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自称"サトシナカモト"によるビットコイン特許出願は国際出願化

栗原潔弁理士 知財コンサルタント 金沢工業大学客員教授

本件記事の最初のバージョンには事実誤認があったので全面的に書き直しています。どうもすみません。

過去記事「ビットコイン”発明者”がブロックチェーン関連発明を大量特許出願」および「ビットコイン”発明者”の特許出願をオンラインカジノの大立者が支援?」において、ビットコインの発明者サトシナカモトであると自称するオーストラリアのコンピューターサイエンティスト、クレイグ・ライト氏が関連すると言われている英領アンティグア(タックスヘイブンとして使用されることが多いカリブ海の島です)のEITC Holdingsという会社が、英国に大量のブロックチェーン関連特許出願を行なっていること(さらに、それをオンラインカジノ界の大物が支援している説)について書きました。

その後、EITC HoldingsはnChain Holdingsと名称を変えており、マルタのSICAVというファンドから総額約3億ドルの巨額投資を受けたようです(参照記事)。

同社が英国特許庁に行なった大量(73件)のビットコイン/ブロックチェーン関連出願のうち、最先のもの7件の内容が出願日から1.5年後の8月23日に公開されるはずでした(タイトル画像参考)。これらの出願は英国特許庁の記録では取り下げとなっていましたが、権利が消滅したわけではなく、これらの出願に優先権を主張した国際出願(PCT出願)が行なわれており、既に公開されています。

現時点でnChain Holdings社名義で公開された国際出願は以下の19件あります。発明者はすべてクレイグ・ライト氏です。

  1. WO/2017/145001 (REACTIVE AND PRE-EMPTIVE SECURITY SYSTEM FOR THE PROTECTION OF COMPUTER NETWORKS & SYSTEMS)
  2. WO/2017/145002 (PERSONAL DEVICE SECURITY USING ELLIPTIC CURVE CRYPTOGRAPHY FOR SECRET SHARING)
  3. WO/2017/145003 (BLOCKCHAIN-BASED EXCHANGE WITH TOKENISATION)
  4. WO/2017/145004 (UNIVERSAL TOKENISATION SYSTEM FOR BLOCKCHAIN-BASED CRYPTOCURRENCIES)
  5. WO/2017/145005 (BLOCKCHAIN IMPLEMENTED COUNTING SYSTEM AND METHOD FOR USE IN SECURE VOTING AND DISTRIBUTION)
  6. WO/2017/145006 (AGENT-BASED TURING COMPLETE TRANSACTIONS INTEGRATING FEEDBACK WITHIN A BLOCKCHAIN SYSTEM)
  7. WO/2017/145007 (SYSTEM AND METHOD FOR CONTROLLING ASSET-RELATED ACTIONS VIA A BLOCKCHAIN)
  8. WO/2017/145008 (TOKENISATION METHOD AND SYSTEM FOR IMPLEMENTING EXCHANGES ON A BLOCKCHAIN)
  9. WO/2017/145009 (A METHOD AND SYSTEM FOR SECURING COMPUTER SOFTWARE USING A DISTRIBUTED HASH TABLE AND A BLOCKCHAIN)
  10. WO/2017/145010 (SECURE MULTIPARTY LOSS RESISTANT STORAGE AND TRANSFER OF CRYPTOGRAPHIC KEYS FOR BLOCKCHAIN BASED SYSTEMS IN CONJUNCTION WITH A WALLET MANAGEMENT SYSTEM)
  11. WO/2017/145016 (DETERMINING A COMMON SECRET FOR THE SECURE EXCHANGE OF INFORMATION AND HIERARCHICAL, DETERMINISTIC CRYPTOGRAPHIC KEYS)
  12. WO/2017/145017 (METHODS AND SYSTEMS FOR THE EFFICIENT TRANSFER OF ENTITIES ON A BLOCKCHAIN)
  13. WO/2017/145018 (A METHOD AND SYSTEM FOR THE SECURE TRANSFER OF ENTITIES ON A BLOCKCHAIN)
  14. WO/2017/145019 (REGISTRY AND AUTOMATED MANAGEMENT METHOD FOR BLOCKCHAIN-ENFORCED SMART CONTRACTS)
  15. WO/2017/145020 (METHODS AND SYSTEMS FOR EFFICIENT TRANSFER OF ENTITIES ON A PEER-TO-PEER DISTRIBUTED LEDGER USING THE BLOCKCHAIN)
  16. WO/2017/145021 (Method and system for efficient transfer of cryptocurrency associated with a payroll on a blockchain that leads to An Automated payroll method and system based on smart contracts)
  17. WO/2017/145047 (BLOCKCHAIN-IMPLEMENTED METHOD FOR CONTROL AND DISTRIBUTION OF DIGITAL CONTENT)
  18. WO/2017/145048 (CRYPTOGRAPHIC METHOD AND SYSTEM FOR SECURE EXTRACTION OF DATA FROM A BLOCKCHAIN)
  19. WO/2017/145049 (CONSOLIDATED BLOCKCHAIN-BASED DATA TRANSFER CONTROL METHOD AND SYSTEM

国際調査報告の見解書では、特許性ありとされているものあるのでダミー出願というわけではなさそうです。今後、これらのいくつかをピックアップして内容を解説していく予定です。

弁理士 知財コンサルタント 金沢工業大学客員教授

日本IBM ガートナージャパンを経て2005年より現職、弁理士業務と知財/先進ITのコンサルティング業務に従事 『ライフサイクル・イノベーション』等ビジネス系書籍の翻訳経験多数 スタートアップ企業や個人発明家の方を中心にIT関連特許・商標登録出願のご相談に対応しています お仕事のお問い合わせ・ご依頼は http://www.techvisor.jp/blog/contact または info[at]techvisor.jp から 【お知らせ】YouTube「弁理士栗原潔の知財情報チャンネル」で知財の入門情報発信中です

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