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米百貨店のニーマン・マーカスが破綻、昨春念願のNYマンハッタンに上陸したばかり 

松下久美ファッションビジネス・ジャーナリスト、クミコム代表
昨年3月にオープンしたばかりのNYハドソンヤード店も現在はコロナの影響で休業中だ(写真:ロイター/アフロ)

 米百貨店のNeiman Marcus(ニーマン・マーカス)が破綻した。ニーマン・マーカス・グループ社が日本の民事再生法に当たる連邦破産法11条(チャプター11)の適用を申請したもの。3日前に破綻したJ.Crew(J.クルー)と同様、2013年に現オーナーであるアレス・マネジメントとカナダ年金制度投資委員会が行ったLBO(レバレッジ・バイアウト)の支払い債務が膨らんだもの。2017年ごろから身売り先を探していると報じられており、早晩破綻するとみられていたが、新型コロナの影響もあり、4月15日に期日を迎えた利息の支払いができず、ピリオドを打った形だ。

 テキサス州ダラスを拠点とする「ニーマン・マーカス」は、ロサンゼルスのビバリーセンターやニュージャージーのパラマスにある高級ショッピングモール「ガーデンステートプラザ」、ハワイのホノルルなどに43店舗を構えている。ただし、かつてグループ入りし、ニューヨーク・マンハッタンの五番街に1901年から館を構える老舗高級百貨店「BERGDORF GOODMAN」(バーグドルフ・グッドマン)との約束から、マンハッタンには長らく出店することができなかった。

 (ちなみに、2011年に収益の100%を寄付するチャリティストア「Treasure & Bond」(トレジャー&ボンド)をソーホーのウエストブロードウエイに出店したものの、惜しまれつつ閉店したことがあった)。

 ようやく念願のマンハッタンに上陸できたのは、2019年3月のこと。大規模な再開発プロジェクト「HUDSON YARDS」(ハドソンヤード)の複合施設内に3層で出店。ファッションショーやイベントができる広場「ニーマン・マーカス・ライブ」(日本の阪急うめだ本店でいうところの「祝祭広場」のようなもの)や、体験型のオープンキッチン「クック&マーチャント」などを設けたり、ハイテク試着室や、デジタルスタイリストによるスタイリングラウンジ、パーソナルショッピング用のスイートルームなど、ハイテクとおもてなし、体験を融合した新型店舗をオープンしたばかりだった。

 直近のグループ売上高は約46億ドル(約4900億円)で、そのうちEC売上高が3分の1以上となっている。「ニーマン・マーカス」43店舗の他、アウトレットの「ラストコール」22店舗、「バーグドルフ・グッドマン」がウィメンズ館、メンズ館の2店舗、各公式ECサイトに加え、2014年に当時売上高約1億3000万ドル(約139億円)だったドイツのミュンヘンを拠点とするラグジュアリーファッション「mytheresa.com」(マイテレサ・ドットコム)を買収したこともデジタル化の推進力になっている。

 おそらくハドソンヤード店は残されるだろうが、店舗を含めたリストラも余儀なくされるだろう。再建構想の発表が待たれる。

ファッションビジネス・ジャーナリスト、クミコム代表

「日本繊維新聞」の小売り・流通記者、「WWDジャパン」の編集記者、デスク、シニアエディターとして、20年以上にわたり、ファッション企業の経営や戦略などを取材・執筆。「ザラ」「H&M」「ユニクロ」などのグローバルSPA企業や、アダストリア、ストライプインターナショナル、バロックジャパンリミテッド、マッシュホールディングスなどの国内有力企業、「ユナイテッドアローズ」「ビームス」を筆頭としたセレクトショップの他、百貨店やファッションビルも担当。TGCの愛称で知られる「東京ガールズコレクション」の特別番組では解説を担当。2017年に独立。著書に「ユニクロ進化論」(ビジネス社)。

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