ビットコイン「発明者」の特許出願をオンラインカジノの大立者が支援?

(提供:アフロ)

昨年の6月に「ビットコイン”発明者”がブロックチェーン関連発明を大量特許出願」なる記事を書いています。ビットコイン論文の著者サトシ・ナカモト氏の「中の人」であると自称しているクレイグ・ライト氏が大量のブロックチェーン関連発明を英国に特許出願しているという話でした。

この件に関する追加報道が今年の3月にありました(ロイターによる元記事)。ちょっとタイミングを逸しましたがカバーしておきます。上記の特許出願の出願人であるEITC Holdings社にオンラインカジノ起業家であるカルヴィン・エアー氏(賭博罪により米国内で起訴されているようです)が関係しているのではという話です。ところで、上記記事ではEITC Holdings社がなぜかアルゼンチンの企業であると書いてますが、正しくは(英領)アンティグア島です。タックスヘイブンとして使われることも多いカリブ海にある島です。

ビットコインを使えば安くて速く送金できるという当初の期待が崩れつつある昨今ですが(正直、現状であればPayPalの方が安くて速い気がします)、オンラインカジノ用途であれば、(一応の)匿名性、海外送金でも仲介者不要、政府の(直接的)規制を受けない、当局によるガサ入れも口座凍結も不可能というビットコイン(およびその他の暗号通貨)は明らかな「優位性」を持ちます。オンラインカジノ運営者がビットコイン/ブロックチェーンに関心を持つのはうなずけます。

クレイグ・ライト氏が本当にビットコインの発明者なのか、EITC Holdingsをカルヴィン・エアー氏が本当に支援しているのか等々、未確認情報が多い話ですが、英国にブロックチェーン関連の大量の特許出願が行なわれていることだけは、英国特許庁の公報に載ってますので疑いの余地はありません(EITC Holdings社による出願は昨年の記事の時点で51件でしたが、今調べたら73件に増えてました)。

問題はこれらの特許の中身で、英国特有の制度により出願人とタイトルだけは出願直後に公表されるのですが、中身を知るには(他の国と同様に)出願日から1年半待つ必要があります。これらの特許出願群の一番早い出願日が2016年2月末なので、早くとも今年の8月末にならないと中身はわかりません。“Determining a common secret for two blockchain nodes for the secure exchange of information”等々、興味深いタイトルがついている出願もありますが、中身はたいしたことない可能性もあります(もちろん、キラー特許である可能性もあります)。英国だけではなく国際出願もされている可能性も大ですが、これも今年の10月以降にならなければわかりません。もし、強力な特許が成立し、かつ、それがオンラインカジノ運営者の手に落ちることになれば、ビットコイン(および暗号通貨全般)の将来に少なからぬ影響を及ぼすことになるでしょう。

暗号通貨の「発明者」、オンラインカジノの大立者(起訴済)、カリブ海のタックスヘイブン、大量の特許出願と映画の一本くらい作れそうな要素がありますね。出願が公開され次第、内容をレポートする予定ですが、それまでに私の身に何かあったら何か大きな力が働いたと思ってください(笑)。

日本IBM、ガートナージャパンを経て2005年より現職、弁理士業務と知財/先進ITのコンサルティング業務に従事、『ライフサイクル・イノベーション』等ビジネス系書籍の翻訳経験多数 IT系コンサルティングに加えてスタートアップ企業や個人の方を中心にIT関連特許・商標登録出願のご相談に対応しています。お仕事のお問い合わせは http://www.techvisor.jp/blog/contact または info[at]techvisor.jp から。【お知らせ】Skype/Chatworkによる特許・商標の無料相談実施中です。詳しくは上記お問い合わせ先から。

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