特許公報に固定リンクが張れない知財立国について

ちょっとでもWebを使ったことがある人ならば固定リンク(パーマリンク)の重要性をわかっているでしょう。固定リンクがあることで、Web上の情報を直接的、一意的、永続的に示すことができます。これにより、Web上の膨大な情報のリンク付けを容易に行なうことができ、情報の有用性は飛躍的に高まります。

固定リンクがないと、Web上で見つけた有用な情報を他の人に伝えたくても、「サイトXXにアクセスして検索窓に文書番号1234を入れて情報を検索してください」や「掲示板YYで2015年3月4日の12時頃に投稿された記事を参照下さい」とでも書くか、コンテンツそのものをコピーして別の場所に置いたり記事中にコピペしたりするか、あるいは、スクリーンショットを記事中に表示するかくらいの方法しかありません。いずれも、情報の整合性や利便性の点で問題があります。

さて、わが国の特許間連情報サービスであるIPDL(特許電子図書館)ですが、おそらく、メインフレームベースの旧式システムにWebのフロントエンドを置いた構造であるため、公報データに固定リンクが張れませんでした。

たぶん、Webからの検索要求があると、フロントエンドのシステム上にテンポラリーのワークエリアを設けて、旧システム側に検索要求をフォーワードして、得られた検索結果をテンポラリーエリアにおいてそれをWebからアクセスさせる(テンポラリーエリアはタイムアウトで解放)という定石的なな設計なのでしょう。これですと、このテンポラリーエリア内の情報はそのセッションでのみ、かつ、一定期間のみ有効であって、他の人からはアクセスできません。

その結果、IPDL上で見つけた公報の情報へのURLをそのままブログやメールに書いてしまうというミスがたまに見られました(ブログ主が自分でチェックしてもテンポラリーエリアの情報がしばらく残ってますので問題なく見ることができるのですが、他人がアクセスすると見られないという状態なので気がつきにくいです)。

さて、本日より、IPDLは更改されてJ-PlatPatという新システムになりました。トップページに行くと、いきなり検索窓があるというモダンなUIになっています(今までは、番号による検索、キーワードによる検索、等々ファンクショナルに階層化されたメニューから選ぶという昭和の香りのUIでした)。

このUI的な改善については評価したいのですが、上記の基本アーキテクチャー自体は変わっていないので、依然として公報に固定リンクは張れません。

なお、米国ではどうかというと一部日本と同様のレガシーが残ってはいるのですが、少なくとも特許公報には固定リンクが張れます。ブログやメディア記事等で他の記事や文献等々のリンクを書くのと同じレベルで特許公報へのリンクを書くという当たり前のことができています。

日本で同様の状況にするためには、バックエンドのシステムから作り直す必要があると思いますが、特許庁のシステム全体の開発が遅れていますのでこれも時間がかかりそうです。もうひとつの手としては、スタティックな公報情報だけを特許庁の業務システムとは独立したシステムに乗せるというやり方もあると思います。

アスタミューゼ、かんたん特許検索等々、民間の公報検索サービスで固定リンクが張れるという当たり前の設計になっているものもありますが、Googleに公報情報をフィードして、Google Patent Searchで検索可能にするのが話が早いと思います。そうすれば、少なくともスタティックな公報情報には24時間無停止でGoogleのモダンなインターフェースで検索可能になります(もちろん固定リンクも提供されます)。既に中国の公報は提供されていますので技術的にできない理由はないと思います。特許庁出入りのSIer的にはカスタム開発の案件が減ってしまうのであまりうれしくないかもしれないですが、特許関連情報の有効活用を目指すことは知財立国において不可欠です。

日本IBM、ガートナージャパンを経て2005年より現職、弁理士業務と知財/先進ITのコンサルティング業務に従事、『ライフサイクル・イノベーション』等ビジネス系書籍の翻訳経験多数 IT系コンサルティングに加えてスタートアップ企業や個人の方を中心にIT関連特許・商標登録出願のご相談に対応しています。お仕事のお問い合わせは http://www.techvisor.jp/blog/contact または info[at]techvisor.jp から。【お知らせ】Skype/Chatworkによる特許・商標の無料相談実施中です。詳しくは上記お問い合わせ先から。

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