利用者からみたGoToトラベル「地域共通クーポン」の効果

旅行者が積極的にお金を落とす仕組み「地域共通クーポン」(写真:Rodrigo Reyes Marin/アフロ)

GoToトラベルの見えない効果

ここ数日のコロナの感染拡大に伴ってGoToトラベル中止を求める声が大きくなり、継続を主張していた政府も制限の検討に入ったようだ。

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ヤフーのアンケートでも83%が中止するべきと答えている。

「GoToトラベル」運用、どうすべきだと思う?(ヤフーみんなの意見)

しかし、GoToトラベルを何度も使用した筆者からみると、この制度は「観光業界の救済」以外の複合的な効果がある良い政策で、すぐにやめてしまうのにはもったいないと思う。人が動くことで高まる感染リスクとのバランスを取りながら、限定的にでも続けていってほしい。

私のような旅好きにはGoToトラベルは実にありがたい制度で、当然スタート時から何度も利用した。現在観光の仕事に携わっていることもあり、プライベートではあるが調査も兼ねている。

近場の温泉から始まり、近県の山形、新潟、そして夏にはロングドライブで石川県と福井県を旅した。つい先日も航空会社のマイルと併用して伊丹空港を起点に兵庫県と京都に行ってきたばかりだ。

様々な「GoToの現場」を見てきて、観光地はたしかに賑わっているし、活気があると感じた。不思議とあまり語られていないが、とりわけ「地域共通クーポン券」の役割は大きいと思う。

使いでのある「地域共通クーポン券」

GoToトラベルでは国から旅行の際に50%程度の補助を受けられる。スタート当初は旅行代金のみの補助だったが、10月からは「地域共通クーポン」が始まった。50%の補助のうち旅行代金の比率が下がって35%になり、残り15%を「地域共通クーポン」として宿泊施設でもらうことができる。

このクーポン、もらってみると驚くぐらい使いでがある。旅行代金が高額になればなるほど、それこそ「使い切れない」ぐらいあるのだ。

たとえば旅行代金30,000円のパック旅行を申し込んだとすると、10,500円が割引きされて、旅行者が支払うのは19,500円になる。そして現地に到着すると4,500円が地域共通クーポンとしてその宿泊施設で受け取ることができる。夫婦二人なら9,000円だ。ただしこれには期限があり、一泊旅行であれば、到着日と翌日のみの有効で、その間に9,000円を使い切るルールだ。いわば一日限りのお小遣いのようなもの。余ったらもったいないので、地図など見ながら「明日はどこに行くべきか」「お金を使うべきはどこなのか」を真剣に探すため、地域のことをもっと知りたくなる。

泊まった宿だけでなく、地域の取扱店であればどこでも使えるので、使い道は人ぞれぞれになる。お酒好きならば夕食にちょっといい地酒を飲めるが、それでも余る。残りは宿泊施設やお土産物店でたくさんお土産を買って帰れるし、地産の陶器や工芸品など、普段手が出ないような高額な商品も買いやすい。

周辺の飲食店でのランチやタクシーにも使えるし、美術館や観光スポットはもちろん街なかの小売店などでも使えるので、地域クーポンを消費するために旅行者は普通の旅行より「お金を使うために」周遊をすることになる。

実際、温泉街や観光地にはたくさん人が出ていた。有馬温泉ではお土産物屋さんに人がたくさんいたし、京都ではランチ3500円からの高級湯豆腐店も満席だった。

驚いたのはどの観光地もシニア層よりもむしろ若い人が多かったこと。平日でも若いグループやカップルが目についた。そのためどこに行っても活気が感じられた。バブルを経験した世代と違い、若い世代は旅行経験が少ない場合が多いし、コロナによって止められていた、「旅をしたい」「美しいものを見たい」「日本のいろんな地域に行ってみたい」という素朴な好奇心をGoToトラベルは再び掘り起こし、旅のきっかけを作ってくれたのではないだろうか。

南禅寺にて。着物姿で歩く楽しそうな若い女性やカップルの姿が目についた。(筆者撮影)
南禅寺にて。着物姿で歩く楽しそうな若い女性やカップルの姿が目についた。(筆者撮影)

GoToトラベルのデータを地域活性に

しかしこれはあくまで筆者の限定的な体験からの感想であって、利用者データの公表が待たれるところだ。今回のGoToトラベルは、データ収集の機会としての効果も大きかったのでないだろうか。特に地域共通クーポンは、観光業だけでなく地域全体が関わっており、デジタルクーポンであれば属性と紐付けられるので、「旅行者がそこで何にお金を使ったか」の貴重な集計データが得られているはずだ。

「旅行」の在り方が大きく変わり、団体客から個人客が中心になった今、GoToトラベルは、その現状を知るための絶好のデータ収集の機会でもある。データをしっかり分析し、「どの年代の旅行者が何を求めてここに来ているのか」「この土地で人がお金を使いたい場所はどこか」を明確にすることで、国内需要中心のアフターコロナの観光戦略や地域活性の施策につなげていけるはずだ。

いずれにせよ、反対が多いからという理由だけでこのままやめてしまえば、これだけの経済効果を生み出したGoToが愚策であったかのようになってしまうのは残念だ。ぜひいったん効果検証をして公表し、そしてできれば制限的にでもいいので継続してほしいと思う。これから期待がかかるワーケーションの連泊需要も、宿泊の割引があれば弾みがつくのは間違いないからだ。