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ユニクロがビックロ撤退、新宿三丁目店に帰還、フラッグスにも新店 跡地はナイキか三越伊勢丹新宿再開発か

松下久美ファッションビジネス・ジャーナリスト、クミコム代表
ビックロ ユニクロ新宿東口店。家電とのミックス陳列も斬新だった   筆者撮影

 「ビックロ ユニクロ新宿東口店」が6月19日で閉店する。ビックロはビックカメラとユニクロが協業し、三越伊勢丹ホールディングスが所有する「新宿三越アルコット」の跡地に2012年9月に開店。今年、10年の契約満了を控えていた。

 ユニクロの撤退理由について、「新宿駅周辺で再開発が進んでおり、お客様の導線や流れが今後さらに変化すると予想されるため。契約も満了することから、閉店を決めた」と親会社のファーストリテイリング広報担当。

 これに伴い、今秋以降、新宿南口駅前のファッションビル「フラッグス(Flags)」と、新宿三丁目に新規店舗を出店する。

 新宿三丁目店は、グループ傘下の「プラステ(PLST)」の跡地で、伊勢丹・伊勢丹メンズ館や、新宿マルイメン、H&M新宿にも近い、路面店だ(新宿区新宿3-13-3 新宿文化ビル。「プラステ」時代は1~2階で売り場面積は250坪)。

 実はここ、もともと「ユニクロ」が10年間営業していた場所だ。まだ都心店が少なかった2002年9月に出店。伊勢丹が近いことから、ウィメンズの取り扱い比率を50%に高める実験的な店舗でもあった。ビックロに出店後は、2012年10月~2014年7月まで「GU」が入店。「GU」も2013年9月にビックロの7階に出店し、翌年には店舗をビックロに集約。代わりに2014年10月~2022年1月末まで「プラステ」が営業。グループにとって勝手知ったる立地といえる。

 一方のフラッグスには現在、「ギャップ(GAP)」やその傘下の「バナナリパブリック」、スポーツ系の「ゴルフ5」「ナージー」、セブン&アイホールディングスからABCマートがM&Aして今年3月に傘下入りした「オッシュマンズ」、さらには、「タワーレコード」、「シップス」、「ジャーナルスタンダード」、サザビーリーグの「フライングタイガー」「カンペール」「アガット」「ベアフットドリーム」などが出店している。

 「ユニクロ」がどこの跡地に入るのかは気になるところだが、すでに4月22日にはファーストリテイリング傘下の「ジーユー(GU)」が7~8階の2フロアにオープンして先鞭をつけている。

 JR新宿駅南口の目の前にあり、トラフィック(交通量や客数)が多く、若者も多く訪れる商業施設内のフラッグス店と、新宿三丁目店では立地や客層が異なるため、商品展開やデジタル施策をはじめとしたサービス内容など、店作りも工夫するという。

 この2店舗のオープンで、新宿エリアのユニクロは、新宿西口店、新南口にある新宿高島屋店と含めて4店舗体制になる。

 ビックロは6月20日から「ビックカメラ 新宿東口店」として営業する。7階の「GU」は営業を継続する。「ユニクロ」が抜けた1~3階については未定と報じられているが、ファーストリテイリングを上回る売上高5兆円の「ナイキ(NIKE)」の出店も噂(うわさ)されている

 ただし、ビックロが入る新宿三越ビルは1929年築という年季の入った建物だ。三越伊勢丹HDはスタジオアルタ跡や駐車場、さらには伊勢丹本館を含めた新宿エリアの再開発に乗り出すことを明言しており、一部でプロジェクトが始動している。玉突き開発を行う中で、伊勢丹やその他商業の仮設店舗となる、あるいは、先行して建て替えを行うという可能性もある。

 まさに新宿駅西口の再開発では、商業施設とオフィスが入る48階建ての大型複合施設を小田急百貨店新宿店跡地に建設するのに際して、10月2日で閉店する本館の機能を隣接地に運営する新宿西口ハルクに移転・改装して営業を継続することが決まっている。

 ビックロからのユニクロ撤退は、新宿地区再編の動きを加速させるニュースとも言える。

ファッションビジネス・ジャーナリスト、クミコム代表

「日本繊維新聞」の小売り・流通記者、「WWDジャパン」の編集記者、デスク、シニアエディターとして、20年以上にわたり、ファッション企業の経営や戦略などを取材・執筆。「ザラ」「H&M」「ユニクロ」などのグローバルSPA企業や、アダストリア、ストライプインターナショナル、バロックジャパンリミテッド、マッシュホールディングスなどの国内有力企業、「ユナイテッドアローズ」「ビームス」を筆頭としたセレクトショップの他、百貨店やファッションビルも担当。TGCの愛称で知られる「東京ガールズコレクション」の特別番組では解説を担当。2017年に独立。著書に「ユニクロ進化論」(ビジネス社)。

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