中国はラリーを開発の舞台にしている。自動車産業は猛追を受けていることを実感した

中国についてはネガティブな記事が多いけれど、やはり経済面で手強いライバルであることは認識すべきだと思う。なかでも猛追を受けているのが日本の基幹産業である自動車である。けれど多くの人は「デザインを含めて日本の自動車のパクりばかり。品質もイマイチ」という評価をする傾向。

しかし直近になって大きく状況は変わり始めた。日本や欧米の企業と合弁した中国の自動車メーカー(中国進出する際、中国政府直営の企業と50対50の資本比率を義務づけられる)が技術を蓄積した結果、日本や欧米クルマと同等のクオリティの中国車も急増してきたのである。

しかも中国人はモータースポーツを好む。言うまでも無くモータースポーツは本田宗一郎さんが「走る実験室」と称し、自動車技術を磨くために重視した。最近はトヨタ自動車も「道がクルマを鍛えてくれる」と、様々な路面コンディションの公道を閉鎖して行われるラリーへのカムバックも決めている。

見慣れないメーカーがズラリと並ぶ
見慣れないメーカーがズラリと並ぶ

そんな状況の中、中国でラリーが大人気になっており、中国ブランドの競技車両も多数参戦しているという。気になったので早速取材に行ってみた。開催地は上海からさらに2500kmも西にある孫悟空が大暴れした西域のど真ん中。シルクロードの要所となる張掖という場所。

競技が行われるのは砂漠の中の未舗装路で、日本車だって厳しいような悪条件のコースである。そこを速いクラスだと200km/h以上。ハイブリッド車でも150km/hくらいで走るという。クルマを鍛えるには最高の”道場”と言ってよかろう。車両の点検を行う「サービスパーク」に行って驚いた。

秦という車名のハイブリッド車
秦という車名のハイブリッド車

日本では全く馴染みの無いような中国ブランドがたくさん出ている。しかも1ブランドで最低5台以上! 以前トヨタ・カローラのパクりで有名だった『BYD』というメーカーもハイブリッド車のラリーカーを7台走らせている。トヨタだって市販ハイブリッド車を競技には使っていない。

ハイブリッド用のバッテリー
ハイブリッド用のバッテリー

その他のメーカーもラリーで鍛えられることにより、少しずつ丈夫なクルマに仕上がっていく。さらに深刻なのはタイヤに代表される自動車部品メーカーも、多数「ラリー」という道場で実績を積んでいること。ヨコハマやダンロップでなく、東南アジア拠点の『マキシス』や『フェデラル』といったタイヤメーカーが主役だった。

フェデラルは日本を猛追するアジアの企業
フェデラルは日本を猛追するアジアの企業

現時点では日本の技術に届いていないけれど、競技で磨く技術の進化は速い。やがて追いつかれてしまうかもしれません。本来なら自動車メーカーやタイヤメーカーも世界屈指のエントリー台数を持つ中国のラリーに出て行くべきだと思う。

ちなみに日本の企業で『TEIN』というサスペンションメーカーだけ中国のラリーで存在感を見せている。10年前に参入した時はほとんど売れなかったという。けれど世界の一流ブランドを相手に徐々にシェアを伸ばし、今や中国ラリー選手権で走る車両の60%以上がTEIN製を使っているほど。

広大なサービスパークの一等地で目立つ
広大なサービスパークの一等地で目立つ

サファリラリーでの優勝経験を持つ藤本さんという方が陣頭指揮を取っている。話を聞いてみたら「中国というと皆さんあまりよいイメージを持っていないかもしれません。でも心を込めて付き合えば、おおらかでよい人が多いです。ラリーという分野についていえば反日や嫌日もありません」。

中国に追いつかれないためにも、中国で技術を磨くことは重要だと認識した。