独立したメンバーにSMAPの楽曲を歌わせないということができるのか

あくまでも仮にの話ですがSMAPの一部メンバーが独立した時に、SMAPの持ち歌をテレビやコンサートで歌うことに著作権的な問題はないか検討してみます。もちろん、ジャニーズ事務所を怒らせるようなことをわざわざするテレビ局やプロモーターはいないでしょうが、著作権法的に禁止することができないかを検討してみます。この記事の目的は芸能ゴシップネタではなく、芸能ネタを題材にして知財制度を解説することにありますのでご了承ください。

なお、キムタクが抜けた状態で歌唱力的に大丈夫なのかという問題はありますが別論です。

まず、SMAPの楽曲の著作権はジャニーズ事務所にはないことに注意が必要です。作詞家・作曲家でもありません、JASRACです(作詞家・作曲家が著作権を(多くの場合、音楽出版社を経由して)JASRACに信託譲渡しています)。

そして、JASRACに代表される音楽著作権管理団体の仕組みの最大のポイントは、所定の料金さえ払えば自由に著作物を使えることにあります。JASRACは正当な理由なく、特定の人のみに著作権を許諾しないということはできません(応諾義務)。

ちなみに、だいぶ昔に、「おふくろさん」に許可なくバース(前ぶり部分)を付けて歌っていた森進一に激怒した作詞家の川内康範氏が森進一に「おふくろさん」を歌わせないようJASRACに申し入れたという事件がありました。バース付き「おふくろさん」については、作詞家の著作者人格権(同一性保持権)を侵害している可能性があるので、JASRACとして(森進一に限らずあらゆる人に対して)許諾しないということはできます(実際にそういう措置を取ったと記憶しています)。ただし、オリジナルバージョンの「おふくろさん」を森進一だけに歌わせないということはできません。

ということで、著作権法的には(あくまでも「著作権法的には」です)独立メンバーにSMAPの楽曲を歌わせないということはできません(別に独立メンバーに限らず、誰に対しても同じです)。

ここまでは著作権上の話ですが、これ以外にも当事者間の契約について考える必要があります。

ネット上にある著作権関連契約のひな型(たとえば、「よくわかる音楽著作権ビジネス」等の著作で有名な安藤和宏氏が経営する音楽出版社セプティマ・レイのサイトにあるレコーディング契約書のひな型)には以下のような規約があります。

本契約終了後3年間は、乙(注:契約当事者のアーティスト)は、本契約に基づいて実演した著作物と同一の著作物について、甲(注:契約当事者のレコード会社)以外の第三者が行うレコーディングのための実演を行わないものとします。

SMAPメンバーとレコード会社間の契約がどうなっているかわかりませんがこういう条項は絶対入っているでしょうから、過去曲の再レコーディングについては契約上の縛りによって、少なくともしばらくはできないでしょう。コンサート等での実演は、別の契約による縛りがなければ問題ありません。

今回のケースはジャニーズ事務所が当事者なので、著作権だ商標権だ言う以前の問題としてできるわけないだろという結論になってしまいますが、もっと普通のバンドやアーティストがメンバー間や事務所との間で仲違いして独立といったようなケースでは今回および前回の検討内容が参考になるかと思います。

日本IBM、ガートナージャパンを経て2005年より現職、弁理士業務と知財/先進ITのコンサルティング業務に従事、『ライフサイクル・イノベーション』等ビジネス系書籍の翻訳経験多数 IT系コンサルティングに加えてスタートアップ企業や個人の方を中心にIT関連特許・商標登録出願のご相談に対応しています。お仕事のお問い合わせは http://www.techvisor.jp/blog/contact または info[at]techvisor.jp から。【お知らせ】Skype/Chatworkによる特許・商標の無料相談実施中です。詳しくは上記お問い合わせ先から。

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