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濃厚接触者の自宅待機期間が7日間に短縮 陽性者が同居している場合は? 現時点のまとめ(2月2日追記)

倉原優呼吸器内科医
(写真:アフロ)

★2022年9月8日 記事を改訂しました(URL:https://news.yahoo.co.jp/byline/kuraharayu/20220908-00313794

オミクロン株の感染拡大により、身近な人が新型コロナ陽性者となるケースが増えています。陽性者1人あたり複数人の濃厚接触者が同定されるため、社会機能がダメージを受けることになります。

濃厚接触者の自宅待機期間は当初「14日間」でしたが、2022年1月14日に「10日間」へ、1月28日に「7日間」と当初の半分へ短縮されました。諸外国の状況に鑑みると、今後5日間くらいまでは短縮されるかもしれません。

濃厚接触者の定義

まず濃厚接触者の定義についておさらいしておきましょう。自治体によって表記が異なりますが、概ね以下の通りとなります。同居の人はもれなく濃厚接触者になり、それ以外では「1m以内・15分以内」というのが原則になります。濃厚接触者は業務逼迫がなければ保健所が認定していましたが、現在は陽性者が連絡したり、学校が個々に判断したりしています。

図1. 濃厚接触者の定義(筆者作成)
図1. 濃厚接触者の定義(筆者作成)

濃厚接触者になったら

濃厚接触者となった場合、必要に応じてPCR検査等がおこなわれますが、行政検査等が逼迫しており、もはや検査しない自治体も多いです。陽性者との最終接触日から一定期間、以下のことを遵守していただく必要があります。

・発熱(1日2回の体温測定)、咳の悪化、呼吸が苦しくなるなどの健康状態の自己観察

・不要不急の外出を自粛する(食料などの買い出しは除く)

・外出する際は、マスクの着用と手指衛生などの感染予防策をしっかりとする

・公共交通機関の利用は控える

・出勤・登校・登園、およびデイサービス・福祉施設等の利用は控える

現時点の自宅待機期間

上述したように、これまで、濃厚接触者の自宅待機期間は「14日間」でしたが、2022年1月14日に「10日間」へ、1月28日に「7日間」へ短縮されました(図2)(1)。

エッセンシャルワーカーについては、自宅待機4日目・5日目に抗原定性検査キット陰性あるいは5日目にPCR・抗原定量検査等の陰性を確認することで解除可能としています(2月2日追記)。病院を受診するのではなく、事業者でおこなうことが基本です。

図2. 濃厚接触者の自宅待機解除の考え方(筆者作成)
図2. 濃厚接触者の自宅待機解除の考え方(筆者作成)

ただ、抗原定性検査キットが品薄なので、そもそも検査できないというケースが予想されます。その場合、図2の一番下にある「それ以外の濃厚接触者」に準じて、7日間の自宅待機が適用されます。

医療従事者に関しては、毎日検査で陰性を確認すれば、濃厚接触者であっても初日から出勤することが可能です。医療機関においては、通常PCR検査等を用いますが、抗原定性検査キットで代用することも可能です。ただし自治体ごとに運用が異なるため、注意が必要です。

なぜ「7日間」なのか

「自宅待機期間をこんなに短くしたら、感染が広がるんじゃないか?」という意見を耳にします。確かに周囲への二次感染リスクがゼロというわけではなく、これは社会機能を維持するための妥協点です。

国立感染症研究所の分析(2)によると、濃厚接触者が陽性者に曝露後新型コロナを発症した場合、7日以内に発症したのが94.5%、10日以内に発症したのが99.2%という結果でした(図3)。ほとんどが濃厚接触から2~3日目に発症しているのです。

図3. HER-SYSデータを用いたオミクロン株の曝露-発症間隔の分布(参考資料2より一部改変して引用)
図3. HER-SYSデータを用いたオミクロン株の曝露-発症間隔の分布(参考資料2より一部改変して引用)

濃厚接触者に10日間自宅待機してもらった場合と比較して、7日間自宅待機してもらった場合では4.7%の取りこぼしが増えるということになります。社会として、この約5%を容認できるかどうかということになります。

また、国立感染症研究所の別の研究(3)では、診断0~5日目までは多くの例でウイルス分離が可能でしたが、診断6日目以降はウイルス分離可能例は減少していき、診断8日目以降はウイルス分離可能例が確認されませんでした。

以上のことから、「7日間」という数字は妥当に思えます。社会機能へのダメージが懸念される場合、諸外国のように5日間などの短縮化もありうると思います。

社会機能を優先しているアメリカでは、推奨される新型コロナワクチンを完全に接種している場合、濃厚接触者の自宅待機は不要としています(4)。

そう考えると7日間や5日間でも長すぎると思う人はいるかもしれません。

新型コロナ陽性の同居者がいる場合

上述したように、濃厚接触者の自宅待機期間「7日間」というのは、感染可能期間内に患者と最終接触した日を0日目として翌日から7日間計算されます。8日目から自宅待機が解除されます。

家族に陽性者がいた場合、理論上「症状がある陽性者の療養期間10日間」+「濃厚接触者の自宅待機期間7日間」で最大17日間に到達する可能性がありますが、2月2日に「感染者の発症日か感染対策を講じた日の遅いほうから7日間発症しなければ解除」と通知が出されました(2022年2月2日追記)

つまり、感染対策を講じた状態で同居の濃厚接触者に7日間発症がなければ、合算しなくてよいということです(図4)。

図4.陽性者と同居している場合の濃厚接触者の自宅待機期間(筆者作成)(2022年2月2日追記)
図4.陽性者と同居している場合の濃厚接触者の自宅待機期間(筆者作成)(2022年2月2日追記)

陽性の乳幼児がいる母親については、適切な感染予防は難しいです。乳幼児が発熱して即日新型コロナ陽性と判明し、エッセンシャルワーカーである母親の4日目・5日目の検査が陰性で、5日目から勤務したものの夕方に突然の発熱・・・というシナリオもありうるため、濃厚接触のレベルに応じて、個々に検討されるべきと思います。

まとめ

そもそも濃厚接触者を確実に拾い上げる公衆衛生学的な意義があるかどうか、という問題は今後出てくるかもしれません。

オミクロン株は極めて感染力が強く、私たちもいつ感染してもおかしくありません。粛々と、基本的な感染対策を継続しましょう。

(参考)

(1) 新型コロナウイルス感染症の感染急拡大が確認された場合の対応について(URL:https://www.mhlw.go.jp/content/000889667.pdf

(2) 国立感染症研究所. SARS-CoV-2の変異株B.1.1.529系統(オミクロン株)の潜伏期間の推定:暫定報告.(URL:https://www.niid.go.jp/niid/ja/2019-ncov/2551-cepr/10903-b11529-period.html

(3) 国立感染症研究所. SARS-CoV-2 B.1.1.529系統(オミクロン株)感染による新型コロナウイルス感染症の積極的疫学調査(第3報):新型コロナウイルス無症状病原体保有者におけるウイルス排出期間.(URL:https://www.niid.go.jp/niid/ja/2019-ncov/2484-idsc/10942-covid19-70.html

(4) CDC. Quarantine and Isolation.(URL:https://www.cdc.gov/coronavirus/2019-ncov/your-health/quarantine-isolation.html

呼吸器内科医

国立病院機構近畿中央呼吸器センターの呼吸器内科医。「お医者さん」になることが小さい頃からの夢でした。難しい言葉を使わず、できるだけ分かりやすく説明することをモットーとしています。2006年滋賀医科大学医学部医学科卒業。日本呼吸器学会呼吸器専門医・指導医、日本感染症学会感染症専門医・指導医、日本内科学会総合内科専門医・指導医、日本結核・非結核性抗酸菌症学会結核・抗酸菌症認定医・指導医、インフェクションコントロールドクター。※発信内容は個人のものであり、所属施設とは無関係です。

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