「アースミュージック&エコロジー」のストライプが中国市場から撤退 アリババとの提携も実を結ばず

ECモールのJD.com旗艦店で発表された閉店と中国撤退の通知 同サイトより

 「アース ミュージック&エコロジー」(earth music & ecology)を手がけるストライプインターナショナルが、中国市場から撤退する。2004年に台湾と香港、2011年に中国本土に進出した「アース」は、日本では2009年ごろ、中国では2010年ごろから流行した「森ガールファッション」の代表的ブランドとして注目を集めた。けれども、トレンドが下火になるのと合わせて、ワンブランドでは厳しい状況に陥った。2017年9月に他社商品も含めた複数のブランドを集積した「アーストウキョウセレクトストア」を出店し、一時は盛り返したかに見えた。

 また、同社は2018年前後に、ITを駆使したプラットフォームを有した、オムニチャネルを進化させた新ビジネスモデルとして「次世代型テックアパレル」を標榜。同年、アリババの日本法人と戦略的パートナーシップを締結。中国では、ジャック・マー創業者が掲げてきたオンラインとオフラインを融合したビッグデータ総合運用型のビジネスモデル「ニューリテール」戦略を推進した。チャットを使ったデジタル接客や、顔認証カメラや赤外線探知機、RFIDとBluetooth技術ベースの顧客試着情報収集などの設備を導入したりもしていた。

 しかし、アリババ生態系内の利用客を含めたデータ収集やデータの融合を進めてきたが、そのデータを運用した商品の企画・開発やマーケティングを精度を高めて行う域に達するまでには時間が足りなかった。長く赤字が続いてきたが、2019年度でようやくブレークイーブンになり、2020年から回収フェーズに入る、というタイミングで新型コロナウイルスのあおりをうけ、力尽きた形だ。2017年度に1億元(約17億円)ほどだった中国事業の売上高を、3年後に7億元(約119億円)、10年後に100億元(約1700億円)に引き上げようとする野心的な計画も、裏目に出た。

 中国撤退に際しては、ECモール「JD.com(京東)」旗艦店で「通知」(お知らせ)を発表した。ストライプチャイナ名で、新型コロナウイルスの影響にも触れながら、「親会社の株主総会で慎重に議論した後、事業を再編し、一時的に中国市場から撤退することを決定しました。『アース ミュージック&エコロジー』の公式旗艦店は6月21日に閉鎖。6月30日には中国市場から完全に撤退します。最終注文日は6月20日です」と説明。返品や交換などがある場合はカスタマーサービスで対応するとしたうえで、「この決定に対して、わが社は無力で不本意です。ここで心からお詫び申し上げるとともに、消費者の皆様にはご理解とご支持を賜りますよう、よろしくお願い申し上げます」と結んでいる。

 「JD.com(京東)」旗艦店で扱っていた、グループの「サマンサモスモス」(Samansa Mos2)や「アメリカンホリック」(AMERICAN HOLIC)、「グリーンパーク」(GREEN PARK)、「イエッカベッカ」(YECCA VECCA)、モデル・タレントの藤田ニコルがプロデュースする「ニコロン」(NiCORON)、ブランド・事業終了を発表している「イーハイフンワールドギャラリー」(E hyphen world gallery)の販売も終了している。

 「アース」と「サマンサモスモス」「イーハイフンワールドギャラリー」の「TMALL(天猫)」旗艦店もクローズする。7月22日での営業終了を告知しているが、すでに商品の販売は中止されている。

 2018年春の時点で、西単大悦城(ジョイシティ)など北京に2店舗、1号店を出店した来福士(ラッフルズシティ)や徐家匯太平洋百貨など上海に5店舗、その他、広州、蘇州、杭州、重慶の4店舗などを合わせて、11店舗を展開していたリアル店舗も今月末までに閉鎖する。

 

 なお、中国市場では海外ブランドの撤退ラッシュともいえる状態だ。2018年には英国発の「トップショップ」(TOPSHOP)と「ニュールック」(NEW LOOK)、日本の「ハニーズ」(Honeys)が撤退。2019年末には米国発ファストファッションの「フォーエバー21」(FOREVER21)、今年3月には米ギャップ(GAP)傘下の「オールドネイビー」(OLDNAVY)がオンラインとオフラインの全店の閉鎖を発表。5月末には香港発SPAの「エスプリ」(ESPRIT)も中国本土での事業を終了した。英カジュアルブランドの「スーパードライ極度乾燥(しなさい)」(Superdry)も7月末をめどに撤退する予定だ。

 国際通貨基金(IMF)が6月24日に発表した、今年の世界の実質GDPの成長率見通しは4.9%減。中国の1.0%増は日本の5.8%減に比べるとかなり健闘しているが、成長が鈍化していたとはいえ6.1%増だった2019年に比べると大きく失速することが見込まれている。現地のアパレル小売り関係者によると、ラグジュアリーブランドも著名ブランドは復活しており、日本発の「ユニクロ」(UNIQLO)や「無印良品」(MUJI)も回復傾向にあるという。だが、ストライプの場合、「コロナに加えて、セクハラ問題が尾を引く中で、これ以上、不採算事業は維持できないとの判断だったのだろう」と推し量る。

 日本企業の「ニューリテール」の成功事例となることが期待されていたが、残念な結果になってしまった。