ミニFM局を使えば無料でBGMを流すことができるのか?

以前の記事で、テレビやラジオの放送番組を家庭用受信機で聞かせているだけであれば、(たとえ営利目的でも)著作権者の許可は不要と書きました。これは抜け穴でも何でもなく、著作権法で想定されている権利制限規定のひとつです。ちなみに、このように放送番組をスルーで(録音・録画することなく)流す行為を著作権法上は「(公衆)伝達」と呼びます。

店にテレビやラジオを置いて客に見せている(聞かせている)定食屋さんが、JASRACのみならず放送局や映画会社等にも許可をもらう必要がないことを考えても明らかです。

ここで、著作権法上は「放送」を以下のように定義しており、特に電波法上の放送免許を持っている事業者による放送に限定していません。

2条1項8号  放送 公衆送信のうち、公衆によつて同一の内容の送信が同時に受信されることを目的として行う無線通信の送信をいう。

ということは、免許のいらない微弱電波によるミニFM局を作って近所(およそ10メートル以内)の店舗に流して家庭用ラジオで受信すれば、JASRACとの契約不要で好きなCDによるBGMを流せるのではないかとという"裏技"アイデアがtwitter等で見受けられました。このアイデアの現実性についてちょっと検討してみます。

たしかに、受け手側(店舗側)は以前書いたとおり無料で伝達することができそうです。

しかしながら、送り手側(ミニFM局側)は放送の権利処理を行なう必要があります。Wikipediaのエントリーによれば、JASRACは「広告料をとるなど商業利用をしない限り、許諾や著作権料は不要という見解を出している」そうです。ただ、これは著作権法上定められた権利制限規定(非営利・無報酬・無料なら実演・演奏・上映・伝達できるとは定められていますが、放送できるとは定められていません)ではなく、単なるJASRACの運用なので、店舗でのBGMを目的としたミニFM局は商業利用であると判断されればどうなるかわかりません。

それよりも重要なのは、著作隣接権(レコード製作者の権利(いわゆる原盤権)と実演家の権利)の処理です。これらの著作隣接権には伝達権は含まれないので、受け手側が気にする必要はないのですが、送り手側は「商業用レコードの二次使用」(著作権法95条および97条)の料金を芸団協とレコ協に支払う必要が生じます。ミニFM局が実際にいくら払わなければいけないかは明確な規定がないようなので別途協議ということになると思いますが、おそらく、各店舗側で(小規模店舗の場合)月額500円をJASRACに支払って好きなCDをかける方が簡単で安上がりになると思われます。

ということで、ミニFM局+家庭用ラジオ受信機の組み合わせによるBGMは、合法的に行なおうとするならばあまり現実的な策ではないと思います。