2020年版「私たちはなぜ働くのか」~山口周×倉重公太朗 新春特別対談その4~

倉重:では、私からは最後の質問なのですが、山口さん自身の夢を最後に語っていただきたいのです。

山口:僕は、非常に大きい夢で語ると、そこは倉重さんと似たような方向なのかもしれませんが、みんなが個性を全開させて、生き生きと働いて仕事で幸せになっている世の中ができたらいいなというのはあります。

倉重:いいですね。

山口:もっと変な人が出てきたり、ある意味でみずみずしいというか。

倉重:非常に共感しました。最後にですが、私も先ほどお話しした『雇用改革のファンファーレ』、なぜ今の雇用の在り方を変えるべきかというのは、うちも娘がいますけれども、将来娘が社会に出るときに、いい日本の社会であってほしいという想いがあります。

山口:全く同じ問題意識です。僕も子どもが3人いますから、特に女性が2人いるので、彼女たちが世の中に出てきたときに、世の中のルールから窮屈に当てはめられるのではなく、人生はいいものだ、生まれてきて良かったと思えるようなですね。きっと仕事をしている時間が、人生の活動期間の中で一番長いので、それは人生のクオリティーにものすごく影響すると思いますので、彼女たちの持っている個性がきちんと尊重され、価値につながるような生き方がやりやすい世の中にできるといいなと思っているのです。

倉重:いいですね。ありがとうございます。では、あとは参加者から質問を募っていきたいと思いますが、どちらからいきますか。

ツル:今日はありがとうございました。私もニュータイプをかなり読ませてもらって、大変今日は興味深く聞きました。

倉重:質問者はコンサルですね。

ツル:そうです。一応コンサルをやっています。私自身はコンサルタントなので、割と自由にやっているし、お客さんのくそ仕事と、私も大変お二人のお話に共感する部分はあるのですが、みんなが変われたらいいのにと思う一方で、なかなか変われない人もいるというのはよく分かるのです。先ほどの若い人に向けてということで、正しいことではなく好きなことというお話がありました。質問は若い人に向けてでしたが、率直に何歳くらいまで人は変われると思いますか。

山口:幾つになっても変われると思います。

ツル:どうしても年を取ったら染み付いてしまったものや捨てられないものがどんどん出てくると思います。答えはないのかもしれませんが、何かこういうきっかけがあったらいいのにと思うことはありますか。

山口:よく3つがいわれていて、大病を患うということと刑務所に入ることですよね。あとは死にかけ、大病を患うと同じですね。3つは何でしたか。大病を患うのと刑務所に入るのとで、結構人は変わるといわれていますけれども、なかなか両方とも望んでやるのは難しいので。

倉重:難しいですね。あとは離婚をするなどですか。

山口:離婚もあるかもしれませんね。別離ということなのだと思います。あとは多分大前研一さんが言っていたのだと思いますが、人生を変えたかったら、3つ変えろと、あれは何でしたか。まず場所ですよね。

倉重:あとは付き合う人ですね。

山口:付き合う人を変える、あとは時間配分といっていましたか。極端に時間配分を一度変えてみるということです。これはプランド・ハップン・スタンスというジョン・クランボルツのセオリーでありますけれども、とにかく場所をぼんと変えて大阪に転職してしまうなどです。

倉重:それはだいぶ人生が変わりますね。

山口:海老原さんというベンチャーキャピタリストがいて、彼はいきなりシンガポールにベンチャーキャピタリストとして独立してオフィスをつくったのです。英語が話せなかったので、非常に大変だったと言っていました。

倉重:英語が話せないのに行ったのですか。

山口:行ったのです。英語が話せるようになってから行こうと言っているから、みんなは来られないのですと言っていました。彼は英語が話せない状態で行って、いまだに英語が話せないのです。イエーイ、イエー、ベリナイスと、全然分かっていないのですと言って、でも、だからこそ本当に五感を集中して、こいつはいけているのかということを見ていて、それで大成功しているのです。インドやシンガポールのベンチャーに出資をしているということなのです。

倉重:それは直感ですね。

山口:だから、住む場所を変える、変わるきっかけとしては、時間配分を変える、付き合う人を変える、住む場所を変えるということですかね。

倉重:それで何か好きなものが新たに見つかれば、多分人は何歳でも変われるのかなと思いますね。

山口:何歳でも変われると思います。

倉重:ありがとうございます。では、エミさん。

エミ:今日はありがとうございました。うちの会社は、非常にオールドタイプの方がすごく、経営層も。

倉重:ザ・昭和?

エミ:ザ・昭和で、物流会社なのですが。

倉重:大企業ですけれども。

山口:そうなのですが、今、働き方改革で残業時間が、昔はベテランの方々は100時間やっているのが当たり前でしたが、今は60時間に減らすようになって、逆に、何人かから聞いたのは、空いた時間を、今まで仕事しかしてこなかったので、何に使ったらいいか分からないという話で、似ている部分もあるのですが、そういったときはどうやって、場所や付き合う人、時間配分を変えるというお話もありましたが、他に企業として言ってあげられることはないでしょうか。

倉重:折角早く仕事が終わっても飲みにいくしかないのですよね。

山口:勉強がいいと思います。スクールというのは学校という意味ですよね。スクールというのは、元々ギリシャ語のスコレーというのが語源なのですが、ギリシャ語で暇という意味なのです。

倉重:暇だから勉強をするのですね。

山口:どちらかというと、暇をつぶすための技術を学ぶ。例えば絵を描いたり音楽を聞いたり、文学作品を楽しむ、幾何学やパズルなど、ギリシャ人は暇ですから、どれいが全部やるので、とにかく暇なのです。すごく暇だというときに、では神話をやるかと。暇をいかにつぶすかという、暇をつぶすためには教養が要るということです。暇を有意義に過ごすためには、教養が要るというのは、これもギリシャ時代の考え方なので、ドイツ語やフランス語をやるなど、1日2時間勉強をして、1年たったら、2カ国語くらいは必ずできるようになります。2カ国語、3カ国が話せるようになれば、人生が変わります。仕事もいろいろ変化が出るでしょうし、あるいは何でもいいのです。博士課程を出たら専門家だといわれますが、博士課程は3年もあるのです。

倉重:人生の中の3年ですね。

山口:だから10年、皆さんの仕事の経験、新入社員から3年たったら、専門家といっていばれるかというと、全然いばれませんが、博士課程で3年間たっていたら、博士で専門家といわれるのです。だから、大概のことを3年やると、世の中の第一人者として語れるようになります。でも、先ほど言ったビジョンをつくるのが大事なのかと思います。時間といえば資源なので、時間は自分という会社の経営資源の一つなのです。これはどういう領域に使うかというのは、自分というものの経営戦略がはっきりしていないと、戦力の逐次分散投入になってしまって、関係がないのに語学をやってみたけれども、ラテン語がすごく難しいので、半年たってやめたなど、それを何度も繰り返していると、明らかによく分からない人になりますよね。だから、暇な時間をどう使うかというのは、幼稚園ではないので、そのようなことは自分で考えろという話ですが、一つあるとすれば、どういう人生やパーソナリティーを、自分の人生劇場の中で自分という役として演じたいですかという、自分が自分の人生の演出家になれるわけです。それは全く制約がないわけです。テレビ局のプロデューサーがいるとか偉そうな監督がいるとか、演出家が自分という主人公を、全く自由にプロデュースしていいわけです。だから、ラテン語が話せて考古学に詳しくて、でもサラリーマンもやっていてというのが格好いいと思ったら、それをやれば、全く2~3年たてばできるわけです。だから自分の人生劇場の脚本家になって、自分というものが、例えば40歳のときにこういう像でありたい、50歳のときにこういう像でありたいとなったときに、暇な時間をリソースとして経営資源としてどう使うかというのがおのずと決まってくると思うのです。

倉重:ずっと言われたことをやってきた人は、自由に選択というのが難しいのでしょうね。

山口:やり方が分からないのだと思います。

倉重:学校から含めて今まで一回も習っていないのです。

山口:ただ、基本的な考え方は、資源の使い方ということですから、戦略資源だから、引き算の発想です。

 どうありたいか、今はどうなのか。差分がどこで大きいかというのをやると、資源でも、お金で解決できること、時間で解決しなくてはいけないこと。

倉重:まずは、どうありたいかですね。

山口:そうです。

倉重:それをサウナで考えろということですね。

山口:はい。気が付かないと、ポール・サミュエルソンという文学者が言っていますけれども、考えて生きなければいけない。そうしないと、生きたように考えてしまうと言っているのです。考えて生きるということと、生きたように考えてしまうというのは真逆ですよね。だから、考えて生きるということをすると、おのずと時間の使い道もある程度見えてくるのではないかという気がします。

倉重:答えは自分の中にしかないということですね。では、最後にコヤマツさん、お願いします。彼は福岡から来たのです。

コヤマツ:全然話は変わるのですが、山口さんが面白いと思う人や会社や物は、どういうことを面白いと思うのかが本を読んでいて気になったのですが、何か明確にあるのですか。こういう人が面白いとか、それとも、直感でこの人は面白いという判断なのですか。

山口:難しいですね。倉重さんも、今日は面白い人だと思いましたし、建前で勝負をしていないというのは、非常に僕の場合は大事な気がしています。建前しか出てこない人がいるのです。マッキンゼーなどは結構そういう傾向があるのですが。

倉重:そういうのはすぐ分かりますか。

山口:何か分かります。入っていける感じがしないのです。対話をしていて、その人の心の中に、手をずぶっと入れている感じが全然しなくて、ぱーんとはじかれている感じです。プロトコルが非常に表面的で、一応こういうのが大事といっている建前のようなところから全然奥に入っていかない感じが、そういう会社もあるのです。人間味やある種のヒューマニティー、駄目な部分も含めてですが、駄目だな、こういうものだなという、そういう駄目な部分も含めてヒューマニティーを感じさせる会社や人のほうが僕は好きです。

倉重:人間味ですね。

山口:人間味です。

倉重:いいですね。僕は思うのですが、1時間対談をしっかりやると、本当に向き合うというか、これは合う、合わないが非常に影響すると思っていて、全然かみ合わない人がいたのです。楽しい人と対談していると、時間がたつのがあっという間なのです。本当につまらないと、まだ30分しかたっていない、何を話そうか、1時間と言ってしまったしと。

山口:分かります。1時間と言っているのに、明らかに30分で終わるのは失礼ですよね。

倉重:何とかつないでという。

山口:それは非常に疲れるでしょう。

倉重:無理やりひねり出すのです。

山口:お疲れさまです。そういう人と事務所を構えなくて良かったですね。

倉重:本当にそうです。

山口:でも、結婚してしまったなど、世の中には結構あるでしょう。だから、プロトコルが、他の物差しが女の人から見たら、会社のブランドや家柄など、こちら側から見たらきれいさや学歴など、でも本質は好きかになりますよね。ヒューマニティーの部分でフィットするかどうかですから。

倉重:まさにそうですね。今日は本当にありがとうございました!

山口:ありがとうございました。

対談協力:山口 周(やまぐち しゅう)

独立研究者・著作者・パブリックスピーカー

1970年、東京都生まれ。慶應義塾大学文学部哲学科卒業、同大学院文学研究科美学美術史学専攻修士課程修了。電通、ボストン・コンサルティング・グループ等を経て、組織開発・人材育成を専門とするコーン・フェリー・ヘイグループに参画。現在、同社のシニア・クライアント・パートナー。専門はイノベーション、組織開発、人材/リーダーシップ育成。株式会社モバイルファクトリー社外取締役。一橋大学経営管理研究科非常勤講師。『外資系コンサルが教える 読書を仕事につなげる技術』(KADOKAWA)、『世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか?─経営における「アート」と「サイエンス」』(光文社新書)、『知的戦闘力を高める 独学の技法』(ダイヤモンド社)、「ニュータイプの時代」(ダイヤモンド社)など、著書多数。