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新型コロナが陽性になった場合の自宅療養・宿泊療養の注意点は 経口薬は処方されるのか(追記あり)

倉原優呼吸器内科医
(写真:イメージマート)

※2022年9月日 療養期間について図を改訂

現在流行しているオミクロン株の亜系統BA.5は非常に感染しやすく、新型コロナウイルスのワクチンを複数回接種していてもブレイクスルー感染する可能性があります。そこで、新型コロナウイルスに感染してしまった場合の自宅療養・宿泊療養に備え、今のうちに準備しておくものや注意点、そして経口薬の供給について書きたいと思います。

新型コロナウイルスの検査で陽性になった場合

9月7日に、陽性者の療養期間が短縮されました。無症状の場合、検体採取日を0日目とし基本的には8日目から解除となります。ただし、5日目に検査キットで陰性を確認すれば6日目から解除となります(図1)。診断時に無症状だった人が途中で新型コロナを発症した場合、発症日を0日目と再設定して有症状陽性者扱いとなります。

図1. 無症状陽性者の療養期間(筆者作成、イラストは看護roo!より使用)
図1. 無症状陽性者の療養期間(筆者作成、イラストは看護roo!より使用)

有症状の場合、入院している場合と入院していない場合で療養期間が変わります。

入院している場合、従来と同じように発症日を0日目とし症状軽快から72時間経過していれば11日目に解除となります。高齢者施設に入所している人は、入院している場合と同じ長めの療養期間となります。入院していない場合、発症日を0日目とし症状軽快から24時間経過していれば8日目に解除となります(図2)。

図2. 有症状陽性者の療養期間(筆者作成、イラストは看護roo!より使用)
図2. 有症状陽性者の療養期間(筆者作成、イラストは看護roo!より使用)

宿泊療養することになったら何を準備する?

感染急拡大時において、宿泊療養施設は、基本的に軽症だが重症化リスクが高い基礎疾患がある人や高齢者、あるいは自宅に重症化リスクが高い家族や妊婦がいる場合に優先して入所することになっています。希望する人の全員が入れるわけではありません。

また、医療機関に入院中の患者さんが、自宅に退院が難しい場合や、解除前に病棟が逼迫してきた場合などにも、宿泊施設が利用される場合もあります。

宿泊療養の場合は、外出せずに施設内で過ごすことになります。施設ごとに注意事項や生活上のさまざまな制約があります。毎日健康状態の報告が必要となり、看護師が常駐しています。

コロナ禍当初は宿泊施設に不足している物品も多かったのですが、最近は具合が悪くて食欲がない人のためのゼリー飲料、常温保存ができるインスタント食品が用意されている施設も増えました。そのため、入所する際は最低限必要な物品を持参していけばよいと思われます。図2は宿泊施設の看護師から聞いたオススメ準備物品です。参考にしてください。

図2. 宿泊療養時の準備物品(筆者作成)
図2. 宿泊療養時の準備物品(筆者作成)

宿泊費や食費の自己負担はありませんが、帰りの交通費などが必要になることもあるので、ある程度現金を持っていったほうがよいです。

部屋からほとんど出られないのでストレスが溜まると思いますが、飲酒や喫煙は厳禁です。飲酒して酔っぱらうと、病状の把握ができなくなるからです。喫煙した場合、数万円が請求される施設もあるので注意してください。

自宅療養する場合の注意点は?

現在、陽性になった人のほとんどが自宅療養となります。東京iCDC専門家ボードから「新型コロナウイルス感染症自宅療養者向けハンドブック」(URL:https://www.fukushihoken.metro.tokyo.lg.jp/iryo/kansen/corona_portal/shien/zitakuryouyouhandbook.files/zitakuryouyouhandbook02.pdf)が公開されているので参考にしてください。

陽性になった場合、基本的には自宅から外出をしないことが望ましいです。どうしてもやむを得ず外出しなければならない場合は、必ずマスクを着用し、できるだけ短時間で用事を済ませて戻ってください。

家族と同居している場合、「感染対策を講じた日」から濃厚接触者ではないとする自治体が多いため、自宅内でしっかりと対策を講じましょう。もちろん完全に生活空間を分けることは難しいので、できる範囲でよいです。部屋の窓を常時5~10cm開けて換気をするか、1時間に1回10分程度大きく換気をすることが重要です。

独居の場合は室内のこまめな消毒は不要ですが、家族と同居している場合はドアノブや手すりをこまめに消毒することが重要です(図3)。消毒は、アルコールあるいは0.05%に希釈した次亜塩素酸ナトリウム水溶液を用いてください。後者を自宅で作ることは難しいので、環境用のアルコールタオルなどを薬局で入手するのがベストです。

図3. 自宅療養時の注意点(筆者作成)
図3. 自宅療養時の注意点(筆者作成)

自治体によって自宅療養者のサポートには違いがありますが、食料品等の支援がおこなわれることが多いです。東京都では、「自宅療養者フォローアップセンター」を設置し、LINEを活用した健康観察をおこなっています。

自宅では、咳の悪化、呼吸困難の悪化、酸素飽和度の低下(パルスオキシメーターで測定)、胸痛や意識障害の出現がないかなどをチェックしてください。酸素飽和度は93%以下にならないかどうかが目安です。ただし、数値はパルスオキシメーターの性能にもよりますので、呼吸器内科医としては一律93%とは考えておらず、「常時90%を下回るようなら赤信号」と認識しています(1)。

あらかじめ準備を

現在新型コロナの感染が急拡大しており、どれだけ注意していても感染してしまう可能性が高まっています。予防はもちろん大切ですが、いつ感染しても大丈夫なよう、感染時に必要となるものを防災グッズのようにあらかじめそろえておくとよいでしょう。普段から使用している日用品で多めに備えておきたいものとして、以下のものはあってもよさそうです。

  • 普段使用している日用品で多めに備えておきたいものとして、以下のものはあってもよさそうです。
  • 常用薬・解熱鎮痛薬
  • マスク
  • アルコール消毒液
  • ごみ袋
  • ティッシュペーパー・トイレットペーパー
  • 生理用品
  • ハンドソープ・洗剤
  • スポーツドリンク・ペットボトル飲料
  • レトルト食品・インスタント食品・パックごはん

軽症者向け経口治療薬は処方される?

軽症者向けの経口治療薬として、現在モルヌピラビル(商品名ラゲブリオ)ニルマトレルビル/リトナビル(商品名パキロビッド)が特例承認されています。

いずれも発症5日以内に内服を開始することが望ましいとされていますが、基本的に重症化リスク因子がある人への投与に限定されており、元気な若者が処方されることはありません。

一般流通は行われていませんが、ラゲブリオあるいはパキロビッド登録センターに登録されている医療機関であり、在庫があれば外来でも処方されます。ただし、医療機関の在庫が少ないことから、同センターに登録されている院外薬局へ処方箋を発行することが多いです(図4)。

図4. ラゲブリオあるいはパキロビッドの処方の流れ(筆者作成)
図4. ラゲブリオあるいはパキロビッドの処方の流れ(筆者作成)

効果については、有効性の数値だけをみるとパキロビッドのほうが効果的と考えられ、国際的にもパキロビッドの使用が優先されます(2)。

しかし、パキロビッドは薬の飲み合わせに注意が必要で、腎臓の障害がある場合は減量したり使用を控えたりする必要があります。発熱外来にやってくる人に血液検査がなされないことも多く、お薬手帳を持ってきていないなんてこともザラにあるため、結果的にラゲブリオが処方されるほうが多い状況となっています(3)。

まとめ

誰もが新型コロナに感染する可能性が高まっている現在、「もしも感染したら」と常日頃から意識し、備えておくことが重要です。

経口治療薬は重症化リスクが高い人にしか配分されません。インフルエンザのように簡単に処方されるわけではない点を知っておきましょう。

(参考)

(1) 新型コロナの療養中に測定する酸素飽和度は、何%あれば安心か?(URL:https://news.yahoo.co.jp/byline/kuraharayu/20210810-00252241

(2) Therapeutic Management of Nonhospitalized Adults With COVID-19(URL:https://www.covid19treatmentguidelines.nih.gov/management/clinical-management/nonhospitalized-adults--therapeutic-management/

(3) 新型コロナウイルス感染症治療薬の使用状況(政府確保分)について(URL:https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000121431_00324.html

【この記事は、Yahoo!ニュース個人編集部とオーサーが内容に関して共同で企画し、オーサーが執筆したものです】

呼吸器内科医

国立病院機構近畿中央呼吸器センターの呼吸器内科医。「お医者さん」になることが小さい頃からの夢でした。難しい言葉を使わず、できるだけ分かりやすく説明することをモットーとしています。2006年滋賀医科大学医学部医学科卒業。日本呼吸器学会呼吸器専門医・指導医、日本感染症学会感染症専門医・指導医、日本内科学会総合内科専門医・指導医、日本結核・非結核性抗酸菌症学会結核・抗酸菌症認定医・指導医、インフェクションコントロールドクター。※発信内容は個人のものであり、所属施設とは無関係です。

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