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「セーラーズ」の期間限定店に5時間待ちの行列 熱狂的ファンや過去動画視聴・アイドル着用で若い新規客も

松下久美ファッションビジネス・ジャーナリスト、クミコム代表
セーラーズの三浦静加オーナー兼デザイナー(中)。スタッフと渋谷モディで 筆者撮影

1980~90年代、マイケル・ジャクソンやおニャン子クラブなどが愛用し、デザイナーズ&キャラクターズブームの牽引役となった「セーラーズ(SAILORS)」。水兵のキャラクターやロゴの大胆なデザインだけでなく、刺しゅうやボディの素材などクオリティの高さも人気の秘訣で、かつて渋谷区神南にあった路面店には週末を中心に行列ができ、社会現象を巻き起こしていた。

 そんな「セーラーズ」の生みの親であり育ての親である、三浦静加オーナー兼デザイナーの起業50周年を記念して、12月27日までの5日間、マルイの渋谷モディ1階にポップアップストア「50th ANNIVERSARY SAILORS POP UP SHOP」をオープンしている。オープン初日の23日には、昔からの熱狂的なファンや、当時子どもで渋谷は遠かったけれど、大人になってようやく買いに来られたという人、AKB48、元欅坂46、乃木坂46、日向坂46など近年アイドルたちが着用したことでファンになった人々、80年代、90年代の動画をYouTubeなどで視聴してカワイイと思って好きになったという人々など、幅広い客層が来店。開店前から行列ができ、一時は行列が4階まで伸びた。11時の開店時間に合わせて来店した人がショッピングできたのは5時間後の16時となり、「また来ます」と出直しする人、「『セーラーズ』は並んで買うのが当たり前。かつての行列を思い出して懐かしかった」という人々もいた。

 熱狂的なファンでニューヨーク帰りのスタイリストが自発的にポップアップストアの手伝いをしていたり、過去のお気に入りアイテムを着用して来店する人々などがいて、店頭はさながら同窓会のような雰囲気も醸し出されている。しーちゃんの愛称で知られる三浦社長は芸能人との交友関係も広く、多くの著名人が来店。「この黄色をとんねるずの(木梨)憲武くんが着てくれている」「このミント色バージョンは、千秋ちゃんとビビル大木くんが気に入ってくれたもの」「このピンクのパーカは、ペー・パー(林家ぺー・パー子)さんが予約してくれている」など、著名人のお気に入りアイテムを接客トークの中で聞かせてもらえるのも楽しさの一つだ。

ポップアップストアの誘致・運営を行うBASEのカスタマーサクセス担当者は「ここでは週単位でポップアップストアを構えているが、過去最高の人気と売上高で驚いている」とコメント。「普通は出店時期など第3希望まで出してもらって調整するが、三浦社長は第1から第3まですべて12月23日からを指定され、ここ以外は出ないと言われた。しかも、商品量もそれほどないので4日でと言われたところ、なんとか5日まで伸ばしてもらった。異例尽くめだが、出てもらって良かった」と、三浦社長の商売勘の良さやこだわりに感嘆していた。

 モディのエントランスのサイネージや店内には、若き日に撮影した、マイケル・ジャクソンとのツーショット写真も掲出。「セーラーズ」のファンだったマイケル・ジャクソンからコンサートに招待され、友人の小錦とともにVIP席で観覧。その後、控室で一緒に撮ったもので、マイケルと小錦が一緒に踊る写真は雑誌「ローリングストーンズ」に掲載されたりもしている。

 今回販売するのは、10月にオンラインショップで販売した際には即完してしまったという“マイケルスタジャン”や、セーラーズフリークのとんねるずが初めて着たパーカーを復刻した“デビューパステルパーカー”おニャン子クラブからAKB48、元欅坂46、乃木坂46、日向坂46など、歴代のアイドルたちが着用した“アイドルTシャツ”、「着心地抜群なので、大人になったセーラーズファンの方にオススメしたい」という“ウールロングTシャツ”や、レーシングチームがこぞって取り入れていた肩にあて布を施した デザインの“トリコレーシング”、「湘南乃風」の若旦那や「セーラーズ」の大ファンの掟ポルシェなども愛用しているという“セーラーカラースタジャン”などを販売。「ニューエラ」とのコラボキャップや、トレーナーのカスタムオーダーをはじめとした予約受注会や、プレミアムアイテムの数量限定販売なども行っている。マスキングテープやステーショナリー、時計や目覚まし時計、ステンレスボトルなど、グッズも用意した。

 テレビや雑誌との企画なども複数予定されており、まさにブーム再燃という状態だ。詳細は明かせないとしたうえで、年明けには、乃木坂46の番組での着用や、FANTASTICS from EXILE TRIBEとのコラボなども決定しているという。

「若い方々が大きなサイズをビッグシルエットで着こなすスタイルも可愛いですよね。好みの配色など、私たちの世代とは感覚が違う部分もありますが、こだわる部分と、若い方々の感性と取り入れた部分と、ハイブリッドで楽しみながら、ブランドが100年続くように頑張っていきたいですね」と三浦社長。

ファッションビジネス・ジャーナリスト、クミコム代表

「日本繊維新聞」の小売り・流通記者、「WWDジャパン」の編集記者、デスク、シニアエディターとして、20年以上にわたり、ファッション企業の経営や戦略などを取材・執筆。「ザラ」「H&M」「ユニクロ」などのグローバルSPA企業や、アダストリア、ストライプインターナショナル、バロックジャパンリミテッド、マッシュホールディングスなどの国内有力企業、「ユナイテッドアローズ」「ビームス」を筆頭としたセレクトショップの他、百貨店やファッションビルも担当。TGCの愛称で知られる「東京ガールズコレクション」の特別番組では解説を担当。2017年に独立。著書に「ユニクロ進化論」(ビジネス社)。

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