任天堂、最強の法務部をもってしても「マリカー」の商標登録取消に失敗

筆者撮影の写真をぼかし加工

「『マリカー』商標止められず、任天堂の異議却下」というニュースがありました。実は、この話はちょっと前の記事で既に触れているのですが、再び話題になっているようなので改めて異議申立にフォーカスして書くことにいたします。

異議申立は、商標登録されるべきでない商標が登録されたと考える人が登録の取消を請求できる制度です。今回、任天堂は、マリオカートのコスプレ付きレンタルカート業者の株式会社マリカーが所有する「マリカー」の登録商標に対して異議申立を行ないましたが、それが認められなかった(マリカーの登録が維持された)という話です。

当然ながら、任天堂は「マリオカート」を商標登録していますが「マリオカート」と「マリカー」が商標として類似することを主張することは難しいですし、そもそも、任天堂の登録には「車両の貸与」という指定役務が含まれませんので、類似先登録を理由に取消することは困難です。そこで、任天堂は商標法4条1項15号と4条1項19号を根拠に異議を申し立てました。

15号 他人の業務に係る商品又は役務と混同を生ずるおそれがある商標(略)

19号 他人の業務に係る商品又は役務を表示するものとして日本国内又は外国における需要者の間に広く認識されている商標と同一又は類似の商標であつて、不正の目的(略)をもつて使用をするもの(略)

いずれの条文についても、任天堂は「マリカー」が任天堂の商標として周知になっていること(あるいは、かなり厳しいですが19号については「マリオカート」と「マリカー」が類似すること)を立証しなければなりません。そのため、任天堂は数多くの文献を証拠として提出しています。

しかし、特許庁の判断は「MARIOKART」と「マリオカート」は周知であるものの「マリカー」は周知ではない(そして、マリオカートとマリカーは類似しない)ので、任天堂の主張は認められないというものでした。自分はそんなにゲームに詳しいわけではないですが、ネットの意見を見てもマリオカートの略称としてマリカーと言わないことはないが、それほど一般的な言い回しではないのではないかという感じだったのでまあうなずける結果かと思います。

今後、任天堂は、もうひとつの商標登録の事後的取消制度である無効審判を請求することができますが、同じ証拠で同じ主張をしても厳しいと思われるので、新たな証拠準備に忙しいのではないかと思います。

なお、上記記事で「(任天堂は)知財高裁への提訴を検討している模様だ」と書かれていますが、異議申立が維持決定(申立棄却)になった時は不服申立できない旨が商標法に明記されていますので、それはできません。

最強の法務部門を持つとも言われている任天堂は、当然に予測されるように、積極的に商標登録出願を行なっており、特許情報プラットフォーム(J-PlatPat)で任天堂株式会社を権利者として検索すると、現時点で3,665件の商標登録・出願がヒットします。ポケモンの名前もすべて多くが商標登録されています(漏れがないかまでは確認していませんが)

ゲームやキャラクターの正式名称以外にも、たとえばNES(Nintendo Entertainment Systemの略)、SUN&MOON(ポケットモンスターサン・ムーンと紛らわしい使用を防ぐためでしょう)、スーマリ(言うまでもなくスーパーマリオブラザーズの略称)、バンブラ(DS用の音楽ゲーム「大合奏!バンドブラザーズ」の略と思われます)等々の周辺領域もがっちり押さえていたのですが、なぜか「マリカー」だけは押さえていなかったのですね(比較的マイナーなゲームの略称は押さえていたのに)。担当者としては悔やまれるところではないでしょうか。

ただ、今回の結果は、マリカー社が「マリカー」という商標を使う上での一応のお墨付きが得られたというだけにすぎません。マリオのコスチュームを貸与するレンタルカートビジネスを続行できるかどうかは、既に書いているように別の裁判の結果次第となります。