朝ドラ「エール」爆笑プロポーズ場面で話題の「薄皮饅頭」 社長が思わず男泣き

「エール」の時代背景 昭和初期の薄皮饅頭・柏屋本店(本名善兵衛氏提供)

■SNSで大ウケした「饅頭シーン」

高視聴率を続ける朝ドラ「エール」。29日はドラマの山場となるプロポーズのシーンが放映された。

主役の裕一と音、福島から裕一を追って上京した父・三郎、そして音の母・光子の4人がテーブルを囲んで話すシーン。

薬師丸ひろ子さん演じる光子が「裕一さんのお父さんが福島の名物の薄皮饅頭を持ってきてくれました」と饅頭を盛った皿を出すと、裕一がいきなり「音さんと結婚したい」と話を切り出し場が騒然となり、薬師丸ひろ子さんが唐沢寿明さんの口に饅頭を突っ込むなど、シリアスなはずなのに大爆笑の連続だった。

意外すぎる展開にTwitterでも大反響、「薄皮饅頭」がトレンドの第一位に。「今日は神回ですね!!唐沢さん面白すぎ!!嬉し泣き」「朝からこんなに笑い、気持ちが温かくなることはありませんでした」「唐沢さんと薬師丸さんに、最高に笑わせていただきました!!」など番組のTwitterにはたくさんのコメントが寄せられている。

この場面で重要な役割を担ったのが福島の銘菓「薄皮饅頭」。上記のドタバタのやりとりから、二人だけのプロポーズシーン、最後は音の亡き父の遺影に向かって二人が結婚の誓いをするところまで、ずっとテーブル上に出っぱなしだったのである。ひとつのお菓子が小道具として最高の使われ方をしたと言っても過言ではない。

福島に住む者としてはこのシーンは別の意味で感慨深かった。この薄皮饅頭を製造販売する柏屋は嘉永五年(1852年)創業の老舗。皮が薄くてあんこがたくさん入った薄皮饅頭は子供の頃から慣れ親しんだ味だ。地元の銘菓の代表格であり、福島土産の定番として愛され続けている。

製造元はどんな思いでこの回を見ていたのだろうか。放送後、株式会社柏屋の社長 本名善兵衛氏(五代目)に電話取材をした。

■「全く知らされていなかったので驚きました」

ー 朝ドラ「エール」の大事な場面で薄皮饅頭が使われていましたが、いつ頃からご存じでしたか。

本名氏:それが全く知らなかったんです。NHKさんからのお知らせはありませんでした。エールは毎日楽しみに見ているんですが、今日いきなり薄皮饅頭が出てきて本当にびっくりしました。しかも、こんな大事な場面で使っていただいて・・・。途中から涙が止まらなくなりました。

ー 知らなかったとは意外でした。ドラマは昭和初期のお話ですが、当時は薄皮饅頭はどこで買えたのですか。

本名氏:昭和初期ですと柏屋の店舗は郡山駅前にある本店のみでした。それと郡山駅のホームでも売っていました。当時は「駅売り」が中心だったんです。

昭和30年代の駅売りの様子(本名氏提供)
昭和30年代の駅売りの様子(本名氏提供)

ー ということは、三郎は福島市の呉服屋店主ですから、福島駅から東北線に乗って郡山駅のホームで買ったんでしょうか。

本名氏:そうだと思います。当時は駅での停車時間も長く、お弁当やお土産、酒などもよく売れていたようです。

ー 当時の薄皮饅頭はどんな包装だったのですか。

本名氏:現在の薄皮饅頭はビニールで個包装されてますが、当時はそれがなくて、箱の中で饅頭同士がくっついてしまうことがよくあったのだそうです。10個入りでもひとつの大きなお饅頭のようになってしまうことがあり、お客様は包丁で切り離して食べていたそうです。

昭和時代の薄皮饅頭(本名氏提供)
昭和時代の薄皮饅頭(本名氏提供)

ー では、三郎が豊橋に持っていった薄皮饅頭もそんな状態だった可能性がありますね。

本名氏:そうですね、まして長旅ですから、たぶんくっついていたと思います」

そんなことを想像すると、あの「饅頭を口に突っ込むシーン」もさらに可笑しくなってくる。

■柏屋社長が男泣きをした理由

柏屋本名善兵衛社長(2017年筆者撮影)
柏屋本名善兵衛社長(2017年筆者撮影)

福島から豊橋までは572.1 km。とても気軽に行ける距離ではなく、しかも今のように新幹線はなく鈍行列車。裕一も三郎も丸一日以上の時間がかかったはずだ。

長旅のはじまりの郡山駅のホーム。東北本線の列車の車窓を開けて、三郎がどんな思いで薄皮饅頭を買ったのか。ドラマではそのシーンはないが、そんなことを想像するとさらにぐっと胸にくるものがある。

最後に本名氏に今回の「薄皮饅頭ハプニング出演」の感想をいただいた。

「私は常々、お菓子の役割は人と人をつなぐこと、コミュニケーションを生み出すものだと思って仕事をさせていただいています。今回のエールでは、私どもの薄皮饅頭を、まさにそういう役割で、しかもこんな大事な場面で使っていただいて感動しています。本当にうれしいです」