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【特別対談】プロフェッショナルのキャリアvol.1 森本千賀子×倉重公太朗

倉重公太朗弁護士(KKM法律事務所代表)
森本千賀子氏

倉重:「弁護士倉重公太朗、労働法の正義を考えよう」スペシャル対談企画第2弾です。

全部で5~6回の短期集中連載になると思いますので宜しくお願いします。

今日のゲストは元リクルートで営業ナンバーワン女子の森本千賀子さんです。森本さん、簡単に自己紹介頂けますか?

森本:ありがとうございます。元々、関西出身で、大学でこちらに出てきまして、卒業とともに新卒でリクルートの子会社に入社をしております。人材業界を志望していたので、敢えて子会社に入社をし、気が付いたら25年おりまして、ずっと転職エージェントという仕事をやってきました。

 途中まで組織マネジメントをやってきていたんですが、ちょうど第2子の出産を機に、主人が出張族になってしまったこともあり、自己完結型の仕事をということでコンサルタントの道に再度キャリアを戻しまして、そこから転職エージェントとしてコンサルタントをやりながら、講演をしたり、執筆活動したり、会社の顧問をやったりして、二足のわらじ?いわゆる「兼業」のカタチをとってきました。

 2014年からは、個人事業主の申請をして、会社にも認めてもらい兼業をやってきました。あるお客様から法人じゃないとお付き合いができないと言われたので、じゃあということで、昨年の3月に株式会社morichを実はリクルートに在籍しながら起業しました。半年間、並走していたんですが、自分の会社のほうでの仕事のウエートが増えだしたこともあり、必然の流れの中でそちらのほうにシフトすることを決め、昨年の10月に独立ということで、転職エージェントを軸に、今オールラウンダーエージェントとしてやっています。

倉重:人材紹介だけじゃないということですね。

森本:はい、HR関連のソリューションだけじゃなく、多様な課題に応じて、マーケティングとかブランディングとか、はたまた婚活支援まで。人と組織のマッチングから、組織と組織だったり、その延長線として人と人のマッチングまでやっています。

倉重:困ったときのmorich、何でも、よろず相談ですよね。

森本:ということがブランドビジョンです。

倉重:森本さんは、転職エージェントとしても、いろんな働き方を見ていると思うんですが、働き方改革について話すという場も結構多いんじゃないですか。

森本:もうここ2年ぐらいはそういうテーマでの登壇の機会がかなり増えました。その前までは声がかかるテーマは「女性活躍推進」だったんです。ここ数年で旬なテーマががらっと変わったという感じです。

倉重:元々、働き方改革って労働力人口が確実に減少する中で、今までどおりの昭和的な「24時間働けますか」という労働者像だけではもう日本企業は立ち行かないぞと。一億総活躍と言われるように、女性のみならず、それはもう障害を抱えている人であったり、育児をする人、あるいは外国人、あらゆる手を尽くして人材を確保しなければならない。そんな背景があるのかなと思うんですけれども。

森本:そうですね。労働力の確保というのが最たる、背景だと思います。

倉重:でも、昭和的な働き方から変わらなきゃいけないと言われていますが、森本さんは昭和的な働き方バリバリだったんじゃないですか?

森本:私ですか?そうです。20代の頃なんて、むしろ私というよりもリクルートという会社のカルチャーとしても、基本的には飲みにいったとしても、その後、会社に戻るとか、土日も関係なく仕事をしていたので、元々はそういう環境でやっていました。

倉重:そういう生活で、どうして続けられたんですか?

森本:元々、私が入社した時代は、社会的にもまだ男女差がありました。総合職が女性でも採用されるようになり始めた頃なんですが、実態は違ってました。なので、男女差のないところ、いわゆる、フェアな環境を求めてました。そういう意味では、リクルートは本当にフェアだったんです。まさに実績評価で。

倉重:「女性だから」こう評価する、ではなく男女関係なく本当に実績で評価するということですね。

森本:もう実績で評価されるというその環境が私の中ではすごく心地良くて、なので女性だとか男性だとかということをあまり気にしたことがないんです。

倉重:でもやっぱりライフイベントって女性はどうしてもありますから、特に出産を機に働き方が変わるというのはご自身も経験されているんじゃないですか?

森本:そうです。大きくは。結婚じゃあまり変わらなかったんですけれども、出産が大きなターニングポイントにはなりました。

倉重:お子さん、今、2人いらっしゃいますよね。で、旦那さんは出張族で、全然育児の協力も期待できないと。

森本:第1子のときは実は相当サポートしてくれていました。なぜなら私がマネジメント業務をやりたかったのもあって、そういう意味ではかなり育メンとして、保育園の送迎からいろいろな意味でのメンタリティーなサポートも第1子のときはかなりのウエートでしてくれていたなと今から思うと、感謝しています。

倉重:第2子になってそれが随分変わったんですか。

森本:第2子になって、物理的に平日は地方に出張三昧で家にいないという。かつ私自身が生まれは関西なので実の両親のサポートも得られない。

倉重:ご両親に頼るわけにもいかないと。

森本:そうなんです。だからもうある意味、第3の家族というんですか、「家族外家族」とかよく言っていますけれども、そういう他人様のサポート・支援を得て、何とかやりくりしてきたという状況です。なので、私の働き方もマネジメントから自己完結で仕事ができるようにということで、いわゆるキャリアチェンジですよね。コンサルタントという、現場に戻るという一兵卒の営業に戻るということの決意も、意思決定も第2子の出産後の育休明け2010年のときにリスタートしました。

倉重:まず、だから自分自身の働き方を変えないと家庭と仕事を両立させるのは無理だなと思われたということですよね。

森本:もう潔くそこは変えました。

倉重:マネジャーだとやっぱり無理でしたか。

森本:できなくはなかったんでしょうけれども、恐らく自分の中でストレスを感じながらやっていただろうなと思って、そこはもう思い切って私の中でけじめをつけたというんですか。

倉重:やっぱり人の行動ってコントロールできないし、想定外のこととかもいろいろあるしね。

森本:何よりも緊急事態、有事のときに対応ができないというのはやっぱりマネジメントとしてはいかがなものかというのは自分の中でやっぱりあったんです。その時は、まだ子供も2人、私でしかサポートできないという思い込みや意識もあったので、なのでもうそこは思い切って、自分のキャリアを変えると。環境っていうんですか、インフラを変えるというほうにシフトしました。

倉重:女性のキャリアってかなり難しいですよね。いろいろ皆さん悩まれる人、多いと思うんですけれども、何歳で出産したらいいのかとか、育休、いつ取ろうかとか、その間に昇進をどこまでしようかとかいろいろあると思うんですけれども、意識していたことはありますか?

森本:そういう意味でいうと、第1子は私、33歳で生んでいるんです。タイミングを意識してというか、戦略的にというわけではないんですが、第2子が39歳の時に出産しているんですが、なかなかできなくて、相当に辛かった不妊治療も経験していますし、流産も二度経験し、そういうリスクをやっぱり年齢とともに私自身負っていたんです。そういう意味でいうと、今から振り返ると、もっと戦略的に考えておけば良かったなと思います。

倉重:例えばどういうことをですか?

森本:第1子の出産年齢や、第2子を考えるタイミングをいうのをもっと前倒しで。よく前倒しキャリアと私はよく言ってるんですけれども、もっと前に前に倒してチャレンジしておけば、もしかしたらマネジメントを続けていられたかもしれないかなと思っています。

倉重:森本さんはよく女性に対して「早く管理職経験しろ」とおっしゃいますよね。

森本:そうなんですよ。

倉重:その心は?

森本:出産というそのものがまず一つみんな初めてで大きな壁になるんですよ。「ワーキングマザー」って未知なる世界なので、想像がつかない分、不安なんですね。ましてやそこに掛け合わせの管理職も初めてとなると、さらに見えない不安が重なる。

倉重:ダブル初めてというわけですね。

森本:ダブル初めてというので、ものすごく高くてすごいぶ厚い壁に感じてしまうんです。なので、先に管理職だけでも経験しておくと何が大変かというのがまず理解できます。どういうことが大変なのかという。

倉重:ある程度先が読めるということですかね。大変さは変わらないとしても、見通しが立つのは大きいですね。

森本:想像もつかない不安というよりも、どういう点が大変か、何を準備すればいいかの予測がつくことは大事ですね。あと、もう一つは女性にとってマネジメントって非常にやりがいのある一つのミッションなんですよね。大変だけれども、やりがいがあるということも分かるので、この程度だったら乗り越えられる、かつ乗り越えた先にはちゃんと自分らしさとか、自分が生かされる道があると思えると、実は容易に越えられるんです。

 なので、出産前にその経験さえしておけば、いわゆるワーキングマザーという一つの壁だけ乗り越えれば、マネジメントのチャレンジって実は容易にできてしまうものなんです。ただ、出産前にしておかないと、出産後だと高くてぶ厚い壁なので、もう乗り越えることすらできなくなっちゃうという問題があります。

倉重:確かに、子供育てながら管理職という未知の山に登るというのはちょっとしんどいですね。

森本:相当しんどいと思います。メンタルも含めて。なので、できるだけ前に前に倒して経験しておくというのは、今から思ったらもっと私もやっておけば良かったかなと。

倉重:前倒しキャリアですね。森本さんご自身の働き方というのも、もう好むと好まざるというか、必然的にそうしないとやっていけないという形で変えていったロールモデルになりますよね。

森本:そうです。ただ、本当に変えたことで今の私に繋がっているんです。夫が平日は出張族になってしまい、出した答えは、現場に戻ろうと一兵卒の営業ミッションにキャリアシフトしています。自己完結型のコンサルタントという意味ではやりがいはあったんですが、やっぱり組織のマネジメント、チームビルディングとか部下育成やっていた頃に感じていたあのパッションというんですか、情熱を持て余しちゃったんですよね。何となく消化できない思いみたいなものも多少ありまして。

倉重:ちょっと情熱の持って行き場を見失っていたんですね。

森本:そうです。何となく物足りなさみたいなところも感じていて、それを外向けの活動に変えたんです。中じゃなくて、外に何かできないかということを、ちょうど二回目の復職のタイミングでもある2010年からスタートし始めました。そうすると、講演の打診がきたり、書籍や連載などの執筆の話があったり、いろいろな企業の顧問をやってくれみたいな話があったりとかどんどん舞い込んできて、それは多分あのまま組織マネジメントやっていたらそんな余裕もなく内向きの組織のマネジメント業務ということに終始していたと思うんですが、それが出産を機に自己完結型の現場の営業の職務に変わり、多少、持て余した自分のエネルギーを外に向けて使うことに目覚めたという流れです。

倉重:結果的に森本さんとしてすばらしいキャリア構築に繋がったということですか。

森本:そうなんです。なので実は私の会社の設立日は3月3日なんです。これ、次男の誕生日なんです。次男が生まれたことで、そういう自分に変えてもらったという意味を込めて。

倉重:人生が変わるきっかけですね。

(つづく)

対談協力:森本千賀子

1970年生まれ。獨協大学外国語学部英語学科卒。

1993年リクルート人材センター(現リクルートキャリア)に入社。転職エージェントとして、大手からベンチャーまで幅広い企業に対する人材戦略コンサルティング、採用支援サポート全般を手がけ、主に経営幹部・管理職クラスを求めるさまざまな企業ニーズに応じて人材コーディネートに携わる。約3万名超の転職希望者と接点を持ち、約2000名超の転職に携わる。

約1000名を超える経営者のよき相談役として公私を通じてリレーションを深める。累計売上実績は歴代トップ。入社1年目にして営業成績1位、全社MVPを受賞以来、全社MVP/グッドプラクティス賞/新規事業提案優秀賞など受賞歴は30回超。常にトップを走り続けるスーパー営業ウーマン。

プライベートでは家族との時間を大事にする「妻」「母」の顔 も持ち、「ビジネスパーソン」としての充実も含め“トライアングルハッピー=パラレルキャリア”を大事にする。

2017年3月には株式会社morich設立、代表取締役として就任。

転職・中途採用支援ではカバーしきれない企業の課題解決に向けたソリューションを提案し、エグゼクティブ層の採用支援、外部パートナー企業とのアライアンス推進などのミッションを遂行し、活動領域も広げている。

また、ソーシャルインベストメントパートナーズ(SIP)理事、放課後NPOアフタースクール理事、その他社外取締役や顧問など「複業=パラレルキャリア」を意識した多様な働き方を自ら体現。

3rd Placeとして外部ミッションにも積極的に推進するなど、多方面に活躍の場を広げている。

本業(転職エージェント)を軸にオールラウンダーエージェントとしてTV、雑誌、新聞など各メディアを賑わしその傍ら全国の経営者や人事、自治体、教育機関など講演・セミナーで日々登壇している現代のスーパーウーマン。現在、2男の母。

弁護士(KKM法律事務所代表)

慶應義塾大学経済学部卒業後司法試験合格、オリック東京法律事務所、安西法律事務所を経てKKM法律事務所 第一東京弁護士会労働法制委員会外国法部会副部会長、日本人材マネジメント協会(JSHRM)理事 経営者側労働法を得意とし、週刊東洋経済「法務部員が選ぶ弁護士ランキング」 人事労務部門第1位 労働審判等労働紛争案件対応、団体交渉、労災対応を得意分野とし、働き方改革のコンサルティング、役員・管理職研修、人事担当者向けセミナー等を多数開催。代表著作は「企業労働法実務入門」シリーズ(日本リーダーズ協会)。 YouTubeも配信中:https://www.youtube.com/@KKMLawOffice

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