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新型コロナ病床使用率が増加 長野県は「医療非常事態宣言」発出(追記あり)

倉原優呼吸器内科医
(提供:イメージマート)

11月14日20時追記:長野県が「医療非常事態宣言」を発出したことをうけて。

全国的に病床使用率は増加傾向にあり、感染者数が多い地域では40~50%を超えてきました。今のところ救急医療や重症病床への影響は軽微ですが、「対策強化宣言」の基準を満たす自治体も出てきました。長野県は11月14日に「医療非常事態宣言」の発出しました。

病床使用率が増加傾向

政府は、新型コロナウイルス対策分科会において、「オミクロン株の対応の新レベル分類」を示しました(1)。

病床使用率ごとにレベル1~4に分類を設け、レベル3以上になった場合に自治体が自粛等を呼びかける「対策強化宣言」を発出できるようにし、さらに悪化した場合には「医療非常事態宣言」を発出できるようにしました(図1)。

図1. オミクロン株の対応の新レベル分類(参考資料1をもとに筆者作成)
図1. オミクロン株の対応の新レベル分類(参考資料1をもとに筆者作成)

第8波に関しては、気温の低下による換気不良が影響したためか、「東高西低」の波のスタートとなっています。

病床使用率は自治体ごとに算出方法に差異がありますが、すでに逼迫している地域もあります(図2)。長野県は、「対策強化宣言」の目安とされている50%を4日連続で上回り、感染拡大のスピードが急激であるため「医療非常事態宣言」を発出しました

図2. 11月12日時点の全国の新型コロナの病床使用率(筆者作成)
図2. 11月12日時点の全国の新型コロナの病床使用率(筆者作成)

同時流行時のシナリオ

第7波は、最大で1日あたり26万人の新規感染者を記録し、かなり医療が逼迫しました。救急搬送困難例が増え、救える人が救えなくなり、医療従事者もつらい思いでした。

第8波で新型コロナとインフルエンザが同時流行した場合、最悪のシナリオで第7波の約3倍の発熱外来需要が発生すると試算されています(図3)(2)。

図3. 新型コロナ・インフルエンザの同時流行時の最大新規陽性者数予測(参考資料2より作成)
図3. 新型コロナ・インフルエンザの同時流行時の最大新規陽性者数予測(参考資料2より作成)

これまでに経験したことがない医療逼迫を迎える可能性があり、私たち医療従事者も警戒を強めています。

受診前の対策をすすめる

感染者の大多数は軽症で済みます。しかし、感染者数が増えていくと、入院が必要な患者さんも比例して増えていきます。「数の論理」に勝てず、医療が逼迫してしまうハードランディングとなってしまいます。

また、現在の院内感染対策を撤廃して、空いている病床にとりあえず新型コロナ患者さんを入院させていくと、非コロナの入院患者さんにどんどん感染していき、院内クラスターが多発します。

そのため第8波は、ワクチン接種・自己検査・「オミクロン株の対応の新レベル分類」に応じた対応、といった受診前の対策をすすめることが重要になります。

水際対策や全国旅行支援といった緩和策がすすめられ、以前と比べて「コロナ慣れ」したことで、新型コロナに対する警戒心は低下しています。また、「ワクチンを接種していてもどうせ感染する」や「副反応が大きな割に効果が期待できない」と解釈する人も増えています。

コロナ禍前にあったその他ワクチンと比べると高い有効性があることには変わりなく、重症化を予防できる恩恵はあるので、広く接種をすすめていく必要があると考えています。

(参考)

(1) 第20回新型コロナウイルス感染症対策分科会 (URL:https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/ful/taisakusuisin/bunkakai/dai20/gijisidai.pdf

(2) 新型コロナウイルスと季節性インフルエンザの同時流行に備えた対応. 資料1(URL:https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/001002374.pdf

呼吸器内科医

国立病院機構近畿中央呼吸器センターの呼吸器内科医。「お医者さん」になることが小さい頃からの夢でした。難しい言葉を使わず、できるだけ分かりやすく説明することをモットーとしています。2006年滋賀医科大学医学部医学科卒業。日本呼吸器学会呼吸器専門医・指導医、日本感染症学会感染症専門医・指導医、日本内科学会総合内科専門医・指導医、日本結核・非結核性抗酸菌症学会結核・抗酸菌症認定医・指導医、インフェクションコントロールドクター。※発信内容は個人のものであり、所属施設とは無関係です。

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