3種類の新型コロナワクチン

これを読んでいる皆さんのほとんどは新型コロナワクチンを接種すると思いますが、現時点では、「個別接種」「集団接種」は、ファイザー社製(商品名コミナティ筋注)「大規模接種」モデルナ社製(商品名COVID-19ワクチンモデルナ筋注)になる予定です。アストラゼネカ社製(商品名バキスゼブリア筋注)も承認となりますが、年齢制限などを検討する可能性があり具体的な運用は未定です。若年者層への接種がすすむ過程で、アストラゼネカ社製が加わってくるのかどうかは不明です。

■大規模接種(インターネット予約など):モデルナ社製

 東京:大手町合同庁舎3号館

 大阪:大阪府立国際会議場

 その他都道府県・政令市のうち30自治体が独自の接種会場を設定する見込み

■集団接種(自治体から予約):ファイザー社製

 自治体の小中規模病院、公共施設など

■個別接種(施設ごとに予約):ファイザー社製

 クリニックなど

ファイザー社製、モデルナ社製のいずれのワクチンも、メッセンジャーRNAワクチンというもので、有効性(発症予防効果90%以上)や副反応はほぼ同じです。忽那先生も書いているように、メッセンジャーRNAワクチンには「ぱねぇ効果」(1,2)があり、これまでのワクチンにはないほど効果が高いです。

各社のワクチンの特徴
各社のワクチンの特徴

医学的常識に鑑みて驚くほどの有効性だったため、「接種しましょう」と啓蒙する専門家が初期から多い理由はここにあります。これまでのワクチンと比較して副反応はやや多いですが、有効性とのバランスを考えると接種しない理由はありません。

アストラゼネカ社製のウイルスベクターワクチンの有効性は約70%と2社にやや見劣りしますが、インフルエンザワクチンの有効性50~60%に比べると高い数値です。今後どのように3つの新型コロナワクチンを運用していくか、政府の舵取りが問われます。

変異ウイルスに対する有効性

メッセンジャーRNAワクチンは、変異ウイルスに対しても効果が期待できます。

たとえばファイザー社製の新型コロナワクチンの場合、イギリス由来の変異ウイルスに対しても89.5%、アフリカ由来の変異ウイルスに対しても75%の効果があるとされています(4)。インド由来の変異ウイルスにも、一定以上の中和抗体が維持されるという横浜市立大学やニューヨーク大学の研究結果が、査読前論文として報告されています(5, 6)。若干効果は下がる可能性はあるものの、変異ウイルスを相手にしても有効と言えそうです。

メッセンジャーRNAワクチンの利点は、変異ウイルスが出てきてもすぐに設計図を書き換えて対応できる点です。実際、モデルナ社は年内に変異ウイルス対応ワクチンを供給できるとしています。

他方、ウイルスベクターワクチンであるアストラゼネカ社製は、イギリス由来の変異ウイルスへの効果は十分ありそうですが(7)、南アフリカ由来の変異ウイルスには効果がみられないと報告されています(8)。ただ、アストラゼネカ社は変異ウイルスのために改良したワクチンを年内に用意できる可能性があると声明を出しています。

血栓症とCOVIDアーム

最近よく報道されているアストラゼネカ社製ワクチンの「血栓症」ですが、頻度は極めてまれです。経口避妊薬(ピル)を飲んでいる女性では、1年間に100万人あたり900人くらいで血栓症を起こします。このワクチンで報告されている頻度は100万人に4~10.9人なので、決して多くはありません。なお、アストラゼネカ社製以外のメッセンジャーRNAワクチンでは血栓症の有意な増加は確認されていません。

その他のまれな副反応として、モデルナ社製のワクチンでは、0.8%の頻度で接種後5~9日目に「COVIDアーム」と呼ばれる皮膚の赤みが出ることがあります(写真)(9,10)。女性や60歳未満に多くみられます。モデルナ社製以外のワクチンでは目立って出現せず、何に由来する反応なのかはっきりしていません。遅発型の反応なので、即時型の「アナフィラキシー」のような危険性はありません。やや広く赤みが広がるのみで、日単位で次第に軽快していきます。他の副反応(発熱、倦怠感、頭痛など)とは違って、2回目の接種のほうがモデルナアームは頻度が低いとされています。そのため、モデルナ社製のワクチンを打った後、遅れて皮膚の赤みが広がってきたとしても、心配不要です。2回目のワクチン接種も可能です。

COVIDアーム(文献より9引用)
COVIDアーム(文献より9引用)

2回目の接種日がずれても大丈夫?

モデルナ社製のワクチンは4週間あけて合計2回、ファイザー社製のワクチンは3週間あけて合計2回()、アストラゼネカ社製のワクチンは、4~12週間あけて合計2回接種する必要があります。外来でよく聞かれるのは、「接種する日は1回目の接種からちょうど4週間後(3週間後)でないとダメなのか?」という質問です。

新型コロナワクチン接種スケジュール(筆者作成)
新型コロナワクチン接種スケジュール(筆者作成)

目安はカレンダーに示したように、モデルナ社製は4週間後、ファイザー社製は3週間後ですが、多少遅れがあっても2回目のワクチンを受ける意義は十分あります。

メッセンジャーRNAワクチンは、これまでのワクチンと比べて、リンパ節(体の中継地点のようなところ)に到達しやすく、新型コロナの「設計図」はかなり体の中で活用されやすくできています。そのため、2回目の接種が少し遅くなっても気にしなくてよいと思います。アストラゼネカ社製にいたっては、1回目から4~12週後と幅広く設定されており、2回目の接種はこのあたりに打てば問題ないという大雑把なものです。

ファイザー社製ワクチンやアストラゼネカ社製ワクチンでは、2回の接種の間隔を広げると有効性が増すという報告や(11)、2回目のワクチン接種を遅らせて1回目のワクチン接種を大勢に行った方が結果的に全体の死亡抑制効果が大きいという報告(12)もあります。

■参考記事:ファイザー製2回目接種、遅らせる方が有利か(URL: https://news.yahoo.co.jp/articles/fc3eaa364d80b09d3de5ffabf292c11fce8e1b4d

イギリスやシンガポールは大幅に接種間隔をあけて接種していますが、日本では現状「あえて接種を遅らせる」という動きはありません※。混乱を招く可能性が高いため、このままの間隔を維持するかもしれません。定められた間隔で接種するようお願いします

※ファイザー社製のワクチンの説明文書(添付文書)には、「1回目の接種から3週間を超えた場合には、できる限り速やかに2回目の接種を実施すること」と記載されています。アメリカ疾病管理予防センター(CDC)は、2回目は42日以内に接種するよう推奨しています。ただ、上述したように、今後接種間隔をあける動きが出てくるかもしれません。

まとめ

ファイザー社製(商品名コミナティ筋注)の新型コロナワクチンに、モデルナ社製(商品名COVID-19ワクチンモデルナ筋注)、アストラゼネカ社製(商品名バキスゼブリア筋注)が加わりますが、当面はファイザー社製とモデルナ社製の運用になるでしょう。

接種場所によって使用される新型コロナワクチンに違いがあります。

新型コロナワクチンは、定められた期間をあけて2回接種するのが望ましいですが、遅れがあっても2回目の接種に臨むのがよいと思われます。

(参考)

(1) 忽那賢志. 効果は? 安全性は? 新型コロナワクチンについて知っておきたいこと Q&Aで医師が解説(追記あり).(URL:https://news.yahoo.co.jp/byline/kutsunasatoshi/20210120-00217893/

(2) Haas E, et al. Lancet. 2021; 397: 1819–29

(3) Blumenthal K, et al. JAMA. 2021 Apr 20;325(15):1562-1565.

(4) Abu-Raddad L, et al. N Engl J Med. 2021 May 5. doi: 10.1056/NEJMc2104974

(5) Miyakawa K, et al. medRxiv preprint doi: https://doi.org/10.1101/2021.05.06.21256788

(6) Tada T, et al. bioRxiv preprint doi: https://doi.org/10.1101/2021.05.14.444076

(7) Madhi S, et al. N Engl J Med. 2021 May 20;384(20):1885-1898.

(8) Emary K, et al. Lancet. 2021 Apr 10;397(10282):1351-1362.

(9) Blumenthal K, et al. N Engl J Med. 2021 Apr 1;384(13):1273-1277.

(10) Wei N, et al. JAAD Case Rep. 2021 Apr;10:92-95.

(11) Voysey M, et al. Lancet. 2021 Mar 6;397(10277):881-891.

(12) Romero-Brufau S, et al. BMJ. 2021 May 12;373:n1087.