天然か戦略か 次期ファーストレディ・メラニア夫人の今後のファッションに注目するべき理由

(写真:ロイター/アフロ)

先日オバマ大統領との会談のため次期米大統領ドナルド・トランプ氏がホワイトハウスを訪問しましたが、そこにメラニア夫人も同行しミシェル・オバマ現大統領夫人と会談を行いました。いつもは白や明るい色の服が多いメラニア夫人がこの日は黒ドレスに黒コートで現れたため「葬式みたい」とさっそく叩かれています。

Melania Trump Wore a Funereal Black Dress at the White House(メラニア・トランプ、ホワイトハウスで葬式ルック)

Twitterでは「これは全米に喪に服せということなのか」などとつぶやかれていますが、おそらくメラニア夫人にはそういったメッセージ性はなく、ホワイトハウスへの公式訪問ということでフォーマルかつおとなしめに見えるという理由で黒を選んだのだと思われます。

メラニア夫人といえば、トランプ氏の勝利演説のときの白のジャンプスーツが印象的でした。身長がありスタイルがよくなければ絶対に似合わない服を見事に着こなし、さすが元モデルという感じで際立っていましたが、これが次期大統領夫人としての公式の場に最適な服かというと、ほとんどの専門家はノーと言うのではないでしょうか。

ファッション評論家バネッサ・フリードマン氏のニューヨークタイムズ誌の寄稿によると、このジャンプスーツはラルフローレンのもので、「メラニア夫人がお店で自分で選んで買ったもの」ということです。

「お店で自分で選んで買う」のは当たり前だと思う方も多いと思いますが、政治家やセレブリティは、服選びはスタイリストやデザイナーと協働して戦略的につくっていくのが一般的で、まして印象が重要な選挙戦においてはファッションのブレーンがつくのは当たり前です。

たとえばヒラリー・クリントン氏が敗北宣言の時に着ていたパンツスーツは、襟とブラウスに紫を使っており、これは共和党(赤)と民主党(青)が「ともに歩む」を意味した色で、隣に立つビル・クリントン氏も同じ紫のネクタイをしていていました。デザインはラルフローレン。ラルフローレンはヒラリー・クリントン氏の今回のキャンペーンのブレーンとして選挙中のほとんどの衣装を担当しています。

ですから、夫の勝利宣言の日に、よりにもよってヒラリーと同じラルフローレンを選んだメラニア夫人は、意図的であれば「挑戦的、大胆」であり、もし意図的でなく、「自分に似合うしアメリカのブランドだから選んでみた」という程度の理由なら天然すぎると言われても仕方がないかもしれません。

ちなみに現職ファーストレディであるミシェル夫人はファッションをコミュニケーションツールと考え、常に場と立場と目的を考え、メッセージ性に富んだ非常に戦略的なスタイリングを行っています。

今回のメラニア夫人との会談で着ていたのはアメリカ人デザイナーのナルシソ ロドリゲスのドレス。ロドリゲスはキューバ移民の息子で、2008年のオバマ氏の勝利宣言のとき、つまり次期ファーストレディとして公に出た際にミシェル夫人が選んだデザイナーです。今回は紫(敗北宣言のときのヒラリーと同じ意味だと思われます)をベースに太陽をイメージする黄色とオレンジの直線的なラインが入ったデザイン。デザイナー選びも、ストーリーも、色も、デザインも、すべて考え尽くされた無言のメッセージになっているのは見事です。

夫人同士の会談 Chuck Kennedy / The White House
夫人同士の会談 Chuck Kennedy / The White House

こうして両夫人が並んでいると、服のバックグラウンドは知らなくてもミシェル夫人の存在感が際立ち、こだわりを感じない平凡な黒ドレスを選んだメラニア夫人の印象はぼんやりとしています。

今年8月にメラニア夫人が共和党全国大会で行ったスピーチが、ミシェル夫人が2008年に行った演説の一部とそっくりだと話題になりましたが、今後ファーストレディとして夫を支える役割を得たメラニア夫人がミシェル夫人を真似るべきはスピーチだけではないでしょう。

これまでメラニア夫人のファッションは、ヨーロッパのハイブランドを好んで着る典型的な「セレブ妻」のそれでした。おそらくスタイリストもおらず、着たいもの、似合うもの、そしてなにより夫の好みの服を着ていたのだと思われますが、これから公人として、メラニア夫人のファッションがどう変わっていくか、あるいは変わらないのかは注目したいところです。

アメリカのデザイナーの服をどれだけ着るのか、メッセージ性をどれだけ持たせるのか、はたまたこれまで通りの自由な服選びなのか。メラニア夫人が何を着るかは、トランプ政権の考え方やどんなブレーンがいるのかなどの現れでもあるからです。