「ユニクロ」は9月16日、パリに売り場面積約2000平方メートル(約600坪)の大型店「UNIQLO RIVOLI」(ユニクロ リヴォリ)をオープンする。ルーヴル美術館やチュイルリー公園と同じリヴォリ通り沿いで、映画「ポンヌフの恋人」で知られるポン・ヌフ橋から伸びるポン・ヌフ通りと交わる一等地。近隣ではLVMHモエ・ヘネシー ルイ・ヴィトンが今年6月、16年ぶりに老舗百貨店「サマリテーヌ」を複合商業施設として復活オープンさせており、今パリで一番注目されているエリアといえる。ユニクロはかつてそのサマリテーヌの一角だったアール・デコ建築の建物を修復して出店するもの。「ファッションとカルチャーの融合」をテーに、“LifeWear”とアート体験を提供する。フランスのユニクロ店舗で初めてグラフィックTシャツを集めた「UTコレクション」のコーナーを設けるとともに、ルーヴル美術館とのコラボコレクションを世界先行発売する。

ルーヴル美術館やパリ市庁舎があるリヴォリ通りは、観光客や地元客など人通りが多く、百貨店の「BHV」(ベーアッシュベー)や「ZARA」「H&M」「C&A」などのグローバルチェーンの大型店など、ファッションストアなどが軒を並べる、“実は売れるストリート”として知られている。UNIQLO RIVOLIが入る建物には、サマリテーヌ閉店後、フランスを代表するインナー・ランジェリーブランド「Etam」(エタム)が旗艦店を構えていたこともある。

近隣にはルーヴル美術館の他に、パリ装飾美術館ポンピドゥー・センターがあり、今年5月にはブルス・ド・コメルス美術館がオープンしている。「GUCCI」(グッチ)や「SAINT LAURENT」(サンローラン)などを擁するケリング(KERING)創業者のフランソワ・ピノー(Francois Pinault)氏のプライベートミュージアムとして安藤忠雄が旧商品取引所を改修設計したもので、アートやカルチャーの色彩が一層濃くなっているエリアだ。

さらに新生「サマリテーヌ」が話題性に輪をかけている。1870年創業の老舗百貨店で、ベルナール・アルノー(Bernard Arnault)CEO率いるLVMHモエ・ヘネシー ルイ・ヴィトンが2001年に買収。老朽化により2005年に閉鎖した後、7億5000万ユーロ(約990億円)をかけて大改造した。総床面積は8万平方メートルで商業施設・ホテル・オフィス・集合住宅からなる複合商業施設として生まれ変わった。アール・ヌーボー建築のポン・ヌフ館と、妹島和代と西沢立衛が率いる建築事務所SANAAが手がけたリヴォリ館に約600ブランドを集積。150メートルにわたる孔雀のフレスコ画や、リヴォリ通りに面する波打つガラスのファサードも含めて、建築やショッピングの新しいデスティネーションストアとして注目を集めている。

1930年代に造られたアール・デコ様式の建物を修復し、巨大な階段やガラスの天蓋、ファサードのモザイクや真鍮のディテールなどの特徴を残した。グラフィックはHyphenによるもの。 写真:ユニクロ公式
1930年代に造られたアール・デコ様式の建物を修復し、巨大な階段やガラスの天蓋、ファサードのモザイクや真鍮のディテールなどの特徴を残した。グラフィックはHyphenによるもの。 写真:ユニクロ公式

そんなリヴォリ通りでユニクロが打ち出すのも「アート」だ。日本とフランスの間にクリエイティブな架け橋を作りながら、来店者にアートのインスピレーションを与えるための多目的な媒体として機能することを目指すという。

1930年代のアール・デコ様式の建物を修復しつつ、壁一面のスクリーンやLEDメッセージビーム、ステンレスタイルの鏡面天井など現代的な要素を加え、ネオレトロな雰囲気を演出する。

店内壁面には、コラージュ作品で知られるグラフィックデザイナーの河村康輔が、ルーヴル美術館から自由にインスピレーションを得て作成した、同店の記念碑的なインスタレーションが登場する。

「BrillancesUrbaines」(都会のきらめき)と題して、和紙と「ユニクロ」の古着回収プログラムで集めたTシャツの断片で京都とパリのデザイナーが創作したフレスコ画も出現する。ナラ材の端材で作られた寄木細工の床も含めて、LEED(Leadership in Energy and Environmental Design)認証を取得したこの新店舗のサステナブルな取り組みを象徴している。

「ユニクロ」とアートといえば、Tシャツをキャンバスに見立てた「UT」がその代表だ。また、“Art for All”(みんなのためのアート)をスローガンに2013年からニューヨークのMoMA(ニューヨーク近代美術館)と、パートナーシップを結び、UTでのコラボTシャツの発売や、UNIQLO Free Friday Night(ユニクロ・フリー・フライデー・ナイト、金曜夜の入館無料プログラム)などを実施してきた。ロンドンのテート・モダンとは、2016年からコラボし、2021年6月に3年間のグローバルパートナーシップを締結している。

パリでも2021年1月にルーヴル美術館と4年間のパートナーシップを締結。5月からは水・土・日曜日に館内各拠点で専任のスタッフが子どもやアートに馴染みがない訪問者に新しい視点で展示作品を紹介する教育プログラム「ミニ・ディスカバリー・ツアー」を開催している。今後もプログラムを拡充するとともに、UNIQLO RIVOLIでも、「ルーヴル美術館とコラボレーションした作品展示やワークショップなどを随時開催し、様々なアート体験を提供する」という。

「サモトラケのニケ」をメインモチーフにしたルーヴル美術館とのコラボコレクション。写真:ユニクロ公式(商品の詳細クレジットは下記1に記載)
「サモトラケのニケ」をメインモチーフにしたルーヴル美術館とのコラボコレクション。写真:ユニクロ公式(商品の詳細クレジットは下記1に記載)

ドミニク・アングルの「グランド・オダリスク」をメインモチーフにしたルーヴル美術館とのコラボコレクション。写真:ユニクロ(商品の詳細クレジットは下記2に記載)
ドミニク・アングルの「グランド・オダリスク」をメインモチーフにしたルーヴル美術館とのコラボコレクション。写真:ユニクロ(商品の詳細クレジットは下記2に記載)

「UT」のルーヴル美術館コレクションでは、2月に第1弾を発売。9月16日のオープンに合わせて第2弾を世界で先行発売する。「モナ・リザ」「サモトラケのニケ」「ミロのヴィーナス」などの歴史的名作をフィーチャー。イギリスを代表するグラフィック・アーティストのピーター・サヴィルも起用した。

なお、オープニング企画として、太鼓の演奏、日本舞踊や書道の公演、日本茶や抹茶のデモンストレーションや試飲などを行う予定だ。

ちなみに、2022年春にオープンするロンドンのリージェントストリートの店舗は「THEORY」(セオリー)との併設店となるが、UNIQLO RIVOLIでは2005年からファーストリテイリング傘下にある地元フランス発の「Comptoir des Cotonniers」(コントワー・デ・コトニエ)も販売する。

ECの台頭やコロナ禍による店舗の大量閉鎖や賃料の下落といった経済的背景が、好立地への出店を後押しする要因になっている。一方で、店舗での良質な顧客体験の提供や、デジタル活用、店舗とECの相互送客、第一想起ブランドとなるためのブランディングなど、リアル店舗のあり方や果たすべき役割が再考されてきた。UNIQLO RIVOLIではその答えが垣間見える店舗となりそうだ。また、コンセプトである“LifeWear”と“Made For All”に加え、UNIQLO RIVOLIでは、気軽にアートに触れられる機会を提供することで、“Art For All”の価値創造も前進しそうだ。

「UT」ルーヴル美術館コレクションのクレジット

1:The Winged Victory of Samothrace / Hellenistic Art (C. 190 BC), Island of Samothrace (northern Aegean) Musée du Louvre, Dist. RMN-Grand Palais / Philippe FuzeauJan Frans van DAEL / Flowers, Grapes, and Peaches RMN-Grand Palais (Musée du Louvre) / Adrien DidierjeanLouvre Pyramid I.M. Pei

2:Jean-Auguste-Dominique INGRES / Une Odalisque, RMN-Grand Palais / Angèle Dequier, Balthasar van der AST / Flowers, Shells, Butterflies, and Grasshopper, RMN-Grand Palais (Musée du Louvre) / Tony Querrec, Louvre Pyramid I.M. Pei