オミクロン株と新型コロナ治療薬

国内でもオミクロン株の市中感染が増えてきています。デルタ株と比較して、オミクロン株が先行的に流行したイギリスや南アフリカにおいて入院リスクは低いという報告が出ています(1,2)。しかし、入院リスクが半減しても、オミクロン株の感染者数が倍増すれば、トータルの医療逼迫度はあまり変わらないかもしれません。そのため、新型コロナワクチンの3回目接種をすすめるだけでなく、早期から有効な治療を適用する必要があります。

現在の新型コロナ治療薬は図1のようになります。数が多くなってきたため、詳しい使い分けなどは割愛しますが、大事なのは「いろいろな治療薬がある」ということです。

図1. 2021年12月26日時点の新型コロナ治療薬まとめ
図1. 2021年12月26日時点の新型コロナ治療薬まとめ

それぞれ作用メカニズムや役割が異なることから、患者さんの病態に応じて使い分けています(表1)。

表1. 新型コロナ治療薬のメカニズム
表1. 新型コロナ治療薬のメカニズム

有効性が確認された治療・確認されなかった治療が吟味・淘汰され、国内外のガイドラインが改訂されています(3-5)。その中でも、エビデンスが日々動いている、軽症例に対する治療薬をみてみましょう。

オミクロン株に抗体カクテル療法の使用は推奨されない

抗体療法は、外来や入院軽症例で用いる注射剤です。

図1および図2にあるように、オミクロン株の治療で重要なポイントは、抗体カクテル療法カシリビマブ/イムデビマブ(商品名:ロナプリーブ)の効果が激減するということです。厚労省の通達においても「患者の感染しているウイルス株がオミクロン株であることが明らかである場合、ロナプリーブを投与することは推奨されない」と記載されています(6)。

反面、もう1つの抗体療法であるソトロビマブ(商品名:ゼビュディ)は有効と考えられます。これはスパイクタンパクの基礎的な部分に作用し、効果の減弱が起こりにくいためです。アメリカ国立衛生研究所(NIH)のガイドラインにおいても、オミクロン株に対するソトロビマブが積極的に推奨されています(4)。

photoACより
photoACより

さて、抗体カクテル療法カシリビマブ/イムデビマブは、往診だけでなく濃厚接触者や無症状感染者に対しての予防投与も可能となっていました。しかし、今後オミクロン株が優勢株となった場合、抗体カクテル療法を使う頻度が激減します。ソトロビマブは予防投与が認められていないため、濃厚接触者や無症状感染者に対して予防投与を行う戦略自体は一旦白紙になるかもしれません(※)。

※アストラゼネカ社のチキサゲビマブ/シルガビマブ(商品名:エブシェルド、日本未承認)の予防投与はオミクロン株に対しても有効とされています(7)。

オミクロン株に軽症者向け経口抗ウイルス薬は有効

2021年12月24日、経口抗ウイルス薬であるモルヌピラビル(商品名:ラゲブリオ)が特例承認されました。また、ファイザー社のニルマトレルビル/リトナビル(商品名:パクスロビド)の効果も期待されており、国内でもいずれ承認申請される見込みです。

新型コロナウイルスのスパイクタンパクの変異とは関係のない作用機序であり、いずれの薬剤もオミクロン株に有効と考えられます(表2)。

表2. 新型コロナ軽症者向けの経口抗ウイルス薬(筆者作成)
表2. 新型コロナ軽症者向けの経口抗ウイルス薬(筆者作成)

アメリカ感染症学会(IDSA)のガイドラインでは、オミクロン株の軽症者に対してニルマトレルビル/リトナビルの使用が推奨されています(4)。

いずれの経口抗ウイルス薬も、高齢、肥満、基礎疾患があるといった重症化リスクのある人が対象となっています。発症から5日以内に内服する必要があります。

自宅療養者では、診断した医療機関が特定の薬局へ処方箋を送付し、薬局から患者さんの自宅などへ配送する計画になっています。

使い慣れた点滴抗ウイルス薬が軽症例に有効

レムデシビル(商品名:ベクルリー)は、中等症以上の患者さんに点滴で用います。コロナ病棟ではかれこれ1年以上活躍している、馴染みの抗ウイルス薬です。もともと海外で作られたもので、発売当初オシャンティーな英語のパッケージで病棟にやってきました。

最近、重症化リスクがある外来患者さんに、発症7日以内にレムデシビルを3日間点滴すると、入院あるいは死亡のリスクがプラセボより87%減少したという研究結果が報告されました(8)。

上述の経口抗ウイルス薬が潤沢ならば敢えてレムデシビルを外来や軽症例で用いる必要はないかもしれませんが、使い慣れた薬剤であることはメリットと言えます。いずれ、軽症例に対するレムデシビルも適応になるかもしれません。

まとめ

新型コロナ、特にオミクロン株と対峙するためには、ワクチン接種と基本的感染対策が最も重要です。不運にも感染してしまった場合、重症化を防ぐために軽症の段階で今回紹介したような治療を受けることが重要です。

パンデミック初期と比べて、新型コロナの軽症者向けの治療選択肢はかなり増えました。また、オミクロン株が相手でもほとんどの治療薬が有効性を維持していることが分かっています。

(参考)

(1) Sheikh A, et al. (査読前論文)(URL:https://www.research.ed.ac.uk/en/

(2) Wolter N, et al. medRxiv preprint doi: 10.1101/2021.12.21.21268116(査読前論文)

(3) COVID-19に対する薬物治療の考え方 第11版(URL:https://www.kansensho.or.jp/uploads/files/topics/2019ncov/covid19_drug_211224.pdf

(4) The COVID-19 Treatment Guidelines Panel's Statement on the Use of Anti-SARS-CoV-2 Monoclonal Antibodies or Remdesivir for the Treatment of COVID-19 in Nonhospitalized Patients When Omicron Is the Predominant Circulating Variant(URL:https://www.covid19treatmentguidelines.nih.gov/therapies/statement-on-anti-sars-cov-2-mabs-and-rdv-and-omicron/

(5) IDSA Guidelines on the Treatment and Management of Patients with COVID-19(URL:https://www.idsociety.org/practice-guideline/covid-19-guideline-treatment-and-management/

(6) 新型コロナウイルス感染症における中和抗体薬の医療機関への配分について(疑義応答集の修正)(URL:https://www.mhlw.go.jp/content/000836895.pdf

(7) Evusheld long-acting antibody combination retains neutralising activity against Omicron variant in independent FDA study(URL:https://www.astrazeneca.com/media-centre/press-releases/2021/evusheld-long-acting-antibody-combination-retains-neutralising-activity-against-omicron-variant-in-independent-fda-study.html

(8) Gottlieb RL, et al. N Engl J Med. 2021 Dec 22. doi: 10.1056/NEJMoa2116846