無印良品、自ら生活者に密着しにいく。ローソンでの販売を開始。

生活立地での販売を強化する「無印良品」。「ローソン」との親和性はいかに 筆者撮影

 良品計画「無印良品」の新しい挑戦が始まった。コンビニエンスストア「ローソン」で6月17日、「無印良品」の商品の販売が開始したのだ。

 もともと、西武百貨店や西友、パルコ、ファミリーマートなど、セゾングループの一員として、そして、西友のPBとして1980年に始まった「無印良品」。創業当時からファミリーマートでも販売し、最大時には約300品目が扱われていたこともあった。

 けれども、徐々に「無印良品」の店舗数が増え、ネットでも購入できるようになると、数棚程度でコーナー展開するファミマでの売上げは伸び悩んだ。ファミマ側からの申し入れで、2019年1月28日で商品供給を停止し、コンビニでの販売は終了していた。

 水面下では業界トップの「セブン-イレブン」との提携を模索していたとも言われていたが、ふたを開けてみたら手を組んだのは日本第2位の「ローソン」だった。どちらからのオファーで始まったプロジェクトなのか?そして、決め手は何だったのか?

 良品計画の広報・サステナビリティ部の担当者は、「2018年末頃より、両社で協議を開始しました。消費をめぐる状況が変化してきているなかで、無印良品の店舗での販売のみならず、様々な業態での販売の可能性を以前より模索しておりました。その中で、『圧倒的な美味しさ』『人への優しさ』『地球(マチ)への優しさ』という3つの約束を掲げているローソン様の想いに触れ、共感し、協業できるパートナーとして話が進み、今回の取り組みに繋がっています」と説明する。

 まずは、「久が原一丁目店」(東京・大田)、「新宿若松町店」(東京・新宿)、「南砂二丁目店」(東京・江東)の3店舗を実験店舗としてスタート。「日用品の購入に活用いただける住宅地圏の店舗をローソン様と選定しました」という。

 今、「無印良品」は、自ら生活者に近づき、商品を販売するだけではなく、人々の生活の中から生じた課題を解決し、感じよい暮らしを送るための商品やサービスの開発を強化しているところだ。販路を広げるため、アマゾンや楽天での販売もスタートしている。

 「今回のコロナ禍では、首都圏や都市部を中心とした無印良品店舗の大半が、臨時休業を余儀なくされ、たくさんのお客様にご不便をおかけしました。ローソン様で展開を開始することで、日常生活にもっとも必要な暮らしの基本を、生活のすぐ近くにそろえることができると考えています」。

 

 スタート当初は、無印良品で販売している約7000品目の中から選んだ約500品目を期間限定で販売する。

 「コロナ禍でも生活に密着したアイテムは比較的堅調であり、実験販売でも無印良品で販売している商品の中から、レトルトカレーや化粧水、靴下、インナーなど日常生活に必要な商品を選び、より暮らしに近い場所でお買い求めいただけるようにしていきたいと考えています」と同社。今後は商品の共同開発なども行っていく予定。「ローソン様とともに、生活者の暮らしにさらに役立つことを目指していきます」と意欲的だ。

 もう一つ、「無印良品」には食品の売上高構成比を2030年をめどに30%にまで高めたいという野望もある(ちなみに、2020年2月期の食品のシェアは8.5%)。松崎曉社長は、過去の決算発表や個別インタビューなどの際に、「生活の基本となる商品群を強化する中で、食品は将来の無印良品の大きな塊になる。また、来店頻度を高める大きな武器になる」と語っている。ローソンのPBなどとのすみ分けも必要になるだろうが、コンビニでの食物販にはチャンスが大きい。

 さらに、客層が近そうな「ナチュラルローソン」(「毎日だから大切に。」をコンセプトに美と健康を考えたライフスタイルを身近でサポートすることを目指した新型コンビニ)ではなく、あえて雑多な「ローソン」を選んで販売し、より幅広い生活者との接点を求めている点も挑戦的だ。世界観だけでなく、商品力そのもので選ばれるための品質と価格の一層の磨き上げを行っていくことになる。

 新型コロナウイルスの感染防止のため、引き続き、密を避け、移動を抑制する生活がニューノーマル(新常態)になる中で、都心集中から郊外や地方への分散、さらには、ローカル消費の高まりなどが見込まれている。このタイミングでの「無印良品」のコンビニ販売再挑戦は、未来に振り返ってみたら、「あそこが大きな転換的だった」と評価するようになるかもしれない、実は意義深いプロジェクトのような気がしている。