朝ドラ「エール」感動シーンのロケ地は福島市の重要文化財「旧広瀬座」

国指定重要文化財「旧広瀬座」(福島市ロケツーリズム推進委員撮影)

NHK朝ドラ「エール」が面白い。

「エール」は福島市が生んだ大作曲家・古関裕而(こせき・ゆうじ)氏がモデルとなっている。古関氏は「オリンピックマーチ」「栄冠は君に輝く」「六甲おろし」などを作曲し、福島市の名誉市民第一号で、JR福島駅前にはピアノを弾く古関氏の像がある。

当然ながら「エール」は、地元の期待度が高く、初回の福島地区での視聴率が43.6%という高視聴率となった。古関氏は大作曲家ではあるけれど、作曲家そのものが歌手などと比べると地味な存在なので、いったいどんなドラマになるのだろうと少々不安だったのだが、「予想以上に面白い」「通勤の途中に車を停めて車内で見ている」「朝ドラを見るのが新しい日課になった」などの声を聞いている。

特に第三週の放送、主役の古山裕一(窪田正孝さん)が所属する「ハーモニカ倶楽部」の演奏会のシーンは「感動した」「大泣きした」という声が多数、SNSでも大いに盛り上がった。

音楽の道を志す裕一だったが、父親(唐沢寿明さん)が保証人になったことで家が傾き、跡取りがいない伯父の家に養子に行くことを決意した。子供の頃から目指した音楽の道を諦め、断腸の思いで自分が作曲した曲の指揮をとる。

地元が盛り上がった理由は内容だけではない。実はこのシーン、福島市民家園「旧広瀬座」で撮影が行われ、たくさんの市民が参加したのだ。

福島市の民家園の中にある明治期の芝居小屋「旧広瀬座」(著者撮影)
福島市の民家園の中にある明治期の芝居小屋「旧広瀬座」(著者撮影)

旧広瀬座は明治20年頃に伊達郡梁川町の広瀬川沿いに建てられた芝居小屋で、のちに映画館としても使われた。広瀬川のたび重なる氾濫で被害を受け、昭和61年の洪水のあと取り壊されることになったが、貴重な芝居小屋を残すため福島市の民家園に移築・復元された。

こういった芝居小屋は全国的にも数棟しか現存していないため、ロケ地として人気になっている。昨年は周防正行監督の映画「カツベン!」の舞台として使われた。

福島市ロケツーリズム推進会議

「エール」のロケは昨年10月に行われた。地元福島でエキストラが集められ、演奏会の観客役として出演。私の友人も多数参加し、放映当日は「映ってた!」という話題で盛り上がったのだ。

ロケに参加した福島市の西形吉和さん(会社経営)はこう語っている。

「こういったエキストラは初めてでしかも夜明け前から夕方まで長時間の撮影でしたが、衣装合わせの部屋で唐沢さんと一緒になったり、窪田さんの演技を間近で見ながら会場一体となって拍手をしているうちに、自分もドラマ制作に参加しているという実感を得ることが出来ました。放送を確認したら自分もちょっとだけ映っていたので、『朝ドラデビュー』できて嬉しいです。ただ、どんなシーンなのかを知らされていなかったので、窪田さんの指揮が終わったときに唐沢さんが号泣していた理由がわからなかったのですが、先日の放送でやっと全てがわかったところです。」

福島ロケは、窪田正孝さん、菊地桃子さん、唐沢寿明さん、森山直太朗さんなど福島側の主要キャストが揃い踏みで行われ、記者会見も予定されていたが、運悪く台風19号と重なってしまい会見は行われなかった。そのため福島市民は放送まで、民家園でロケが行われたことを知る人があまりいなかった。

福島市民家園は、ほかにも昔の民家がたくさんあり、裕一の子供時代の撮影も行われている。ロケではボランティアによる炊き出しが行われ、古関氏の大好物だった「紅葉漬け」のおにぎり、芋煮、福島のフルーツの盛り合わせなどがキャストやスタッフの皆さんに振る舞われた。ボランティアに参加した佐藤いく子さん(主婦)は「子役の皆さんがとにかくかわいかった。放送を毎日かぶりつきで見てます」とのこと。

民家園にある昭和期の養蚕農家(著者撮影)
民家園にある昭和期の養蚕農家(著者撮影)

新型コロナウイルスでオリンピックが延期になり、「エール」という言葉が宙に浮くのかと心配したのだが、図らずもみんなが「エール」を必要とする時代になってしまった。

ドラマはまもなく福島時代が終わり、舞台は東京に移るが、たくさんの名曲を生み出した音楽夫婦の物語に地元福島から変わらずエールを送り続けたい。