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人と組織で業績を上げる! サイバーエージェントのクリエイティブ人事【曽山 哲人倉重公太朗】最終回

倉重公太朗弁護士(KKM法律事務所代表)

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サイバーエージェントが社員数20人のころに入社し、5000人の上場企業になるまで見てきた曽山 哲人さん。最近は、「ソヤマン - 人と組織のお悩み解決!!」というYouTube番組の配信も始めています。曽山さんが経験から培った、「苦手な部下とうまくやる方法」「やる気が出る目標の作り方」「自走する環境を作るコツ」などのマネジメントノウハウや組織のコミュニケーションスキルを、使いやすい形で紹介してくれます。その目的は意外なところにありました。

<ポイント>

・苦手な人にも意図的に興味を持つ

・才能が大化けできる会社を作りたい

・YouTubeを始めた本当の狙い

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■相性の合わない部下とうまくやる方法

倉重:YouTubeで「苦手な部下とうまくやる方法」がとても良かったので、ここでも話してもらうことは可能ですか?

曽山:ありがとうございます。苦手な部下とうまく接するのは、正直言うと、本当に難しいと思います。ただ前提として認めるべきは「私はあなたと違う」ということです。相性が合う人もいるし、合わない人もいる。それが世の中です。なぜなら違う人だから。残念ながら仕事においては、相性がいい人とだけマッチングするわけではありません。相性が合わない、もしくは「もう少し何とかできないか」という関係性の人もいます。そのために大事にしているのが「意図的に興味を持つ」ということです。自分から「これは仕事だ」と思って、意図的に興味を持つのです。

倉重:興味を持つのが仕事だということですか。

曽山:そうです。あえて「意図的に」と言っていますが、まず自分から興味を持つのです。人間という動物には反応性があるので、興味を示すと相手も興味を示してくれます。神戸大の金井先生から「人は興味を持つ人に興味を持つ」と教えてもらったときには、とんちのような言葉だったので、一瞬何言っているのか分かりませんでした。「まずは曽山君から興味があるということを示せば、100% ではないけれども、相手が興味を示す可能性が上がる」と言われて、確かにそうだと思いました。「その人の趣味や好きなこと、大事にしていることなどを一個でも多く知るようにしてみたら」というアドバイスをもらって、面談でいろいろ実験したのです。

例えば「最近の趣味は何?」「最近何か面白いものはあった?」と聞いたら、それを楽しそうに話してくれます。そして、教えてもらった漫画やアニメ、映画等を見るのです。

倉重:実際に見てみるのですか。

曽山:100%とは言わないですが、見ます。そして「面白かった」などの感想をメッセで送るようにしています。

倉重:そこまでやりますか。

曽山:やります。絶対に喜んでくれると思っているから。

倉重:それはうれしいでしょうね。

曽山:そうすると、「言ったら動いてくれた」という反応に対する喜びがあり、同じアニメ、漫画、趣味を面白いと思った仲間という部分で共通項ができます。この2点がものすごく強いのです。ですので、自分から興味を示しましょう。それがすごく大事だと思います。

倉重:最初は「おはよう」と言うところから始めて、趣味なり、最近やったことなり、何でもいいから興味を持って聞くということですね。それでも駄目なときもあるかもしれませんが、少なくとも、「苦手だな」と思っていても、そうして接していれば自分の中ではやりきった感もありますね。

曽山:まさにそうです。そこまでやって合わないなら、それはそれで仕方がないと、結構諦めもつくのです。

倉重:絶望的な場合もありますからね。

曽山:そうです。人間なので合わないこともあります。

■世界最高の人材育成企業を作る

倉重:私からの最後の質問になります。曽山さんの夢を教えていただきたいです。

曽山:僕自身の夢は、世界最高の人材育成企業を作るということです。

倉重:いいですね。壮大ですね。

曽山:どうせなら、そこまでやりたいのです。会社のビジョンが「21世紀を代表する会社を作る」です。21世紀を代表する会社になれば、世の中に通用するプロダクトがあり、すごく良い社員がいるはずです。それならどうしても人材育成の良い仕組み、良い風土が必要になります。僕はどうせなら「日本発ですごく人が育つグローバルカンパニーがある」と言わせたいのです。

倉重:「サイバーで働いていたのか。それなら安心だね」と言われるような会社ですね。

曽山:そうです。僕は才能が大化けできる会社を作っていきたいと思っています。自分の才能に驚いてくれたら、僕は最高だと思っています。30歳でも40歳でもいいのです。飲みに行ったときに、社員から「曽山さん、俺はこんなにできるとは思いませんでした」と言われたら最高です。僕はこういう人を一人でも増やしたいのです。だから抜てきが必要なのです。型にはめてしまうと、これが絶対に生まれません。

倉重:本当ですね。「どうせ無理だろう」「流れもそうなっているし」と諦めてしまいますよね。なるほど。そこで化学反応が起きたときの喜びといったらないですね。一杯飲みたくなります。

■視聴者からの質問コーナー

倉重:最後に観覧者からの質問を受けてもいいですか。

曽山:もちろんです。ぶっちゃけ、今回の話に関係ない質問でも、何でもお答えします。個人情報以外は全部しゃべります。

倉重:さすがですね。では、ツルさん。

ツル:ありがとうございます。ツルと申します。仕事は人事コンサルトをしています。どちらかというと、企業の人事の方々とたくさん会う仕事をしています。大変共感できて、どれも共感できるお話ばかりでした。何でもお答えされるということなので、個人的な興味関心で聞きたいと思います。いろいろな企業の人事の方とお会いするのですが、曽山さんのようなパワフルな方ばかりでもありません。曽山さんの個性があって、今ここまで来ている部分もあるのではないかと思います。曽山さんが自分の立場を次の人に引き継いだり、後進を育てたりする場合、どういった人物に注力して育てますか。

曽山:ありがとうございます。それは今もずっと取り組んでいることです。もともと人事執行役員は私だけだったのが、今は3人になっています。私のところから2人執行役員が出ました。この2人と、他のメンバーにも才能ある人材が多く、誰でも後継者になると思っています。彼らには、私がしていないことで会社の大きくなる分野を任せることを大事にしているのです。曽山と同じキャラになる必要は全くなく、あくまで会社全体を一緒に見ながらその人の強みが伸ばせればいいという考え方です。後継者には自分がやれないことを任せて、大きく育ってもらうことを期待しています。

ツル:ありがとうございます。

倉重:ありがとうございます。

倉重:では最後コヤマツさん。福岡在住、29歳のエンジニアです。

コヤマツ:2つほど聞きたいことがあります。先ほど、サイバーの人事に求めることで、「事業戦略をよく知っている」「専門的な素養がある」「新卒の方」という話がありました。その中で、「事業戦略を知っている」というところに興味があります。どの程度知っていて、どういう理解をしていたら、サイバーさん的に「この人は事業を知っている」と思うのでしょうか。

曽山:基本的には、まず私が要求するレベルで言うと、担当している事業部門がある場合、「その事業部門の今の事業戦略は何か」と聞いたときに、私が分かるレベルで回答してもらえたら、まずはOKだというのが一つです。

 もう一つは、事業人事として仕事をする以上は、事業部で働く社員の共感が得られなければならないので、事業部の社員から「この人は分かってくれている」というセリフもしくは心情が生まれることがすごく大事なのです。基準値は、受け手側である社員がそう思うかということ。私がそれを聞いて、分かりやすく伝えられるかという2点がチェックポイントになると思います。

コヤマツ:ありがとうございます。

コヤマツ:次の質問は、自分は人事ではないので分からないというのがあからさまな話です。今、弊社の人事もいろいろ聞いてきてくれますが、私は福岡なので、答えたところで、全然拾ってくれなければ意味ないのではないか、ということばかりしています。社員の立場で、人事のうまい使い方を教えていただければ、使っていきたいと思います。

曽山:一つあるとすれば、コヤマツさんがやりたいと思っている仕事を明確に意思表明しておいて損はないということです。経営陣が異動を決めているケースもありますが、異動のための情報を集める仕事は人事が担うことが多いです。ですので、コヤマツさんがどういう人なのか、どういうことをやりたいと思っているのか人事の人にインプットしておくと、抜擢やどこか良いポジションへの異動があったときに「コヤマツさん、どうかな」と思い付きやすくなる可能性は高まります。

 人の情報の一番良い使い方は、自分のキャリアにプラスにすることです。ですので、自分がやりたいことを言っておくことが一番おすすめです。もちろん人事に力がないケースもありますが、言っておいて、マイナスにはならないかと思います。プラス以上にはなります。

コヤマツ:ありがとうございます。少しずつ上げるようにしていきます。

曽山:やりたいことがあるなら本当は役員などの経営陣に言ったほうがいいですよね。でもそれは言える勇気やタイミングもあるでしょう。

コヤマツ:はい、少しタイミングを見計らいます。ありがとうございます。

倉重:ちょうどこの前の対談が小杉俊哉さんでした。今日の抜擢もそうですが、いかに若い人を含めて組織を活性化し、コロナ後も強く生きていくことができるのかという話でした。

曽山:小杉先生は本当にすごくいい思い出があって、初めて偉い方、コンサルや教授とのパネルディスカッションをすることが、人事1年目の時にありましたが、そのお相手が小杉先生だったのです。初めてのパネルディスカッション経験です。その時に「サイバーの人事の取り組みはこういうことをしています」と言ったら、めちゃめちゃほめてくださって、それで自信がつきました。

倉重:大学教授の人に褒められたら嬉しいですよね。。

曽山:人事を頑張ろうと思えたので、もう本当に小杉先生は僕の心の支えというか、スイッチを押してくださった方です。神なのです。

倉重:いいですね。本当に全ての質問に答えていただき、ありがとうございました。

曽山:ありがとうございます。

倉重:ありがとうございます。YouTubeも引き続き見ていきたいと思います。

曽山:ぜひよろしくお願いします。

(おわり)

対談協力:曽山哲人(そやまてつひと)

株式会社サイバーエージェント 常務執行役員CHO

上智大学文学部英文学科卒。高校時代はダンス甲子園で全国3位。

1998年に株式会社伊勢丹に入社し、紳士服の販売とECサイト立ち上げに従事。

1999年に当時社員数20名程度だった株式会社サイバーエージェントに入社。

インターネット広告事業部門の営業統括を経て、2005年人事本部長に就任。

現在は常務執行役員CHOとして人事全般を統括。

「クリエイティブ人事」「強みを活かす」などの著作のほか、ビジネス系YouTuber「ソヤマン」などSNSでも情報発信。

弁護士(KKM法律事務所代表)

慶應義塾大学経済学部卒業後司法試験合格、オリック東京法律事務所、安西法律事務所を経てKKM法律事務所 第一東京弁護士会労働法制委員会外国法部会副部会長、日本人材マネジメント協会(JSHRM)理事 経営者側労働法を得意とし、週刊東洋経済「法務部員が選ぶ弁護士ランキング」 人事労務部門第1位 労働審判等労働紛争案件対応、団体交渉、労災対応を得意分野とし、働き方改革のコンサルティング、役員・管理職研修、人事担当者向けセミナー等を多数開催。代表著作は「企業労働法実務入門」シリーズ(日本リーダーズ協会)。 YouTubeも配信中:https://www.youtube.com/@KKMLawOffice

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