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関谷有三さんはこれまでさまざまな事業を手がけてきました。その取り組みは、「この価値を社会に広めたい」「新たな価値をつくりだしたい」と湧き上がる気持ちが起点になっているそうです。それは、どこか遠くに探しに出かけるようなものではありません。自分が心の底からわくわくするような仕事に出会うには、どうしたらよいのでしょうか? また、その気持ちを組織のメンバーに伝えて、みんなが楽しく働ける会社はどうやってつくるのでしょうか? 関谷さんに視聴者からの質問に答えていただきました。

<ポイント>

・ビジネスでのプロファイリングの方法は?

・社長の熱量を社員に伝えるには?

・ルパンのように、見た目も中身もかっこよく

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■視聴者からの質問タイム

倉重:ここからは、視聴者からの質問にお答えいただきます。

A:面白いお話をありがとうございました。入社したいと思いました。面接のハードルは高いので、受かるかどうかはちょっと分かりませんが。2点伺いたいと思います。

 今新規事業に関わっているのですが、「誰のどんな課題を解決したいのか」を決めてからではないと、うまくいかないと習っています。関谷さんのお話を伺うと「これはいい」という直感から入って、社会のために動いているのですよね。

関谷:人の問題解決ができないと面白くないですよね。一方で、その問題解決だけに、フォーカスし過ぎるとよくないと思います。自分が楽しいと思うことで、人のためになるということ。自分がそれに対して本当にわくわくしていることが大事です。

 ブラックな会社やお金儲けだけを追求する会社は、無理やり意味づけをさせられます。無理やり考える必要などなくて、自然とそう思えることだけをしないと、どこかで矛盾を感じてしまいます。

僕は自分の中から湧いてくることしかしません。湧いてきたものを形にすることは死ぬほど考えますけれども、「何をやろう」ということは考えません。別にやらなくたっていいではありませんか。無理やり新規事業を考えるのはナンセンスだと思っています。本当にやりたいことは、心の底から湧いてくるものです。

倉重:確かに、会議室でホワイトボードの前で「何をやりたいのか?」と聞いていたら、水道屋がタピオカ屋にはなっていないですね。

関谷:「週末にディズニーランドに行きたい」というのは、別にロジックではないですよね。行きたいから行くだけというのがすごく大事だと思っています。週末に行きたいところというマインドマップを書いて、「よし、ディズニーに行くのが私の週末にとって最適な解だ」とはなりませんよね。

A:自分がやりたいと思って、それが社会の課題を解決することで、わくわくしたらそこを突き進めばいいということですね。

関谷:そうでないと、皆途中で安易に諦めてしまうのです。普通の会社は撤退基準を絶対設けます。僕もよく「撤退基準は決めていますか」と聞かれますが、金か命が尽きるのが撤退基準です。湧き上がっているものでないとそこまで言えません。

倉重:自分が心の底からわくわくしているから、そこまでフルスイングできるのですね。それが今の質問でよく分かりました。ありがとうございます。他に質問ありませんか。

B:貴重なお話をありがとうございました。最初のタピオカ店のオーナーと話したときにプロファイルして営業をするという話がありました。どのようにプロファイルされているのかということが気になります。

関谷:徹底的に死ぬほど情報収集をします。その人の出ている記事や書いている文章を読みます。もしブログやSNSがあるのだったらもちろんそれら全部に目を通します。基礎情報が手に入った上で、自分がその立場になりきって、「なぜその事業を始めたのか」「今どのような問題を解決しているのか」ということをシミュレーションします。会う機会があれば、必ず僕は5個から10個の質問を用意していきます。質問をしないと、アウトプットを引き出せません。しかも、リサーチしないといい質問は出せないですよね。リサーチなしでする質問など思いつきでしかないから、必ずリサーチをすること。的確な質問を5個から10個用意しておくことです。いいリアクションが取れると、またアウトプットが引き出せます。それを繰り返していくと、その人に関する情報量は増えていくのです。プロファイリングの精度が上がっていくと、アプローチが決まる率が高くなります。

倉重:「この人はよく分かっている」となると、回答者も乗ってきますし。

関谷:そのようなところまですれば確度は高くなります。逆に、そのようなことができない人は社会人としてのスキルとセンスがないと思います。

倉重:厳しいご指摘ですが、真実ですね。普段からやっておけば、くせになりますから。

関谷:弊社内だと、ご飯に連れていってもらうときの誘われ方や誘い方もあります。

倉重:誘われ方というのは何ですか。

関谷:ご飯へ行くときに声をかけやすい子と、そうではない子がいます。誘われやすい仕掛けもあるし、誘い方もあります。食事に行ったときには、質問を用意しているとか、こちらの話に対してリアクションを取ってくれたりしたら、「もう一回行きたい」と思いますよね。

倉重:なるほど。若手の方は、ぜひ意識してみてください。ありがとうございます。

C:組織としてスケールする中で、社長が考えている満足度が何パーセントくらいを伝達していればいいかという尺度はありますか。100%同じ感覚で楽しむことはなかなか難しいと思います。どのくらいの熱量だったらいいでしょうか。

関谷:多分7割くらいですね。僕から言わせると、伝えていない人が多いと思っています。30人くらいであれば以心伝心で伝わりますが、それ以上になると自然には伝播しません。僕は、自分の考えを徹底的に何度も何度も互いが飽きるほど伝えています。

倉重:いろいろな手段で研修しますよね。

関谷:同じ研修を多分のべで200〜300回していますが、毎回同じことを言っています。やるほうは疲れますが、同じことを何十回も繰り返さないと伝わりません。逆にいうと、そこまでやって伝わらなかったら、もう本望です。やり切った上で価値観が合わないのは仕方がありません。だから、僕は人が辞めることに対して何も思わないのです。その人にとってよりいい環境があるのだったら、止めようとも思いませんし、「辞めてくれるな」とも思いません。ただ、自分の考えはすごく伝えています。

倉重:本当に意識して伝えているということですね。

C:基本的にスケールできる限界数は、自分が物理的に携われる数字が限界値になりますよね。例えばソフトバンクの孫さんが、ソフトバンクショップの店員一人ひとりとコミュニケーションは取れません。自分の頭の中で「これくらいだろう」というものはありますか。

関谷:スケールしようと思ったら、やはり自分の7割くらいの分身みたいな幹部やマネージャーを育てていけば、薄まりはしますが、大きくなっていきます。

C:今の会社の中で、社長に100%近くて、代弁できる人は何人くらいいますか。

関谷:いい質問かもしれません。またこれが面白いもので、皆が皆、僕の側で、隣で仕事をしたいのかというと、そうではありません(笑)。やはり太陽のようなものなので、近くにいると熱をダイレクトに感じられるけど、一方暑苦しかったりしますよね。結構2~3年でおなかいっぱいになってしまうようです。そうすると、レッド、オレンジ、イエロー、グリーン、ブルーのような感じで、距離感ができてきます。近くにいると疲れちゃうからだんだんブルーゾーンに行く人もいます。また、エネルギーがほしいと思ってオレンジゾーンくらいに来る人もいます。何百人の組織だと、全員がオレンジ、レッドにいなくてもいいと思います。

倉重:たまに太陽を浴びたくなりますから。

関谷:でも、いつでもおいでとは言っています。

C:おそらく常にレッドゾーンにいたがる方々は、本当に一番近しい存在で、関谷さんの代弁者になっていくと思います。社長から一番若手の社員までの伝達率というのは、何%くらいですか。

関谷:グループ会社の社長は、4~5年並走した人でないと任せられないので、7割、8割くらい僕の考えがちゃんと伝わっています。そこから下のレイヤーは落ちていくので、末端までいくと5割くらいになってしまうのかもしれません。とはいえ、全社員に直接研修もしているし、どんな社員でも、直接リーチできる状態にはしています。メールも電話もラインも直接いつでもオッケーです。多分世の中の会社よりは圧倒的に伝わっているはずです。

倉重:言いたいことがあったときは、誰でも関谷さんにLINEしていいのですよね。

関谷:もちろんです。全然関係ないですけれども、この間、社員の奥さんからInstagramでDMが来ました。「主人が仕事や子育てで悩んでいるようです。同性の先輩として旦那にアドバイスをしてもらえませんか」というメッセージでした。

倉重:社員の奥さんから!普通に悩み相談ですね。

関谷:「本を読んだら、いつでも誰でも連絡していいと書いてあったので、駄目元で連絡してみました」と書いていました。

倉重:それからどうしたのですか。

関谷:すぐに「今週中にご主人とZoomで30分話します」と返信しました。その社員には「奥さんからアドバイスしてほしいとインスタからDM来た。いい奥さんだね。とにかく30分話そう」と言ってZoomをセッティングしました。そのくらい門戸は開いています。

C:あまりに介入し過ぎて、「うちのシマなので私に任せてください」と言われることはないのですか?

関谷:ないです。“社長だろうが、直接言え聞け”というのがうちのワーキングルールの中にあります。ワーキングルールは10個あって、ちゃんと明確に決まっているので。

倉重:いい話が聞けました。最後に質問はありますか?

D:私は町工場メインの社労士です。今日のお話を聞いて、私がお客さんにアドバイスしてきたことは間違っていたかもしれないと、すごく反省をしました。町工場というのは、基本的に社員の方が作業だけを黙々とやっているところが多いですが、そういうところでも、夢を持って楽しく働いてほしいと思っています。ですが、どのようにアドバイスをしていいか分かりません。どうアドバイスしたらいいのか教えていただけたらと思います。

関谷:入り口で言うと、社長が楽しそうかどうかはとても大事です。楽しそうでない人は、おそらく仕事内容か一緒に働いている人のどちらかが原因です。社長が楽しくないと、社長と働きたいという人が来ません。

D:それこそ時給だけほしくて作業をしに来る人が増えてしまうのですね。

関谷:弊社は、僕と働きたいか、この環境の中で何か面白そうなプロジェクトをしたいという子たちが集まってくるので、僕がつまらなそうにしていると、「最近ちょっと目の輝きがないですよ」と社員からすぐ注意されます。

倉重:厳しめですね。

関谷:「ごめんね、最近スランプでさ。ドラマでいうと6話くらいで、あまり調子よくないんだ。8話になったら復活してくるからさ」という感じです。疲れていると普通にそこのソファで皆の前でいびきをかいて寝ていることもあります。しかも、たまにではなくて、割と頻繁に寝ています(笑)。

倉重:そうなのですか。だいぶオープンですね。

関谷:もう本当に家のような、一緒に何かをするシェアハウスのような感じなのです。

倉重:居心地がいい空間なのですね。

関谷:空間も採用も、僕の心地がいいようにしか設計していません。見せたいから(応接室とオフィスの間を)ガラス張りにしているのです。学生や、取引先にも、会社を全部見てもらっています。

D:売上げや経費などの数字も見せているのですか?

関谷:社員は全員PL(損益計算書)も分かっています。経理チームはよく、僕の飲み屋の領収書で朝から盛り上がっていますよ。「社長、なぜ普段行かないような湯島のキャバクラへ行ったのですか。しかも割と高いですよ。湯島で何の酒を入れたのですか?」などということでケラケラ盛り上がっていて、「やめろよ」と(笑)。

D:それに対して、怒るとかはないのですよね?

関谷:全然ないです。僕は社長室というのは本当に要らないと思っています。クローズな話はミーティングルームに行けばいいですから。僕はプライベートの電話も社員の前で普通にしていますし、昼寝もしますし、筋トレをしたかったら仕事中でもします。普通にマッサージチェアでネットフリックを見ることもあります。

D:丸裸なのですね。「社長として、かっこつけなければ」ということはないのですか?

関谷:ダメな部分もさらけ出してしますが、決めていることがあります。絶対に年に5~6本ホームランを打つということです。ルパンみたいに普段チャラけていても、決めるときは決めるということに美学を感じています。会社でも「社長は魔法のスティックで年に6本くらいはホームランを打ってくれる」と思われているし、僕もそこにはこだわりがあります。やはりヒーローであり続けたいです。

倉重:そこは常に結果を出すかっこいいおじさんでいたいですね。

関谷:僕でないとできないことは絶対にありますから。

D:年に6本ホームランを打って、そのほかのヒットは何本くらい打てるのですか。

関谷:ホームラン6本なので、ヒットはあまりないです。だから、普段はほぼ活躍していません。ヒットを打てる子たちは社内に大勢いますから、僕がヒットを狙うことにあまり意味がないのです。

重倉:ピンチや一打逆転のときに活躍するのですね。特大ホームランで。

関谷:そうです。だから、ホームランを打つための布石はたくさんしています。夜に飲みに行くことや、いろいろな人と会うことや、全然関係ないことに時間を費やすのも、経営者の役割ですよね。特に弊社はライフスタイル全般の事業をしているので、いろいろな仕掛けをしています。人気のある飲食店に行ってご飯を食べることも、旅行することも、何でも僕にとっては肥やしになってしまいます。普通は「社長は遊んでいるだけだ」とか「飯を食べているだけだ」となってしまうけれども、ホームランを打つと別なのです。「やはり打ってくれたよね」となります。だから、プレッシャーはあります。

倉重:期待に応え続けなければならないプレッシャーはトップの孤独ですよね。

関谷:ルパンが泥棒として才能がなかったら、ただのエロおやじです(笑)。『カリオストロの城』が僕にとっての永遠の理想なので、あれでなければ駄目なのです。

D:最後にハートを盗んでいってしまうのですね。

関谷:だから女の子には優しくしなければいけないし、普段ふざけていても決めるところは決めなければいけないのです。

倉重:「見た目も中身もかっこよく」ですね。

関谷:「見た目も中身もかっこよく」は僕の美学です。見た目がかっこ悪くては駄目なのです。そして、中身はもっとかっこよくありたい。ちょっと話が変わってしまいますけれども、誤解を恐れずに言えば弊社はすごく顔採用です(笑)。

倉重:そうだよなと思いました。皆、美人さんですよね。

関谷:これもちゃんとロジックが決まっています。顔のかわいい子は、すごくわがままか、すごくいい子かどちらかなのです。他人に嫉妬がなく、素直でいい感じか、ちやほやされて育ち、わがまま過ぎてしまうのかという二極に分かれています。かわいくてわがままな子は、弊社のような典型的などベンチャーにはどう考えても来ません。もっとステータスがあるとか、楽に生きられる会社があります。うちにいる子は、みな本当に見た目も中身もいい子ばかりです。

倉重:本当にそう思います。

関谷:僕の趣味なのか、割と皆、派手目なのですが(笑)。

倉重:コギャル好きのころから変わってないですね。やはり生い立ちから今の流れまで全部つながっているなと今の話で思いました。今日は本当に長いお時間ありがとうございました。

(おわり)

対談協力:関谷 有三(せきや ゆうぞう)

オアシスライフスタイルグループ代表取締役

1977年栃木県宇都宮市で生まれる。2001年成城大学入学3日目にしてイベントサークルを立ち上げ、大学最大級の規模へ拡大。大学卒業後、倒産寸前だった実家の水道工事店を立て直すため地元の栃木に戻り再建に成功。その後、2006年(株)オアシスソリューションを起業し、大手マンション管理会社と提携するビジネスモデルを生み出し、数年で全国規模に成長させ業界シェアNO.1を誇る企業へと躍進。

2011年東日本震災を経験し、1つの事業だけでは事業の永続は難しいと痛感し、3本柱の事業を運営することを決意。2013年タピオカミルクティー発祥の台湾のカフェブランド「春水堂」を3年の交渉の末に日本へ誘致し、代官山に海外初店舗をオープンし、その後全国へ展開し空前のタピオカミルクティーブームの火付け人となる。

2017年水道事業の作業着をリニューアルしたことを契機に第三の事業としてアパレル事業を立ち上げ、独自開発の新素材「ultimex」を使用したスーツに見える作業着「ワークウェアスーツ」を開発。現在、導入企業数は1,600社を突破。2019年にはユナイテッドアローズ名誉会長の重松氏が顧問に就任。2021年現在、ユナイテッドアローズ、ベイクルーズをはじめとしたセレクトショップや三越伊勢丹などの百貨店での取り扱い、ANAとのコラボなど注目を集め、コロナ禍のアパレル不況の中でも異例の急成長を続けている。

2021年3月8日に自身初の書籍「なぜ、倒産寸前の水道屋がタピオカブームを仕掛け、アパレルでも売れたのか?」を発行。時代を先駆ける様々な新規事業を成功へ導き、「令和のヒットメーカー」と呼ばれる。