著作権保護期間が70年になることによる影響について

著作権保護は原則70年で調整へ TPP」というNHKのニュースがありました。Wikileaksが暴露したTPP条文検討案ベースで判断すると、単純多数決では50年でも良いという規定になる可能性もあった(参照過去記事)のですが、「日本を含む各国がアメリカの主張に理解を示し、公開や作者の死後から原則70年とする方向で調整を進めることになりました。」ということだそうです。

日本では(映画の著作物を除き)現状から20年延長になるわけですが、どのような影響があり得るでしょうか。

当然ながら、保護期間50年であったとしたら今後20年間にパブリックドメイン化(著作権保護期間満了)となるはずだった作品の保護が続くという問題が生じます。文学の分野で言うと、今後20年間、青空文庫に追加される作品はなくなってしまうということですね。

なお、これもWikileaksの暴露文書ベースでの分析になりますが、TPP条文案には「著作権が期間満了で消滅した後に権利が復活することはない」というベルヌ条約の規定を遵守する旨の規定が入ってますので、いったんパブリックドメイン化した著作物が保護期間の延長によりふたたび非パブリックドメインに戻るということはないと思われます(関連弊所ブログ記事)。

音楽の世界では、ライブハウスでの演奏、CD化、カラオケ歌唱等、多くの利用形態でいずれにせよJASRACの許諾が必要なので、今後20年間にパブリックドメインになるはずだった作品がそうならないことによる影響はそれほど大きくないと思います。強いて言うと、アマチュアバンドがデモCDを作ったり、動画やCMのBGMとして使う時に許諾なく使える楽曲のバリエーションがしばらく増えないという点でしょう。

私の守備範囲のジャズ分野で言うとコール・ポーターが1964年没なので、戦時加算を加味して今年の1月1日から段階的にその楽曲がパブリックドメイン化していくはずだったのですが、それがそうならなくなってしまいますね(日本国内の著作権法改正のタイミングにもよりますが)。ただ、これが音楽産業全体に与える影響は微々たるものだと思います。

映画の著作物はもともと公開から70年なので影響はないように思えますが、映画自体がパブリックドメインになってもそこで使われている音楽の著作権がまだ切れていないという状況が生じる可能性が増します。

いちばんやっかいなのは孤児作品(オーファン・ワーク)の問題です。著作物利用の許諾を取りたくても、権利者と連絡が取れない作品です。著作権保護期間が長くなればなるほど孤児作品の問題は大きくなります。著作者の死後70年ということは、曾孫(下手すると曾々孫)の代まで行っている可能性が高いので、著作権を相続した人を見つけて許諾を取るのが困難なケースが増えていくのは自明です。

TPPは協定であって、その強行規定に反しない国内法を制定するのは自由ですから、少なくとも孤児作品の利用を今一層容易にできるような制度を国内法に設けてほしいです。また、当然ですが、戦時加算の撤廃も是非行なってほしいものです。