ファンキー末吉氏はJASRACに何を求めているのか

(写真:Rodrigo Reyes Marin/アフロ)

爆風スランプのドラマーであるファンキー末吉氏が、JASRACの運営に関して文化庁に上申書を提出したというニュースがありました。

末吉氏が既にJASRACと裁判で争っていたことについては既に書いています(過去記事「JASRAC対ファンキー末吉氏の地裁判決文が公開されました」、「JASRAC、第二審でもファンキー末吉氏に勝訴」)。これらの裁判では末吉氏側の主張はほとんど認められていません(なお、記事にはしていないですが最高裁への上告も棄却されています(末吉氏による関連ブログ記事))。

裁判ではいくつかの争点がありましたが、その重要なもののひとつがJASRACの作曲家・作詞家に対する分配金の計算方法が不透明であるという末吉氏側の主張です。この点について、判決文では、それは作曲家・作詞家とJASRAC間の問題であって、利用者(たとえば、ライブハウス経営者)とJASRAC間の問題ではないとされています。たとえて言えば、税金の使い方が不透明だと思うので税金を払わないというのは通らない(不満があるなら別途行政訴訟するなり、議員に陳情するなりせよ)というようなものでしょう。ということで、末吉氏が作曲家・作詞家の立場として問題改善を求めたというのが今回の話の中心です(それ以外の争点もありますがまた後日)。

ところで、本件に関して、たとえば、ハフィントンポストの記事では「JASRACからの分配、1円もない」とタイトルに書いてあったりすることもあってか「JASRACが丸々ピンハネしてる」なんて与太話をネットに書いている人がいたりしますが、末吉氏が爆風スランプ時代の楽曲(特にCMで使われたRunner)によってJASRACから数千万円単位の収入を得ていたことはご本人も認めています(参照記事)。今回のケースは、あくまでも、同氏の最近のバンド「X.Y.Z.→A」の楽曲のライブハウスでの演奏料が適切に支払われていないのではという話です。

この問題を正しく理解するためには、JASRACの著作権使用料分配の仕組みを知る必要があります(参照過去記事「JASRACの使用料分配方法を批判する前に知っておきたいこと」)。

CD(セルおよびレンタル)、出版、カラオケ、コンサートでの演奏、(ほとんどの)放送等は、利用楽曲に応じて著作権料が作詞家・作曲家に分配されています。問題になるのは分配金がサンプリング調査によって計算される形態です。ライブハウスにおける生演奏がこれに相当します。サンプリングでやっている以上、多くのアーティストにカバー演奏されるスタンダード曲(想像ですが、ビートルズやカルロスジョビン等の作品がそれにあたるのではないかと思います)以外は、分配の対象から漏れてしまう可能性が生じるのはやむを得ません。

すべてのライブハウスにおけるすべての演奏楽曲を捕捉できれば理想的ですが、現実的にはそれは不可能であり、ある程度のアバウトさは避けられません。人件費など考えずにすべての演奏権使用料を正確に1円単位で分配せよ(ただし、事務手数料は現状維持)と言う人がいたとすれば、それはモンスターカスタマーの発想です(誤解を避けるために念のために言っておくと末吉氏がそう主張しているという意味ではありません)。

ライブハウスでの演奏の分配については、JASRACのサイトに以下の情報(FAQのQ10)があります。

ライブハウスについては、日々大量の音楽を利用するなどの理由から、利用者の方々に全ての利用曲目をその都度記録し報告していただくことは大きな負担になってしまう場合があります。

このため、統計学の手法に基づいて無作為に抽出した契約店舗に対する利用曲目調査(サンプリング調査)を実施し、その調査結果をもとに分配資料を作成しています。2013年度においてサンプリング調査で抽出された作品の曲種は、約2万曲種となります。

ライブハウスには多様な趣向の店舗があり、様々なジャンルの作品を日替わりで演奏することも少なくありません。このことから、利用の実態により近づけるため、ご協力いただける契約店舖からは利用曲目を別途報告していただいており(ライブハウスなどのご経営者がインターネットで利用曲目を報告できるシステムもございます)、サンプリング調査での抽出作品とともに、その報告も分配のための資料としています(「分配のしくみ」ライブハウスでの生演奏などもご覧ください。)。

というわけでまったくのブラックボックスというわけではないのですが、より多くの情報を開示せよ、そして、より公平な分配が実現されるようにせよという末吉氏の主張自体は真っ当なものだと思います(とは言っても具体的な店名と調査時期まで公表してしまうとサンプリング調査の無作為抽出の意味がなくなってしまうので自ら限界はありますが)。

最終的には、上記の「利用楽曲報告システム」(J-OPUS)を普及させ、ライブハウスでの生演奏も包括契約+サンプリングではなく楽曲別報告の形態に進めていくべきと思います(聞いた話ではJ-OPUSは結構使いにくいらしいので改善が必要かもしれません)。また、その前提として作品データベースの整備とモダナイズも重要な案件になってくるでしょう(関連過去記事)。