かっぱえびせんのキャッチフレーズは著作物か?

出典:いらすとや

「かっぱえびせん“やめられない、とまらない!”を考えたのは私 生みの親がカルビーを提訴」というニュースがありました。かっぱえびせんのCMにおける「思わず手が出る やめられない とまらない」というキャッチフレーズを考案した広告代理店の人が、「テレビ番組や新聞記事では、“コピーは(カルビーの)社員が考えた”と紹介」していたカルビーを、事実と異なるとして1億5,000万円の損害賠償を求めて訴えたものです。

原告は著作権侵害というよりは自分が創作者であることを認めさせることが主目的とのことです。1億5,000万円を求めたのは、金額がないと裁判にならないと言われたためで「お金が欲しいわけではありません」ということですが、もしそうなら、損害賠償請求額が増すほど印紙代も高くなるのでもう少し低めの金額でもよかったと思います。

いずれにせよ「思わず手が出る やめられない とまらない」という広告コピーが著作物かどうかが裁判の重要争点となるかもしれません。コピーライティングがクリエイティブな作業であることには疑いはありませんが、キャッチフレーズが短く、アイデアを表わす表現のバリエーションが少ないときは著作物性を否定され得ます。

判例から判断するとこれはなかなか微妙なところです。過去には「ボク安心 ママの膝(ひざ)より チャイルドシート」という交通標語の著作物性が認められた一方で、「音楽を聞くように英語を聞き流すだけ 英語がどんどん好きになる」「ある日突然,英語が口から飛び出した!」という英会話レッスンのキャッチフレーズの著作物性は否定されています。

別の論点として、広告代理店の社員の人が業務上キャッチフレーズを創作したのですから、仮にこのキャッチフレーズが著作物であったとしても、職務著作に相当する可能性が大ですあります(追記:職務著作の可能性大と書きましたが、時期的に著作権旧法が適用されますので必ずしもそうはならなそうです、旧法における職務著作の権利帰属については「学説上の争いがあった」ようです(中山『著作権法』(第2版)p203))。そうなると、著作者は社員ではなく広告代理店なので、そもそも今回の原告には原告適格がないのではという気がします(職務著作では著作者人格権も法人に帰属しますので、たとえば氏名表示権に基づいて訴える原告適格もないことになります(追記:この点も旧法適用なので微妙でした))。

訴状がどうなってるのかわかりませんが(本人訴訟かどうかもわかりませんが)、著作権侵害の件以外にこのキャッチフレーズが原告の創作であるという新聞広告を出せというような名誉回付の請求がされてないと、「このキャッチフレーズは著作物ではありません」で終わってしまう可能性があるかと思います。ひょっとすると原告は裁判での勝敗はどうでもよくて、自分が主張することの経緯を報道等で世の中に知ってもらいたいためだけに訴訟をしたのかもしれませんが。

追記:書き忘れてましたが時効の問題もありました。原告が事情を知ったのが2010年であるとするととうの昔に時効になっているのではないでしょうか?

追記^2:「著作権関係なくね?」説もあるようですが、普通の損害賠償や慰謝料請求だと時効になっていると思われるので、著作権に基づく差止めか不当利得返還請求しないと無理なんじゃないかという気がします(本人訴訟でその辺全然考慮してない可能性もありますが)。