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「プレミアムフライデー」の商標問題について

栗原潔弁理士 知財コンサルタント 金沢工業大学客員教授
(写真:Rodrigo Reyes Marin/アフロ)

あまり評判がよろしくない、本日より実施の「プレミアムフライデー」ですが、商標に関しても一悶着あるかもしれません。昨年の8月13日付で、経済産業大臣名義(要するに経産省)でPREMIUM FRIDAYが出願されている(商願2016-88421)のに加えて、PPAPでおなじみ(笑)のB社も同じ商標を同日に出願している(商願2016-88273)からです。両者の指定商品は一部重複しています(というか、経産省側は五輪エンブレム方式で全類出願しています)。

例によって、B社側の出願料金は支払われていないようですが、もし支払われた場合にはどうなるでしょうか。

日本の商標制度は先願主義ですが、先後の判定には出願時刻は関係なく、日付のみで判断されます。同日の場合には、両出願人に協議命令が出され、どちらから出願取下げ(または指定商品の一部削除)を行なうことになりますが、協議が成立しなかった場合には「公正な方法によるくじ」で決着がされることになります。

第八条

(略)

2 同一又は類似の商品又は役務について使用をする同一又は類似の商標について同日に二以上の商標登録出願があつたときは、商標登録出願人の協議により定めた一の商標登録出願人のみがその商標について商標登録を受けることができる。

(略)

5 第二項の協議が成立せず、又は前項の規定により指定した期間内に同項の規定による届出がないときは、特許庁長官が行う公正な方法によるくじにより定めた一の商標登録出願人のみが商標登録を受けることができる。

聞いた話しではこの「くじ」とは、福引きで使うガラガラポンのようなもので、特許庁に置いてあるそうです(私は見たことがありません)。「くじ」が使われることはごく希にあるようです。

仮にB社がくじで勝って、出願が残ったとしても、以前に書いたような理由により、登録される可能性はきわめて低いと思います。経産省はその後に権利化することはできるでしょう。とは言え、もう少し早めに出願しておけば面倒はなかったのにと思います。

Googleで日付検索してみると2016年8月13日は「プレミアムフライデー」が報道発表された日付のようです。私も五輪エンブレム騒ぎの時に口を酸っぱくして言ってましたが、いかにも勝手出願されそうな影響力の大きい言葉やロゴ(エンブレム)等を発表する時には、発表の前日までに出願しておくことが重要です。朝一で出願してその後に発表というやり方ですと、その日の深夜零時までに他人に出願されると先願を確保できなくなるからです。

弁理士 知財コンサルタント 金沢工業大学客員教授

日本IBM ガートナージャパンを経て2005年より現職、弁理士業務と知財/先進ITのコンサルティング業務に従事 『ライフサイクル・イノベーション』等ビジネス系書籍の翻訳経験多数 スタートアップ企業や個人発明家の方を中心にIT関連特許・商標登録出願のご相談に対応しています お仕事のお問い合わせ・ご依頼は http://www.techvisor.jp/blog/contact または info[at]techvisor.jp から 【お知らせ】YouTube「弁理士栗原潔の知財情報チャンネル」で知財の入門情報発信中です

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