自動車事故で絶大な威力を発揮するドクターヘリながら事故現場に降りられない

千葉北総病院のドクターヘリ/写真 国沢

トヨタとホンダが始めているDコールネット(救急自動通報システム)で活用しているドクターヘリを取材したら、驚かされることばかりだった。ちなみにDコールネットとは、機器を搭載している車両が事故を起こした場合、車載の速度センサーや衝撃センサーなどにより乗員のダメージ判定し、重傷率が高ければ自動的にドクターヘリなどをスタンバイさせるという心強いシステムである。

左は取材対応して頂いた本村友一医師/写真 国沢
左は取材対応して頂いた本村友一医師/写真 国沢

緊急度を判定した結果、ドクターヘリを飛ばすのだけれど、取材してみたら意外なことに日本は様々な課題を抱えているという。欧米であれば基本的にヘリコプターはどこにでも着陸出来る。パイロットの判断で事故現場の隣に降りることすら可能。それがヘリコプターの持ち味だからだ。けれど我が国は『ランデブーポイント』(校庭や公園など)と呼ばれる登録されている場所にしか着陸出来ない。

加えて離着陸時に発生するダウンウォッシュ(ローターの風)で砂埃が飛ばないよう、水を撒かなければならないという。また、近隣から苦情出ることも少なくないそうな。驚くべきことに最も多いクレームは「洗濯物が汚れた!」だという。命を救うために運用しているのだし、明日は我が身。そもそもドクターヘリは飛来する頻度など非常に低い。

ドクターヘリのキャビン
ドクターヘリのキャビン

考えてみれば救急車が横断歩道に近づいているのに「歩行者優先」と思っているのか、平然と渡っている人も目立つ。救急車のドライバー曰く「最近歩行者や自転車が怖いです。もちろん自動車も譲って頂けないという前提で運転しています」という。教育の問題なのだろうか? さらに聞いて「信じられない!」だったのが、消防署から請求書を回されたという話だ。

ランデブーポイントにはケガをした人を搬送する救急車の他、消防車も来る。その際、ダウンウォッシュで飛んだ小石が消防車に当たり、小さなキズが付いたという。すると修理して欲しいと言われ、請求書を送ってきたそうな。特異なケースだと思いたいけれど、ドクターヘリを運用しているとこういった心ない対応をされることが少なくないようだ。事故現場に着陸出来る日は来るのか?

ちなみにドクターヘリの威力は素晴らしく、今回取材した千葉県北総病院であれば担当する千葉県の北半分はどの地点でも15分で到着出来るという。ドクターヘリには2名の医師が乗っているため、車両の間に挟まれて脱出出来ないような事故すら医師なら麻酔で痛みを抑えるなどの措置が可能(麻酔無しだと激しい痛みと闘わなければならない)。もちろん救命率も高い。

TVなどでは大活躍するシーンしか紹介されないドクターヘリながら、未だ認知度は低いようだ。前述の通りクルマに乗っていれば安全運転していても相手が突っ込んでくることだってある。メディアも認知のための協力が必要だと痛感した。