トヨタのWRC復帰プログラムの準備に黄信号点灯か?

トヨタは2017年シーズンからWRCへ復帰することを発表している。WRCとは「ワールド・ラリー・チャンピオンシップ」の略で、世界レベルで考えればF1を大きく凌ぐ人気を誇る。例えばヨーロッパで開催されるWRCの延べ観戦者数も(3日間)、少ないイベントで150万人。人気イベントなら250万人に達するほど。

また、F1が高級車のブランドイメージ構築に役立つのに対し、WRCは市販車の販売促進に大きな影響力を持つ。かつてトヨタもWRCに参戦しており多くのファン層を得た。復帰したのはヨーロッパ市場で伸び悩んでいるトヨタ車のイメージを高めようとしているのだと思う。このあたり、豊田章男社長の慧眼である。

トヨタを除く日本の自動車メーカー首脳は、ヨーロッパの市場を理解しようとしない。というかモータースポーツに興味がないのだろう。レースとラリーはサッカーと野球くらい違うのに、F1とWRCを皆さん同じモータースポーツだと思っている様子(ラリーはサッカー文化圏で人気)。もちろんWRC復帰は章男社長の強い意向によるもの。

文頭に書いた通り復帰第1戦は2017年1月に行われるモンテカルロラリーなのだけれど、ここにきて内紛の発生を海外メディアが報じている。只でさえ順調な開発状況と言えない状態にあった。VWやシトロエン、現代自動車といったライバルが早い時期から2017年モデルのテスト走行を始めているのに対し。トヨタの場合、今春からやっと動き出した感じ。

WRCの世界は狭いため、何人かに聞けばどういった状況なのか解る。調べてみたら少しばかり深刻なようだ。トヨタのWRC開発、かつて三菱やスバルで活躍し世界チャンピオンを3回も取っているトミ・マキネン(フィンランド)が章男社長から全権を受けて開発している。

マキネンは全て自分でコントロール出来ないから、部門毎のディレクターを何人か揃えた。技術面でのディレクターはマイケル・ゾトスというマキネンにとってスバル時代から信用していた人物である。そのゾトス氏が解任させられた。突如マキネンに解雇を言い渡されたという(直近で計3名解雇された)。シーズン真っ盛りの時期、人材の補充も難しいだろう。

この段階で技術的なディレクターが居なくなったら、当然の如く開発計画に遅延をもたらす。聞けばすでにエンジン開発などで大きな遅れが出ているらしく、満足な走行テストも出来ない状態らしい。本来なら2017年シーズンに向け、車両はもちろんドライバーやチーム監督(マキネンはチーム代表)など決めていなければならない。

WRCの関係者は口を揃えて「モンテカルロに間に合うのか?」。常識的に半年で開発を行えると思えない。間に合ったとしても高い戦闘力を持たせることは難しいだろう。昨年のホンダF1のような状況になる可能性大。WRCファンは開幕から上位に食い込むような走りを期待せず、復帰したことだけを素直に評価したらいい。

けれどトヨタのWRC復帰は、前にも書いた通り章男社長の強い意志によるもの。加えてラリー関係者はトラブルなど発生した際「これもラリー」と、現実を容認する”文化”がある。ホンダF1のようにメディアとケンカせず、ありのままの姿を見せファンと共に修行をすすめたらいい。多少ドタバタするかもしれないけれど、結果オーライになると期待しておく。