ファーストリテイリングが脱炭素へ 気候変動対応をサステナの重点施策に 環境負荷を減らしポジティブへ

会見に臨む柳井正会長兼社長(左)と新田グループ執行役員 写真公式

 「ユニクロ」や「GU」(ジーユー)を手がけるファーストリテイリングが、温室効果ガス排出量の実質ゼロを目指す「カーボンニュートラル」にコミットメントし、脱炭素を加速することを明言した。柳井正会長兼社長は、ポジティブであることの重要性や、サステナブルであることはすべての大前提だとしたうえで、「企業活動自体が社会にとって、特にステークホルダー全員にとって、お互いにプラスになっていくことが大事だ。(ファッション産業は)地球環境に対してかなり負荷を与えてるので、その負荷をできるだけ少なくし、むしろマイナスにする」とカーボンポジティブにも挑戦する姿勢を打ち出した。

 さらに、「地球そのものが有限だということをもう1回自覚することが大切だ。過去にも何回も警告があったが、パンデミックが起こってしまった。世界各国が力を合わせてこのパンデミックを早く収束することと、地球環境に対してプラスになること、自分たちができることを積極的にやっていくことが必要だ」と訴えた。

 ファストリは2月2日、2006年から毎年発行してきたサステナビリティレポートの「Fast Retailing Sustainability Report 2021」への刷新・発行を機に、メディア説明会をオンラインで実施した。

「Fast Retailing Sustainability Report 2021」の表紙は、ジャック・アタリ氏と柳井社長の対談シーンに 写真公式
「Fast Retailing Sustainability Report 2021」の表紙は、ジャック・アタリ氏と柳井社長の対談シーンに 写真公式

 サステナビリティを統括する新田幸弘グループ執行役員は、過去20年間の軌跡を振り返るとともに、2021年の重点領域として、「気候変動対応」「服を通じた社会貢献活動の進化」「お客さまとの協同の取り組みの推進」を掲げた。

 とくに「気候変動対応」は「当社のサステナビリティの最大のチャレンジ」と位置づけ、「パリ協定に基づいて、2050年までに温室効果ガス排出量を削減しゼロにする目標を尊重していく」として、今年中にサプライチェーンや店舗、オフィスを含めた温室効果ガスの長期の削減目標や具体的なアクションを策定し公表すると説明。「我々のサプライチェーンは、アジアを中心としており、地球環境問題、人権労働問題に対して、業界のリーダーとして率先して改善に取り組んでいく」と語った。

 ユニクロのヨーロッパの60店舗では、昨年末までに再生可能エネルギーへの切り替えを完了。日本では環境が整わない部分があるとしながら、今後着実に導入していく。また各国の店舗内でも、順次、再生可能エネルギーを導入する計画だ。

 ちなみに、ユニクロ川越店は2019年に建物と敷地利用における国際的な環境性能評価システムLEED(Leadership in Energy & Environmental Design)のO+M(Operation and Maintenance: 既存建物の運用・保守)分野で、日本国内の小売店舗として初めてゴールド認証を取得している。

 柳井正会長兼社長は、「コロナ禍の社会と企業の在り方」「『社会インフラ企業』を目指すファーストリテイリングが考えるサステナビリティ」についてこう語った。

写真公式
写真公式

 今回の新型コロナウイルスの感染拡大によって世界の状況が一変した。グローバルの人の往来は止まり、各国の経済は停滞している。加えて世界の大国の間で政治的経済的対立が激化し、そのことがビジネスの現場にも深刻な影響を与えている。まさに危機的な現状だ。しかし、このような状況にあって、今最も必要なことは、世界中の個人や企業が、ポジティブに考えて、すぐに行動して、力を合わせてピンチをチャンスにすること、より良い社会を実現することだ。

 今回のサステナビリティレポートの中で、ジャック・アタリさんと対談したが、現在の地球上で起きている問題は一国レベルでは解決できない。国を超えて全世界に住んでいる人がこれは自分の問題だと思って、考えて行動しないといけない。それも悲観的になるのではなく、ポジティブに考えてやる。同時に、世界の歴史をよく知り、その上で、現在があり、将来があること、ポジティブな将来を本当に実現できるために何ができるのか(考えて行動することが重要だ)。

 残念ながら現状は、今のこと、目先のこと、その利害だけ考えて全員が行動している。殻に閉じこもっている。世界と繋がってるが繋がってないふりをしてる。非常に残念な現状だ。私はこのままでは地球は今の世代で終わりになってしまうかもしれないと考えている。

 そうならないためには、全世界の人々、企業が人類全体の将来を考えて、経済活動はどうあるべきなのか、地球環境はどうあるべきなのか、自分のやってるビジネスはどうなのか。その事をぜひ本当に真剣に考えてもらいたい。そして行動しないといけないと考えている。

 さらに、企業としての決意を広く世界に知ってもらうために、世界発信するために、サステナビリティレポートを大幅に刷新した。平和で安定した豊かな社会がない限り、企業の繁栄はない。サステナブルであることは全ての大前提であると思っている。会社の存在そのものが社会をより良くする会社になるために、我々は本気で行動することを約束する。

利他主義説くジャック・アタリ氏と対談、ポジティブソサエティの実現を語り合う

柳井社長はジャック・アタリ氏と「OUR PATH TO A POSITIVE WORLD~ポジティブソサエティへの旅」をテーマに2時間語り合ったという 写真公式
柳井社長はジャック・アタリ氏と「OUR PATH TO A POSITIVE WORLD~ポジティブソサエティへの旅」をテーマに2時間語り合ったという 写真公式

 柳井社長はサステナビリティレポートの巻頭で、経済学者・思想家のジャック・アタリ氏と対談した。著書「2030年ジャック・アタリの未来予測」や近著「命の経済~パンデミック後、新しい世界が始まる」などで知られるアタリ氏は、ミッテラン仏大統領の顧問や欧州復興開発銀行の初代総裁を務め、サルコジ政権下では委員長として「アタリ委員会」(超党派によるフランス成長解放委員会)、オランド政権下では「ポジティブな経済」状況報告書などを取りまとめてきた要人。利他主義の重要性を説いてきた。

 対談では「OUR PATH TO A POSITIVE WORLD~ポジティブソサエティへの旅」をテーマに、「命の経済」「ポジティブソサエティの実現」「利他主義の重要性」などについて語り合った。