ボルボ・オーシャンレース! 日本勢が参加していない世界最高峰のレース

香港で開催されたインポートレース/写真ボルボ・ジャパン

道具を使ったスポーツの最高峰がヨットレースだと言われる。そもそものキッカケは、造船技術と航海技術の競争だった。大航海時代は海を制する国が世界の覇権を取れる。だからこそスペインやポルトガル、イギリスなど、世界中の富を得られたのだ。時は流れ、今やヨットのファン層はかつて覇権争いをしていたセレブリティ達の末裔。プライドを掛けて戦う。

そんなことから風という自然の力だけ使うクラシカル&ECOな競技なのに、ヨーロッパだとお金持ちのスポーツだし、アメリカではヨットレースで勝つことが「伝統のヨーロッパ」に対する意趣返しなのだった。欧米ではヨットに乗ることがステータスでもある。このあたり、日本だとあまり好ましくない意味で「お金持ちの遊び」と思われており、少しばかり残念だ。

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現在行われている世界規模のヨットレースは自動車レースでF1に相当する短距離競走の『アメリカズカップ』と、ダカールラリーのような長距離(世界一周)競走の『ボルボ・オーシャンレース』、そしてベースの技術を競うオリンピックの3つ。本来なら我が国も世界有数の海洋国ながら、漁業中心の政策のため海を使う上での制限多く競技人口は少ない。オリンピック女子2人乗り級での銀メダルが最高位である。

アメリカズカップにも『チームジャパン』として何回かチャレンジしたけれど(直近は昨年。ソフトバンクがスポンサー)、いずれも予選を突破できず敗退している。今回紹介する『ボルボ・オーシャンレース』は、一度も日本チームが出ていないという「白人のスポーツに何でも出て行く日本人」としては数少ない「全く歯が立たない」競技といってよい。

なぜか? 前述の通り、過酷さと得られる利益のバランスが全く取れないからだ。日本で重要とされる「費用対効果」は驚くほど低い。オーシャンレースで勝ったら売れる、という製品も無し。一方、リスクときたら極めて高い。なにしろレスキュー艇の伴走無しで世界一周をする。もちろん医者など乗っていない。ケガなどしたら自分かクルーメイトが縫ったりもする。

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当然ながら危険で、夜間の荒れた海に落ちれば即座にシビアな状況となってしまう。時として死者も出るが、日本で人気のある『だんじり』や『諏訪の御柱祭』と同じく、だからといって止めようとならない。海は危険で、それを認識してやっている。イヤなら参観しなければよいだけ。今回も他船と衝突するという事故が発生した(被害者はヨットである。記事文末に注)。

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ということで一艇10億円というフネを使い、世界TOPクラスのセーラーを2年近く雇い、得るものはクルーもスポンサーもプライドだけ(賞金の類いは一切無し)という、商業化と対極の位置にある本当の意味でのスポーツと言って良かろう。ちなみにボルボは冠スポンサーでなく主催者。利益を上げるためにやっているんじゃなく、持ち出しで戦いの場を提供している。勇猛果敢なバイキングのDNAか?

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日本の常識からすれば「信じられないこと」ばかり。競技は2017年10月22日にスペインのアリカンテを出発。今回取材した香港レグは、1月2日にオーストラリアのメルボルンから始まった。ノンストップで赤道を越え香港までのレースとなり、1位は19日の到着! 17日間でメルボルンから香港まで風の力だけで走ってきたというのだから凄い。

今回、元スペインのヨット金メダリストというスキッパー(艇長)にインタビューする機会を得た。瞬間的な最高速は30ノット(55km/h)出るという。1日の平均速度で23ノット(42km/h)。これは一般的なクルーズ船の20ノットより速い。65フィートのフネを30ノットで走らせようとしたら1000馬力は必要。セールに受けた風のパワーが1000馬力あるということだ。

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取材したのは『インポートレース』と呼ばれるもの。メルボルンから香港までのレースは『レグ』と呼ばれポイント付く。これを何度か行い総合点で勝ったチームが総合優勝になる。同点だった際、これまた何度か行われるインポートレースの勝ち点で決まるのだった。サッカーでの得失点差のようなもの。65フィートという大型のヨットを、ディンギーのように走らせる!

広い海だと短くても数十分に1回のタッキング(風上に向かう際、左右に向きを変える操作)を、距離の短いインポートレースだと数分ごとに繰り返す! アメリカズカップのような激しい戦いだ。観戦艇からレースを見るのだが、コース取りによっては観戦艇の中に突っ込んでくることもあるから迫力満点! ヨットに詳しくない人でも速さと激しさに驚くと思う。

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現在の位置が解るトラッキングシステム

ボルボ・オーシャンレースの『レグ6』は2月7日に香港をスタートし、ニュージーランドのオークランドを目指している。レース展開はGPSを使ったトラッキングシステムで追いかけられるため、興味ある方はぜひ御覧ください。東京オリンピックにはチームジャパンも多くの選手を送り出す。海洋国として大いに活躍して頂きたい。

注・ヨットは左前横に大きなダメージを受けている。左から相当の速度で衝突されたということ。本来なら帆船の優先が国際ルール。さらに交差する進路だった場合、左側から来る船舶に対し直進船優先。2重の意味でもヨット側は被害者だった。