新型コロナ肺炎後の息切れ いつまで続くのか? その対策は

(写真:maruco/イメージマート)

はじめに

まず最初にお伝えしたいのは、ほとんどの新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は、軽症で終わりますので、後遺症についてそこまで不安に思う必要はないということです(実際に後遺症で悩んでいる人もおられますが、中等症以上の人がほとんどであるため、感染者の大部分というわけではありません)。

味覚・嗅覚障害が残ってしまって、料理ができなくなってしまった料理人がテレビに出演されることもありますが、この後遺症もそこまで長引きません。変異ウイルスになると、そもそも味覚・嗅覚障害の頻度が低くなるとされており(1)、第4波で当院に入院した160人以上のカルテを見ても、味覚・嗅覚障害がその後長引いて困った症例はほとんどありませんでした。

しかし、肺炎がある中等症~重症の新型コロナにかかってしまうと、長く息切れを残す患者さんがいます。

こういった後遺症のことを「ロング・コビッド(Long COVID)」などと呼ぶのですが、これについては忽那先生が何度か解説されていると思うので(2)、そちらをご覧ください。

後遺症外来で多くみられる「息切れ」

当院は、比較的たくさんの新型コロナ患者さんを診療してきたほうだと思いますが、退院後、診察に来てもらうと、長期にわたって長引く後遺症があります。それが、「息切れ」です。ひどい肺炎をおこした患者さんでよくみられます。

これを「倦怠感」や「胸部不快感」と表現する患者さんも多く、報告によってばらつきはありますが、似たような症状を別の表現で表しているのかもしれません。

重症の肺炎を起こした場合、退院3ヶ月時点で約半数が息切れを感じており、長い人では半年~1年くらいこれが続きます(3)。

さて、患者さんの体で何が起こっているのでしょう。実は、肺には皮膚のやけどと同じような現象が起こっています。重度のやけどを負うと、皮膚がケロイド化して、キュっと縮まってしまいます。これと似たような現象が、肺にも起こります。

新型コロナの患者さんの胸部レントゲン写真(左)と胸部CT写真(右)(患者さんの許可を得ています)
新型コロナの患者さんの胸部レントゲン写真(左)と胸部CT写真(右)(患者さんの許可を得ています)

この画像は、発症後1か月半くらい経過した新型コロナの患者さんの胸部レントゲン写真(左)と胸部CT写真(右)です。

胸部レントゲン写真は、立って胸部をパシャっと撮影する検査です。経験がある人も多いでしょう。医師がレントゲン写真を見るとき、誰かと対面しているのと同じ感覚で、向かって左側に右肺があると認識しています。逆に、向かって右側に左肺があります。真ん中にある白い物体は心臓です。

胸部CT写真は、大きな筒に入って撮影する検査です。出来上がった写真は、仰向けに寝っ転がった人を輪切りにして、足の方から見ている切断面になります。なので、向かって上側がおなか、下側が背中になります。そして、レントゲン写真と同じく、左右は逆転しています。さすがにこれは、見ることに慣れていないと、混乱してしまいそうですね。

胸部画像検査の見かたなんて、どうでもよくて、お伝えしたいのは、肺の中にあるモヤモヤとした白いカゲについてです。

正常の胸部CT写真(左)と後遺症を残したCOVID-19患者さんの胸部CT写真(右)
正常の胸部CT写真(左)と後遺症を残したCOVID-19患者さんの胸部CT写真(右)

ここで、私の胸部CT写真と並べてみましょう。左が私の胸部CT写真、右がさきほどの新型コロナ患者さんの胸部CT写真です。木の枝みたいに見える白い線は、血管です。これは正常です。それを除くと、肺は本来真っ黒のはずですが、マスクメロンの模様のように肺の中にモヤモヤと見える網のようなカゲが見えますね。これが新型コロナ肺炎の「痕」なのです。

肺は風船みたいな臓器です。後遺症によって、風船の表面にセロテープを貼ったような突っ張りが生じてしまい、膨らみにくくなります。「肺が膨らみにくい」というのがどういう感じかというと、コルセットを胸にずっと巻いているような息苦しさです。巻いたことない人がほとんどでしょうが、機会があったら強めにグルグルと巻いてみてください。肺活量が減ってしまうので、息切れを感じるはずです。

余談ですが、十二単(じゅうにひとえ)などのように分厚い着物は、かなり胸郭が圧迫されるので、息切れが強く出るそうです。

息切れはいつまで続くのか?

パンデミックになってからまだ1年余りで、たくさんデータがあるわけではありません。しかし、1年後の呼吸器系の後遺症が追跡できた83人のデータによると、3ヶ月後には8割以上の人がちょっとしたことで息切れを感じている状態で、半年後にはこれが3割まで減り、1年後にはわずか5%にまで減少しています()(4)。

COVID-19発症後の呼吸器系の後遺症(文献4)
COVID-19発症後の呼吸器系の後遺症(文献4)

当院に通院している患者さんも、3ヶ月時点で息切れが残っていても、半年、1年と経過すると「もうあまり気にならない」とおっしゃることが多いです。ただ、興味深いのは、胸部画像検査をおこなうと、まだ「痕」が残っているのです。おそらく、「肺炎を起こした後のこの肺胞はもう使えないな」と判断した人体は、無理にその部分を活用せず順応するためでしょう。

しかし、たばこによる慢性閉塞性肺疾患(COPD)などの基礎疾患がある人は、新型コロナをきっかけにして息切れが進行してしまい、そのままなかなか戻らないことがあります。

■参考記事:新型コロナの死亡率を約2倍にする「たばこ病」 コロナ禍こそ禁煙を(URL:https://news.yahoo.co.jp/byline/kuraharayu/20210531-00239230/

外来でも、6ヶ月を超えて息切れが残っている患者さんは、①もともと肺に基礎疾患がある人、②高齢者、③肺炎が重症だった、のいずれかです。

息切れの対策

こうした後遺症の対策として、「息切れしにくい呼吸法」が提唱されています(5)。

①口すぼめ呼吸法:

・直立あるいはリクライニングした状態で座り、首と肩の筋肉をリラックスさせる。

・口を閉じた状態で、花の匂いをかぐように、鼻から2秒間息を吸い込む。

・ケーキのロウソクを吹き消すように、ゆっくりと口をすぼめて(可能であれば4秒間)息を吐く。

・この呼吸のサイクルを2分間、1日に数回、必要に応じて繰り返す。

②腹式呼吸法:

・リクライニングした状態で座り、首と肩の筋肉をリラックスさせる。

・片方の手をおなかの上に置き、もう一方の手を胸の上に置く。

・ゆっくりと鼻から息を吸い込む。このとき、肺を空気で満たして、おなかを意識的に上げる(おなかの上の手は、胸の上の手よりも早く動く)。

・鼻から息を吐き、息を吐きながらおなかが下がるのを確認する。

・この呼吸サイクルを2~5分間、1日に数回、必要に応じて繰り返す。

「ほんまかいな」と思われるかもしれませんが、呼吸器内科ではよく知られた呼吸法であり、特に肺に基礎疾患がある患者さんでは、口すぼめ呼吸法が有効です。

(参考)

(1) Office for National Statistics (ONS). Coronavirus (COVID-19) Infection Survey: characteristics of people testing positive for COVID-19 in England, 27 January 2021 (URL: https://www.ons.gov.uk/peoplepopulationandcommunity/healthandsocialcare/conditionsanddiseases/articles/coronaviruscovid19infectionsinthecommunityinengland/characteristicsofpeopletestingpositiveforcovid19inengland27january2021)

(2) 忽那賢志. 新型コロナの後遺症Q&A どんな症状がどれくらい続くのか(2021年1月).(URL:https://news.yahoo.co.jp/byline/kutsunasatoshi/20210131-00220218/

(3) González J, et al. Chest. 2021 Mar 4;S0012-3692(21)00464-5.

(4) Wu X, et al. Lancet Respir Med. 2021 May 5;S2213-2600(21)00174-0

(5) American Lung Association. Breathing exercises. (URL:https://www.lung.org/lung-health-diseases/wellness/breathing-exercises)