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カニの女王様が教える「オンライン商談」を成功に導く7つの秘訣(3/4)

倉重公太朗弁護士(KKM法律事務所代表)

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緊急事態宣言中は、商談の場がリアルからオンラインへと切り替わりました。リモートワークが定着したことで、今後コロナが落ち着いても、「もう元のような働き方には戻らない」と言われています。とくに首都圏のホワイトカラーは、テレワークを継続しながら、必要に応じて出社するハイブリット型の働き方が主流になるはずです。オンライン時代の今こそ、やっておくと、人と差がつくポイントは何でしょうか?

<ポイント>

・オンライン面談3種の神器

・信頼は、「専門性×人間性」から生まれる

・オンライン時代に人と差がつくポイントは?

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■秘訣その⑥機材への投資が結果を変える

倉重:個人でも、会社でもリモートワークの環境を整える必要がありますね。

柏:オンライン商談では、使う道具、つまり機材も重要です。倉重さんは画面も明るく映っていますし、かなり機材にこだわっていらっしゃるようですね。先程オンライン商談は声が命という話をしましたが、自分の声に自信がなければ、マイクにお金をかけたほうが結果は早く出ます。

倉重:マイクは大事です。お願いだから営業の人は、そこに気を使ってくれと思います。

柏:声の聞きづらい営業なんて最悪ですよね。

倉重:会議室にリアルで出社して、2人で同じマイクを使っているのですが、微妙な位置にあって、どちらの声も聞きづらいことがあります。1人1台パソコンを持ってこいと思います。

柏:倉重さんは「今後はオンラインが主流になる」と判断されたからこそ、機材にしっかり投資されていると思うのですが、いかがですか?

倉重:そうですね。オンライン会議を効率よく進めるには最低限の機材が必要です。最低でも一人一台のPCとヘッドセットは欲しいですね。また、対面する場合も、やる意味を考えます。「これは込み入った話だし、対面でホワイトボードを一緒に見ながら説明したほうがいい」というものしかやりません。

柏:営業的に言えば、決まる確率は対面が一番いいのですが、最近外資系コンサルティング会社が出したデータによれば、首都圏のホワイトカラーの90%はこのままオンラインのまま仕事が続くだろうという話です。

倉重:やはり完全に元に戻るわけではありませんよね。

柏:調査の数字だけでなく、実感としてもそうですよね。業種によっては「このままオンラインが続いてしまうのかな」というところが多いのかなと思います。

倉重:そういう時代だからこそ、機材に投資するだけで差別化できるのはいいですね。コロナに文句を言うのではなくて、いかに工夫して突破するかだと書いていらっしゃいました。

柏:本当にそうです。私もオンラインに切り替えた時には、もう60歳になっていたので、これからITを覚えることや、新しいことにチャレンジするのは絶対に嫌だと当初は思っていました。でも、やはりこの後自分がどう働くのかを考えたときに、「このような方法で徹底的に変えると、下手すれば90歳まで座って仕事ができそうだ」と思いました。

倉重:私も生涯元気で働きたいです。

柏:やはり「会社が光回線を引いてくれない」「会社がカメラを買ってくれない」と言っている場合ではありません。ビジネスパーソンはそこに投資するのが大事だと思います。

倉重:まさにそこの意識を持つだけで、随分と差が付けられるかと思います。まずは少しのお金とIT技術でカバーできるものを最大限に使えという話ですね。

柏:本当にそう思います。それはぜひやっていただきたいと思います。「カメラ・マイク・ライト」がオンラインツールの3種の神器です。現在私のオンラインの道具はこのようになっています。バックアップも考えて全部2つずつ。カメラもある程度の投資をすれば、とても明るく映ります。私は研修講師という職業柄、ライトも使っています。

倉重:いいですね。

柏:お金で自分を、簡単に良く見せることができるのですから、オンラインでの打合せや商談がどんどん増えているビジネスパーソンは、このような所に投資すると「投資対効果抜群」ということになります。

■秘訣その⑦オンライン商談では、戦略的に自分を魅せる

柏:先程「映えと盛り」ということで、見た目の重要性についてお話しました。戦略的にいかに早くオンライン商談に入っていくかを考えると、自分の中身をどのように見せるかということもすごく大事になってきます。人の中身は生まれつきなどと思わないで、きちんと相手にどう伝えたいのかを定義していくのです。「一度きりの商談で私の人となりを理解してもらうのは難しい。だからオンライン商談は苦手だ」と感じている営業の方には、特に考えて頂きたいポイントです。

私の場合は、「経営理念と営業力強化の知見を持った明るくてパワフルで庶民的なコンサルタント」を自分の中での「推し」ポイントにしています。

 お客様と信頼関係を築くのに、今までのように何回も会えなくなってきました。戦略的に早く自分というものを見せるために、「明るくてパワフルで庶民的」という設定を作ったのです。倉重さんも、相手にどのように見られたいかというイメージはお持ちですよね。

倉重:「自信たっぷりに何でも答えられる安心感」というようなキャラクターです。

柏:そのような定義はすごく大事です。お客さまに信頼してもらうのは、結局は専門性と人間性の掛け算でしかないのです。専門性という部分は、話を始めればすぐにわかる部分です。例えば専門性の高い、優秀な弁護士さんがいたとしても、いつも約束を守らず、人間的にだらしなかったとします。信頼性=専門性×人間性と考えると、片方がゼロだったら、どんなにもう一方が高くてもゼロになってしまいます。営業の方はすでに専門性を持っていらっしゃるので、自分ブランディングがすごく重要になるのです。

倉重:自分のキャラクターをきちんと定義せよと。

柏:先程お話させて頂いたような表面的な部分だけでなく、「内面的な見え方」も含みます。倉重さんだったら、「ニュータイプの企業側弁護士に見せるには、どのような言動をしたらいいのか」というところまで考えていきます。会社自体が職場ごとにブランディングされていくと、「あの会社の商談はスピーディーだし、企業側に立っている」という信頼感が生まれるのです。そうすると、短い時間しかもらえないオンライン商談でも良い状況でスタートできます。

倉重:いいですね。

柏:これは研修でもお伝えしています。ちなみに倉重さんの見せ方や、自分をブランディングするとしたら何ですか。

倉重:「自信満々」と、「元はバカです」というところです。中学の時は偏差値が37でした。

柏:それはインパクトとしては、かなり強烈ですね。かつ適度なぬけ感もあります。

倉重:あとは最近筋トレもしているので、「リアルで取っ組み合いになっても大丈夫です」という安心感もキャラづけとして演出しています(笑)。

柏:そういうことがオンラインの垂直営業のクロージングには大事なポイントになってきます。「映えと盛り」における魅せ方も含めて1枚にまとめると、このようなイメージになります。

柏:信頼は、「専門性×人間性」から生まれます。私の場合には、新人でいきなり30億売ったとか、独立して1年で新規の上場企業のお客様が11社いたという専門性があります。人としての内面も含めた魅せ方は、「パワフル、明るい、庶民的」です。土台となる根底の部分にミッションがあります。「想いをエネルギーに生きる人を育てる」というブランディングです。

倉重:専門性×人間性という視点はあまりなかったです。確かに個の時代だからそのようなものが大事ですよね。

柏:自分をブランディングすることは、ここ1年ですごく大事だと思っています。

倉重:オンライン上で自分を戦略的にどう見せるかというのが、重要ですね。個人事業主だけではなくて、会社に所属していても、「〇〇会社の〇〇さん」というキャラ付けをするべきなのですね。

柏:そうです。営業の人ではなくても、オンラインでの会議や商談で、自分をどのように見せていくかをきちんと考えたほうがいいのです。足りない部分はお金を使って解決していくことによって、これからの10年20年、トランスフォーメーションによって、働く期間を一気に伸ばすことができるわけではないですか。

倉重:それは差が付きますね。

柏:やっている人は絶対に差が付くと思います。「もう私は年だから」「私はITが弱いから」という人は、映えも盛りも関係なく、そこを諦めています。

 でも、勉強しようと思ったら、オンラインだからこその技は、まだまだあります。例えば、だらだら話さないで、短く切って喋って余韻を持たせるなどオンラインならではの技を、どの業界でも通用するポータブルスキルとして身に付けることによって、働く時間をぐっと伸ばすことができます。

倉重:そうなれば、どこの会社へ行っても多分やっていけるでしょう。やはり会社に依存しなくて良くなるというのが強いですね。

柏:本当にそう思います。

倉重:そのような気持ちになってしまえば、働くのも気楽というか、「別に俺はいつでもどこでも転職できるし」と思えるのは強いですよね。

柏:そうですね。このスキルを身に付けて、在宅で働けるようになったことによって、一気に職業選択の幅も広がりました。もちろん大変な方もいらっしゃるので、私も恵まれているほうだとは思うのですが。

倉重:逆に東京にいながら地方の会社の営業もできるわけです。

柏:そのような方も結構増えています。業種によっては今まで各地にあった営業所を一つにまとめています。私のお客様の中にも、営業をもうエリア配属だけではなくて、本来の担当に加えそのエリア担当をサポートする形でオーバーレイと呼ばれる営業をつけているところもあります。オーバーレイは、上からおおいかぶさるというような意味です。オーバーレイ営業の人は、すべてオンライン商談ですから、自宅から全国を見ることもできます。「足で稼ぐ」から進化したできる営業の新しい形です。

倉重:たしかに地方の会社の副業営業を、東京の方がやるケースや、その逆も実際に出ています。優秀な方はいろいろな会社の営業をするわけです。それではますます差が付いていきますね。

柏:差は付く一方だと思います。このようなデジタルトランスフォーメーション、DXといいますけれども、DXに乗り遅れないことが重要ではないかと思います。

倉重:還暦を過ぎても関係ないという話ですね。

柏:私は、「還暦上等」という気分なのです。年齢など関係ない。このままがんがん行ってしまうよと。自分のブランディングをしっかりして、環境設備を整えて攻めていけば、「絶対にいける」という手応えを、この1年でつかみました。

倉重:やはり個として自立するというのがキーワードだと思います。

柏:そうだと思います。より一人ひとりの個性が際立つような働き方のほうがいいと思います。

倉重:「〇〇会社の○○です」ではなくて、何ができる人なのですかという話ですね。

柏:そうです。これまでは、信頼性の掛け算の中に、会社の看板を使っている人がいたと思います。これからは腕一本で行っていただいてもいいのではないでしょうか。

倉重:自分の比率が高まっているということですね。

柏:この1年でこのようになるとは思っていませんでした。

倉重:デジタルトラストも結構大事だと思います。やはり名前で検索して来る人は、われわれの業界以外でも増えています。

柏:自分でどう魅せるかの戦略にプラスして、デジタル、つまりWEB上で自分がどう見えているかも気にした方が良いということですね。この対談のYahooニュースなどは、検索すると必ず上位に来ています。

倉重:その時にどのような記事が出てくるのかが重要です。私の場合は本を出していますが、一般の方でもnoteなどは誰にでも書けます。自分の思いをどこかに書いておいて、事前に見てもらう。場合によっては商談の中で紹介してもいいかなと思います。インターネット上の信用整理が大事ですから。

(つづく 第4回はコチラ

対談協力:柏 恵子(かしわ けいこ)

人材育成コンサルタント・研修講師

株式会社ピグマリオン代表取締役社長

明治大学専門職大学院 グローバルビジネス研究科 経営学修士(MBA)

食品メーカー水産部門での16年間の商社ウーマン時代を経て、2005年米国コンサルティング会社、フランクリン・コヴィー・ジャパン株式会社入社。シニアコンサルタントとして12年間、2000人以上の経営層、人事責任者と人材育成の仕事に携わる。2017年 株式会社ピグマリオン設立。経営理念の策定・浸透のコンサルテーションおよび営業力強化の研修やワークショップを企業向けに実施。

2021年7月 医薬経済社より「突破せよ!新時代を生き抜くMRの掟」を上梓

雑誌「医薬経済」で「アフターコロナのMR像」を連載中

弁護士(KKM法律事務所代表)

慶應義塾大学経済学部卒業後司法試験合格、オリック東京法律事務所、安西法律事務所を経てKKM法律事務所 第一東京弁護士会労働法制委員会外国法部会副部会長、日本人材マネジメント協会(JSHRM)理事 経営者側労働法を得意とし、週刊東洋経済「法務部員が選ぶ弁護士ランキング」 人事労務部門第1位 労働審判等労働紛争案件対応、団体交渉、労災対応を得意分野とし、働き方改革のコンサルティング、役員・管理職研修、人事担当者向けセミナー等を多数開催。代表著作は「企業労働法実務入門」シリーズ(日本リーダーズ協会)。 YouTubeも配信中:https://www.youtube.com/@KKMLawOffice

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