったかが不思議なくらいです。

権利者のペッパーフードサービスは、この決定の取消を求める審決取消訴訟(被告は特許庁)を提起することができますが、どうするかはわかりません。ただ、同社の業績は絶好調ですし、他にも特許はありますし、そもそも、この特許は権利範囲が狭くて競合他社に権利行使することは困難であったと思いますので、今回の取消による影響はほとんどないと言ってよいでしょう。

本記事は、ステーキの量り売りというアイデアだけでも特許になるのかという印象を世の中の人が持ってしまうと問題なので書いてみました。特許化には何らかの技術的要素が不可欠です(加えて、新規性・進歩性が必要なのは言うまでもありません)。「ビジネスモデル特許」とは言ってもその実態は「ビジネスモデルを実現する情報システム(または何らかの具体的技術の)特許」であることに注意が必要です、