アフターコロナ時代にフリーランスの働き方はどう変わる?【平田麻莉×倉重公太朗】最終回

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

フリーランスの中には、コロナで大きな影響を受けて売上げが下がった人もいれば、かえって業績がアップしたという人もいます。その違いは何でしょうか。また、同じような事態が訪れたときに備えて、何をしておけば良いのでしょうか? 会社員であっても、フリーランスであっても、さまざまな働き方の選択肢を、選べるだけの力がなくてはいけません。今回の対談には、その力を養うためのヒントが散りばめられています。

<ポイント>

・60歳からフリーランスとして活躍できるのか?

・職種やビジネスモデルを分散させる

・会社員とフリーランスの境界が曖昧になっていく

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

■新しい選択肢を選ぶ力を身につける

倉重:ポストコロナで企業の価値観も変わっていくので、若い人にとっては逆にチャンスかもしれません。これから働く人にアドバイスをお願いします。

平田:今70歳までの就業機会確保などの議論もあります。あれも結局、「長く働いてほしいけれども再雇用はもう無理だ」と企業が白旗を上げているから、フリーランス化を支援するのでもいいという話なのです。

そうすると、60歳以上はみんなフリーランスになる可能性があります。

率直に言って、今既に60代になっている人たちの誰もがいきなりフリーランスになって、シビアな成果主義の中、がつがつと働けると考えているのだとすれば、さすがに政府も夢を見過ぎで、そんなに簡単ではありません。

ずっと会社員として上から言われたことを一生懸命こなしてきた人たちですから、苦労をされる方もいらっしゃるのではないかとは思います。ただ、長い変化の中では、そういう流れは不可逆です。

それこそ終身雇用も危ういですし、解雇規制も今後どうなるか分かりません。

30代や40代のなるべく早いうちからそういう事態を見据えておく。

会社の看板を使いながら、「自分の仕事」と言える実績をどれだけ残していけるか。自分ならではの付加価値や工夫があるからこそ実現できていることや、副業を意識しながら働くことが、キャリアの蓄積になるのではないかと思います。

20代の人は目の前のことをやって、まず何かしらのプロを目指すという感じになりますね。

倉重:独立しようか迷っている人も、今おっしゃったように、会社の看板を使い倒すという視点は大事ですね。

平田:別に独立せず会社の中にいても、自律している人は自律しています。「会社のリソースを使い倒して自分の仕事をするんだ」という勢いがあれば、独立してもものすごく重宝される人になると思います。

倉重:会社員でありながら、好き勝手にやっている人もいますからね。

平田:そうですね。協会としては、いろいろな働き方の選択肢を整えて、行ったり来たりできるようにしようと活動しています。ただ、選択肢が整ったとしても、それを選べるだけの力があるかどうかはその人にかかっています。

そこだけは、誰かがお膳立てするのは難しくて、選択肢を広げるためには本人ががんばるしかありません。ある意味、ちょっと世知辛い世の中になっていく部分はあるんでしょうね。

倉重:自分の足で歩くしかないということですね。

平田:欧米はもともとそういう社会ですから。日本のように終身で守られるというほうが珍しかったのです。そういう意味では、グローバルスタンダードになっていくのだろうと思います。

倉重:「こちらの列車に乗ってください」と言われることを期待して待っていても、列車はもう来ないのではないかという話ですね。

平田:そうです。これまでは雇用されていることが安全で、労働者の権利と言われてきましたが、これからはむしろ1つの会社に依存していることが一番のリスクになり得る社会がきています。

倉重:そうですね。60歳まで1つの会社しか知らずにいて、いきなり明日からフリーランスを始めるほうがむしろ大変という話ですよね。

平田:やはり早めに準備して、自律することを意識していくといいのかなと思います。

倉重:それを意識して仕事にするだけでも違います。ちょうどこの前公開した対談が、タニタさんの社内フリーランス制度の話でした。社内にいながら、業務委託契約を交わし、フリーランス化しています。そういう会社も本当に増えてくるかもしれません。

平田:タニタさんも、実はフリーランス協会のベネフィットプランをOEMで提供させていただいています。「社員の自律と安心をしっかり両面でサポートしていきたい」とご依頼いただいたので、ぜひということでご提供しました。

企業が業務委託の人にどのようなサポートを行うのかということも、今後注目されていくのではないでしょうか。

倉重:なるほど。確かにそうですね。

最後に、平田さんの夢をお願いします。

平田:このフリーランス協会については、私がいつ死んでも大丈夫な、サステナブルなインフラにしたいと設立当初から考えています。個人事業主として自分の仕事もしているので、また次のテーマが出てきたときには、ゼロイチから挑戦を続けたいと思います。

倉重:やはり行動が早い平田さんですから。

平田:もう、節操なくいろいろと興味関心があるので。

倉重:取りあえずやってみるということですね。

ありがとうございます。

■帰属意識は掛け持ちができる

倉重:せっかくですから、一つずつ質問を頂いてもいいですか。

コヤマツ:3つぐらい聞きたいのですが、いいですか。

まず1つ目が、コロナの影響をあまり受けていない、「むしろ前より売上げが上がった」というフリーランスの方はいるのかということ。

2つ目は、今のコロナのような危機が来たときに対応し得るような、フリーランスとしての考え方はあるのでしょうか。

3つ目に、契約の話です。自分の会社はフリーランスの方から「こういう者ですが、どうですか」という情報を受領する側なのですが。

倉重:発注者側ということですか。

コヤマツ:そうです。発注者としてどういうことを見るべきなのかも教えてほしいと思います。

平田:1つ目で、やはり特需の方はいらっしゃいます。具体的に言うと、飲食店にしろ、小売店にしろ、人が通えなくなっているので、ECサイトやクラファンを立ち上げている方は多いですよね。そういうサイト制作やファンドレイジングアドバイザーの方たちには、けっこう注文がきているという話を聞きます。

イベントや研修をオンラインで開催できる人にも、仕事依頼が殺到していると聞きますし、テレワークの導入支援をしているコンサルの方なども忙しいようです。

倉重:全然予約が取れないみたいですね。

平田:そうです。あとは、まさしく社労士さんや中小企業診断士さんなど、補助金の申請サポートをする方もフリーランスや個人事業主の方が多いのですが、忙しいと思います。

倉重:私も仕事が増えているので、助成金の申請ができませんでした。

平田:さすがですね。そういう方はいらっしゃると思います。

2つ目の問題で、有事に備えたリスクヘッジという点では、ポートフォリオを分散しておくことがすごく大事です。

クライアントはもちろん、可能であれば、職種やビジネスモデルという意味でも分散しておいたほうが望ましいですね。

クライアントや、ビジネスモデルが1個しかないと、それが駄目になったときに大打撃を受けてしまいます。

アーティストや研修講師の方でも、コンサートやセミナーはできなくても、本を書いていたから印税収入があったとか、オンラインの個別コンサルが収入源になったということがあります。

いくつかポートフォリオで持っているといいと思います。

倉重:以前、この対談で山口周さんとお話ししたときに、「未来を予測しても意味がないんだ。何が起こるかなんて分かるわけがないから」という話をしていました。まさにそのような状況になっていいます。

先ほどのような分散型のポートフォリオがあると変化対応がしやすく、マインドとしても適応力が高くなるということですね。

平田:そうだと思います。発注者側の視点だと、「業務委託は外注」というイメージを持っている企業はいまだに多いのです。しかし、インサイダーとして招き入れるスタンスのほうが、より活躍してもらえる可能性があります。

倉重:フルコミットしてもらうという感じですか。

平田:いわゆる9時~17時、週5日勤務という時間でのフルコミットではないけれども、気持ちとしては、同じチームの一員として仕事をしてもらう。タスクベースの業務の指示を事務的に報連相するだけではなくて、会社としてのビジョンや経営課題、ゴールといった上流の話をしっかりと共有して、同じ方向を向いてもらうと、フリーランスもすごくやりがいを持って働けます。指示を受けていないことも、こちらからプロアクティブに提案したり、情報を取りに行ったりできますし。

私はよく言うのですが、帰属意識は掛け持ちができるのです。企業の方は、「フリーランスとか副業の人は、どうせ集中してくれないんでしょう」とか、「ロイヤリティーがないんじゃないの」と言います。しかし、人間はもともと、会社以外にも家族や母校、趣味のサークルなど、いろいろなところに帰属意識を持っています。私も10年以上複数の名刺を持って活動していますけれども、全部自分のホームだと思っていますし、主語は全部「うちの会社は」とか「われわれは」なのです。

帰属意識を高めてもらうために、上流の話を面倒くさがらずにしていただくといいのではないかと思います。

倉重:「外注さん」ではなくていかに「チーム」を作るかということですね。

平田:下請け扱いもお客さま扱いも両方良くないと思います。

倉重:確かに私の事務所も、ITコンサルをフリーランスの細井英理華さんにお願いしていますけれども、積極的に提案してくれるので、勝手にチームだと思っています。

細井:ありがとうございます。

平田:チーム感は大事ですよね。

倉重:では、最後に細井さん。

細井:フリーランス協会として、これからどのようにしていこうという展望はありますか?

平田:協会は今7つのプロジェクトがあって、本当にいろいろな活動をしています。会員も個人が3万4千人ほど、法人が210社ぐらいいらっしゃいます。

なので、会員の皆様の課題やニーズに耳を傾ける実態調査や、それに基づく政策提言を引き続きしていきます。

今年もう1つ注力しているのは、「ジョブ創出」です。フリーランスや副業人材の活用可能性や素晴らしい事例を伝えると同時に、契約時の留意点や、雇用と違うことを理解してもらうための啓蒙活動を行います。トラブルを防ぐことも協会のミッションだと思っていますので、自治体や政府と連携して行っていく予定です。

倉重:例えば最近売り込んでいる仕事にはどういうものがあるのですか。

平田:フリーランスや副業人材の活用に関する素朴な疑問や相談に対応する無料の窓口として、「求人ステーション」というサービスを立ち上げました。また、経済産業省と一緒に活用事例集を作ることもしています。フリーランスの視点で言うと活躍の場を広げることになりますし、企業の視点で言うと、人材不足などの経営課題を解決するサポートになるはずです。

倉重:多分、企業にとっても「こんな業務をお願いできたんだ」という発見があると思います。

平田:そうです。やはり知らないだけで、「そういう使い方ができるんだね」とか、「本当に業務委託で入ってもらって良かった」ということは多いです。倉重さんも実感されていると思いますけれども、「知らないだけ」というのが、特に地方の経営者さんでは多いです。

興味があっても、具体的な実務の部分で、契約やマネンジメントをどうすればいいか分からないということもあります。そこの相談に乗ったりもしています。

地方創生のプロジェクトで言うと、今「関係人口創出」というのが、「まち・ひと・しごと」の地方創生戦略の第2期の戦略になっています。

実はその戦略策定に先立って協会で予備調査を実施してみたところ、首都圏の会社員の8割以上が「地方で仕事をしてみたい」「副業やプロボノをしてみたい」と思っているという結果でした。「地方で副業をしたい」という人と、地方の企業をマッチングする合宿やイベントも開催しています。

倉重:面白いです。

どんどん活動が広がっていくと、「働く」に関するグラデーション化が進んでいきそうですね。本日は長時間、ありがとうございました。

平田:ありがとうございました。

(おわり)

対談協力:平田麻莉(ひらた まり)

一般社団法人プロフェッショナル&パラレルキャリア・フリーランス協会 代表理事

慶應義塾大学総合政策学部在学中の2004年にPR会社ビルコムの創業期に参画。Fortune 500企業からベンチャーまで、国内外50社以上において広報の戦略・企画・実働を担い、戦略的PR手法の体系化に尽力。ノースウェスタン大学ケロッグ経営大学院への交換留学を経て、慶應義塾大学大学院経営管理研究科修了。同大学ビジネス・スクール委員長室で広報・国際連携を担いつつ、同大学大学院政策・メディア研究科博士課程で学生と職員の二足の草鞋を履く。出産を機に退学、専業主婦を体験。

現在はフリーランスでPRプランニングや出版プロデュースを行う。2017年1月にプロボノの社会活動としてプロフェッショナル&パラレルキャリア・フリーランス協会設立。 政府検討会の委員・有識者経験多数。

日本ビジネススクール・ケース・コンペティション(JBCC)発起人、初代実行委員長。パワーママプロジェクト「ワーママ・オブ・ザ・イヤー2015」、日経WOMAN「ウーマン・オブ・ザ・イヤー2020」受賞。