朝ドラ応援にフリーランス活用。台風19号、新型コロナ、五輪延期の「三重苦」福島市が起死回生のアイデア

7月のオリンピック開催に向け準備が進められていた福島市のあづま球場(筆者撮影)

■身動きがとれない観光業界が今やれることとは

3月25日夜、小池百合子都知事により東京が感染爆発の危機にあることが発表され、今週末の外出自粛が要請された。これまで他国に比べて圧倒的に感染数が少なかった日本も、いよいよ厳しい局面に入ることが予想される。

新型コロナではどの業界も深刻な影響を受けているが、特に打撃を受けているのが観光業界だ。海外客はシャットアウトされ絶望的、国内客も激減し、宿泊施設はキャンセルの嵐。大型連休を前に新規予約が入らない状態が続き悲鳴を上げている。小池知事の会見を受け、さらに厳しさが加速されると思われる。

終わりが見えないこの状況下ではひたすら収束する時を待つばかりだが、何もせず手をこまねいているわけにはいかない。「コロナ収束後」にすぐに行動し挽回できるよう準備をする以外に方法はないと、全国の観光地では個別の事業者はもちろん地域ぐるみで必死に対応策を練っている。

コロナの影響で困っているのは事業者ばかりではない。個人で活動するフリーランスも経済停滞の影響をモロに受けて仕事が激減し悲痛な声を上げている。

無利子無担保の10万円融資では、フリーランス・自営業者の悲鳴が鳴り止まない理由

そんな中、福島市は26日、木幡浩市長がユニークなプロジェクトを発表した。仕事が減っているフリーランスの専門家と、専門家の助けが必要な観光事業者をジョブマッチングさせ、土産品や観光サービスに磨きをかける施策である。

福島市は東日本大震災による長きに渡る風評被害に加えて昨年秋の台風19号では甚大な被害を受け、いまだに収束していない。そして今回の新型コロナウ イルスでは宿泊キャンセルだけでなく、毎年20万人が訪れる春の観光の目玉「花見山」も観光受入れ自粛に追い込まれた。追い打ちをかけるように、7月に市内で開催が予定されていた東京2020大会(野球・ソフトボール)の試合もオリンピック延期決定でなくなった。復興五輪ということで市民は2020オリンピックに大きな期待を寄せていたが、それも来年への持ち越しとなった。

■NHK朝ドラ「エール」関連商品づくりの助っ人を募集

まさに八方塞がりの福島市だが、ひとつだけ明るい希望がある。それは福島市出身の作曲家・古関裕而氏をモデルにしたNHK朝ドラ「エール」が3月30日に放送開始することだ。

窪田正孝さん演じる主人公「古山裕一」の生まれ故郷として福島市でロケが行われており、ドラマ開始とともに全国から注目を集めることになりそうだ。コロナ問題の収束後、再び観光モードが戻った時には「エール」を前面に出してPR攻勢をかけていきたいと観光関係者は望みをかける。

しかしここにはひとつ課題があった。関連商品の準備は朝ドラ決定後から行われていたが、広告予算や商品開発チームを持たない中小・零細事業者が多く、放送開始目前にもかかわらずまだまだ進んでいないのが現状。3月末時点での関連商品は観光協会への届出ベースで17件と決して多くはなく、先日行われたお披露目会では「もっとバラエティがあってもいいのではないか」と市民からも声が上がった。また、土産品だけでなく飲食店の特別メニューや宿泊プランなど、これを機に観光客への「おもてなし」の充実を行い、市の活性化につなげていきたいところ。それには訴求力のあるパッケージデザインを作れるデザイナーや、洗練されたメニューや宿泊プランを考えるコンサルタントなど専門家の助けが必要だ。

木幡市長はこう呼びかける。

「景況悪化でフリーランスの方々の仕事が急減しているニュースを知りました。普段は、地方にお越しいただけないような多忙で優秀なフリーランスの方々に、話題の朝ドラ『エール』で来訪されるたくさんのお客様をおもてなしする商品・サービスの開発・改良にご協力いただく仕組みを福島市観光コンベンション協会と共同でつくりました。商品やサービスの開発や改良を希望する事業者の皆様に、優秀なフリーランスを派遣して、完成まで導いていただきます」

■1人2案件、リモートワークも可能

福島市が用意した募集条件は、3泊4日を上限として市内の指定宿泊施設(温泉地を含む)に滞在してもらい、期間中に事業者からの仕事依頼を2案件受けていただく。帰宅後にリモートでのフォローも可能だ。報酬は10万円。3泊4日の宿泊費(朝食込)と交通費は往復3万円を上限に福島市が負担する。保育態勢も準備しているので小さいお子さんがいるシングルマザー、シングルファーザーも参加可能だ。業務場所に応じて、レンタサイクルやレンタカーを無料提供するなどきめ細かな対応を準備している。フォームから応募受け付けし、100名に達した時点で締め切り、審査の上20名程度を採択する。なお、フリーランスには副業者や小規模事業者も含まれる。

募集要項は以下の通り。

「ピンチをチャンスにプロジェクト」募集要項

プロジェクト運営を担当する福島市観光コンベンション協会の吉田秀政事務局長は、「ゆったりした仕事環境がある福島でリラックスしていただきながら、地元事業者に対してクリエイティブなご指導をお願いできる方にご応募いただきたいと思っています。もちろん、感染拡大防止を第一優先としますので、コロナウイルスによる外出制限で移動ができない場合、リモートのみの業務、あるいはリモートと組み合わせる形で業務を行っていただくなど、状況や案件に応じて臨機応変に対応していきたいと思っています」と語る。

■音楽を通して「エール」を送り続けた作曲家

福島市がこのプロジェクトの準備を進めているさなかにショッキングなニュースが流れた。「エール」に出演する志村けんさんがコロナに感染したというのだ。病状が大変心配されるところだが、実は「エール」の製作現場も、福島、そして今の日本を象徴するように受難続きだという。

試練続きの新NHK朝ドラ「エール」ネットもエール

古関裕而氏は「応援歌」が得意な作曲家だ。前回の東京五輪「オリンピックマーチ」をはじめ、高校野球のテーマ「栄冠は君に輝く」、阪神タイガース「六甲おろし」、早稲田大学の「紺碧の空」、慶応大学の「我ぞ覇者」など、戦争でのつらい体験を経たあとに音楽を通して国民にエールを送りつづけてきた。終わりの見えないウイルスとの戦いに誰もが心折れそうになる今、「エール」を送り送られることが何より心の励みになる。古関裕而氏とその活動を支え続けた金子夫人の物語は、いまの日本で待ち望まれているものだと思う。

最後に、福島市民として、震災後から福島を見つめてきたライターの一人として、朝ドラ「エール」をテレビで応援していただきながら、三重苦・福島市のパワーアップに協力いただける専門家の方にぜひ応募していただきたいと願っている。