トヨタはトランプ大統領の意向を汲んで環境対策を後退させた?

写真/TOYOTA

「トヨタがトランプ大統領に忖度し米国カリフォルニア州で環境対策を後退させた」という古賀茂明さんの記事が業界を激怒させている。まとめ部分を引用すると「同社は、電気自動車(EV)で大きく出遅れ、いまだに販売できない状況だ。テレビCMでは自動運転で最先端を行くような宣伝をしているが、グーグルなどのはるか後塵を拝していることは専門家ならだれでも知っている」。電気自動車でも自動運転でもトヨタは出遅れたという主張です。

古賀茂明「トランプの軍門に下ったトヨタの未来」

さらに、トランプ大統領は二酸化炭素の排出量規制を決めたパリ協定から11月5日に正式離脱を決めた。この流れを受け、フォードやVW、BMWは厳しいカリフォルニア規制を遵守していく方針を打ち出しているのに対しトヨタは反旗を翻したと伝えた(ニューヨークタイムズがそういった内容の記事を出した)。古賀さんの意見を否定する気は全くないけれど、実情と少しばかり違うし、専門家の皆さんは激怒してます。業界として事実だけ紹介してみたい。

まずトヨタが電気自動車で出遅れている件、技術を持っていないということじゃありません。むしろ電気自動車に使われる中核技術であるモーターやインバーター、エネルギー回生ブレーキの技術は世界を圧倒している。実際、トヨタのストロングポイントであるハイブリッドからエンジンを降ろしてバッテリーを積み増すだけで簡単に高性能かつ価格競争力のある電気自動車が作れてしまう。なぜ電気自動車を売らないかと言えば、顧客のメリットにならないからだ。

私も2011年に日産リーフを買ったけれど、当時は車両価格の割に航続距離が短く電池寿命の問題も抱えていた。最新のリーフe+になって電気自動車の弱点は無くなり、むしろ楽しいクルマになったが、車両価格という点でもうひとがんばりしないとマイカーの主流になれない。トヨタの社是は極めてレベルの高い「顧客第一主義」。電気自動車が顧客に満足してもらえるタイミングを見計らっている、ということです。ちなみに燃料電池の技術レベルは電気自動車より高い。

トヨタはトランプ大統領に忖度しているのか? 誰だってトランプ大統領がワンマンだと思っているし、辞任したら状況は全く変わることを認識している。という状況でトランプ大統領に真正面からケンカを売る意味ないし、トランプ後は世の中の流れにアジャストさせればいいと自動車業界は考えてます。トヨタの副社長数人に環境対応で話を聞いたけれど、皆さん真剣。むしろトヨタがライバルに先んじていると思う。

欧州で2021年から施行される厳しい燃費規制(メーカー平均で24km/L)ですら余裕でクリア出来るのはトヨタくらいだと言われているし、その先の2025年の燃費規制など、全てのクルマをハイブリッド車にした上、電気自動車やPHVを相当数入れないとダメ。ここへ行くマップをキチンと描けているのはトヨタくらいである。アメリカだけでなく欧州や中国の規制も厳しくなり、そちらに対応していかないと生き残りは難しい。

自動運転もトヨタが出遅れていると認識しているようだが、東京モーターショーで打ち出してきた技術は世界で唯一、ホンキで実用化を目指したもの。トヨタは早い段階で「人を運ぶ高速の移動体は安全性の担保が難しい」と主張しており、実現するなら荷物を低速で運ぶことだと言ってます。自動車業界の安全に対する概念は、他の業界と全く違う。自動運転車が絶対人を轢かないという確認が取れるまで、トヨタだけでなくどこも積極的ではありません。

叱咤激励するなら突っ走っているトヨタでなく、まだ対応策が甘いそれ以外のメーカーにお願いしたいと思う。