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元ZOZOの前澤友作氏がアダストリア、ユナイテッドアローズの大株主に。その保有目的とは?

松下久美ファッションビジネス・ジャーナリスト、クミコム代表
アダストリアとユナイテッドアローズの大株主になった前澤友作氏(写真:西村尚己/アフロ)

ZOZOの創業者で前社長の前澤友作氏が、アダストリアの株式の5.60%、ユナイテッドアローズの7.97%の株式を取得し、大株主になったことがわかった。取得金額は約80億円。13日に提出した大量保有報告書によると、保有目的は、「純投資を基本とするが、発行者経営陣との間で友好的な関係が構築されることを前提として、必要に応じて企業価値向上のための助言または提案を経営陣に対して行う可能性もある」というもの。

アダストリアは「グローバルワーク」「ニコアンド」「ローリーズファーム」「スタディオクリップ」「ジーナシス」などを手がけるカジュアルSPA企業で、売上高は2223億円(2020年2月期)。EC売上高は国内で436億円で、EC化率は20.5%。今回の前澤氏の持ち株比率5.60%というのは、主要取引先である豊島の4.20%(2020年2月末現在)を抜き、オーナーである福田三千男会長の資産管理会社フクゾウの34.41%(同)に続く第2位になるものだ。

一方、ユナイテッドアローズは、「ユナイテッドアローズ」「ビューティ&ユース」「スティーブンアラン」などのセレクトショップや、カジュアルSPA「グリーンレーベルリラクシング」「コーエン」などを手がけ、売上高は1574億円(2020年3月期)で、EC売上高は292億円、EC化率は22.6%。前澤氏の持ち株比率7.97%は筆頭株主で創業者の重松理名誉会長の8.23%(2020年3月末現在)に続くもので、こちらも第2位に浮上した。

両社ともに「ZOZOTOWN」(ゾゾタウン)の売上げ上位を占める有力取引先だ。とくにユナイテッドアローズは、重松氏が「ZOZOTOWN」の最初期から前澤氏を支援。ファッション商品をネットで売ることにまだ抵抗があった企業・ブランドの出店を促す役割を果たした。

かつて、アダストリア(当時はポイント)がユナイテッドアローズに経営統合を持ち掛けたことがあったが、コロナ禍で業績が落ち、株価も低空飛行する企業がある中で、前澤氏による今回の動きが、アパレル・小売業の再編を進めるきっかけになるかもしれない。

ファッションビジネス・ジャーナリスト、クミコム代表

「日本繊維新聞」の小売り・流通記者、「WWDジャパン」の編集記者、デスク、シニアエディターとして、20年以上にわたり、ファッション企業の経営や戦略などを取材・執筆。「ザラ」「H&M」「ユニクロ」などのグローバルSPA企業や、アダストリア、ストライプインターナショナル、バロックジャパンリミテッド、マッシュホールディングスなどの国内有力企業、「ユナイテッドアローズ」「ビームス」を筆頭としたセレクトショップの他、百貨店やファッションビルも担当。TGCの愛称で知られる「東京ガールズコレクション」の特別番組では解説を担当。2017年に独立。著書に「ユニクロ進化論」(ビジネス社)。

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