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ギャップが3Dアバターによるバーチャル試着新興企業Draprを買収 最適フィット提案と返品削減に期待

松下久美ファッションビジネス・ジャーナリスト、クミコム代表
(写真:ロイター/アフロ)

米国のギャップ(Gap)社は、ユーザーが素早く自身の3Dアバターを作成し、オンライン上でバーチャルフィッティングができる技術を提供する新興企業のDraprを買収した。同名のアプリを通じて、最適サイズが見つけられるようにすることでオンラインで購入するハードルを下げるとともに、返品の削減に寄与させていく考え。最適フィットの開発にも活用していく。

26日(現地時間)の発表に合わせて、ギャップのサリー・ギリガン(Sally Gilligan)チーフ・グロース・トランスフォーメーション・オフィサーは、「フィット感は顧客にとって摩擦(混乱)を起こさせる最大のポイントです。Draprは、高度な3Dテクノロジーを通じて、買い物客が必要なサイズとフィット感を効率的に見つけるのに役立ちます。Draprを活用して、ギャップ社がお客さまのフィット体験を改善し、進行中のデジタルトランスフォーメーションの加速をサポートしていきます」とコメント。

ギャップ傘下の「オールドネイビー」(Old Navy)では8月20日から、サイズに関係なく女性が服選びに自信を持てるように、サイズインクルーシブの取り組み“BODEQUALITY”をスタート。プラスサイズセクションなどもなくし、0〜30、XS〜4Xのサイズをすべて同価格で販売する。展開店舗も全米1200店舗すべてに広げる(これまでは品揃えの30%で0~18サイズを用意し、75店舗で販売していた)。これにともない、ボディスキャンや3Dアバターを活用することでフィットの設計プロセスを刷新している。

今回M&AするDraprの技術は、「このノウハウをさらに発展させ、すべてのお客さまにパーソナライズされた包括的なフィット体験を提供するのに役立ちます。アイテムが実際にお客さまの体にどのように見えるかを示し、お客様の好みに応じて最適なフィットをお勧めします」と、オールドネイビーのナンシー・グリーン(Nancy Green)社長兼CEOは述べている。

Draprは、10年以上にわたり3D技術の共同研究を行ってきた3人組が2020年夏に設立。共同設立者のデイビッド・パストゥーカ(David Pastewka)CEOは、「ほとんどの人は、自分の正確なサイズを知らないか、数字だけではわからない特定のタイプのフィット感を求めている」「Draprは効果的であることが証明されており、ギャップ・ファミリーの一員として、大規模に顧客にインパクトを与えることができることに興奮している」と語った。

今回の取引はジリガン氏が率いるギャップ社のストラテジックグロースオフィス(Strategic Growth Office、SGO)が推進したもの。「将来の消費者や業界の需要に応えるために、コアビジネスの枠を超えて考えることを使命とする組織」であり、会社やブランドポートフォリオ全体の成長を促進し、新しい機能を加速させるような投資を検討しているという。すでに、「アスレタ」(Athleta)ブランドを通じて、デジタルフィットネスプラットフォームのobé fitnessに出資しパートナーシップを締結したりもしている。

ファッションビジネス・ジャーナリスト、クミコム代表

「日本繊維新聞」の小売り・流通記者、「WWDジャパン」の編集記者、デスク、シニアエディターとして、20年以上にわたり、ファッション企業の経営や戦略などを取材・執筆。「ザラ」「H&M」「ユニクロ」などのグローバルSPA企業や、アダストリア、ストライプインターナショナル、バロックジャパンリミテッド、マッシュホールディングスなどの国内有力企業、「ユナイテッドアローズ」「ビームス」を筆頭としたセレクトショップの他、百貨店やファッションビルも担当。TGCの愛称で知られる「東京ガールズコレクション」の特別番組では解説を担当。2017年に独立。著書に「ユニクロ進化論」(ビジネス社)。

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