紅葉や天体観測の名所として人気の高い福島県の吾妻山。すり鉢状の「吾妻小富士」などで有名な火山群です。

吾妻山はおととし12月から噴火警戒レベルが「2」となり、夜間規制が行われるようになりました。そのため吾妻山を通る観光道路「磐梯吾妻スカイライン」は通行量がピーク時の半分近くに落ち込み、近隣には多数の温泉宿がある観光地のため早期の規制解除が待たれていました。
そして気象庁は18日、吾妻山の噴火警戒レベルを「1」に引き下げたと発表。秋の観光シーズンまっただ中の朗報となりました。
噴火警戒レベルの引き下げに伴い、吾妻山の立ち入り規制が一部を除き解除された18日、地元の温泉旅館の関係者は「紅葉シーズンに朗報が届いた」と歓迎した。「県内外から観光客が戻ってほしい」と願い、東京電力福島第一原発事故後、風評の影響などで低調な状況が続く入り込みの復活に期待を寄せた。
この規制解除を待っていたかのように配信された福島県制作のPR動画が、タイミングも内容も「攻めている」と話題になり、地元のテレビニュースにも取り上げられ再生回数を伸ばしています。
動画は紅葉の「磐梯吾妻スカイライン」を白のランボルギーニが疾走。その様子をドローンで追っているもので、一瞬クルマのCMのように見せておいて実は観光道路のCMというギミックになっています。
企画したのは福島県YouTubeチームの20代のクリエイター。
「撮影にドローンを使うことは決まっていましたが、単に紅葉を上から映すのではなく、ドライバー、バイカー目線でスカイラインの走りを体感していただけるようなものということで考え、このアイデアが浮かびました。当初は一般的なスポーツカーの予定でしたが、運良くランボルギーニのオーナーが見つかり協力していただくことになりました」。
問題は撮影のタイミング。通行規制が近々解除されると噂されていましたが、もし解除されれば24時間クルマが通行することになり、「誰もいない道路」で爽快にスーパーカーを走らせることはもちろん、ドローン撮影そのものも難しくなります。
結果的に規制解除の1週間前というギリギリのタイミングでの撮影日が決定、夜間解除が終わる2時間前の朝5時にゲートを開けてもらい、誰も通らない道での撮影に入りました。天気にも恵まれ、さらに編集を1日で終わらせるというスピード感で「攻めのドローン動画」が完成しました。
筆者はこのYouTubeチャンネルチームのアドバイザーをしておりこの撮影に立ち会ったのですが、紅葉の上空を映すドローンのモニターを見て、その美しさに感嘆するばかりでした。ドローンが一般的になって久しく、いまや撮影の常識になっていますが、改めて、地域の魅力を伝えるツールとしてのドローンの威力を感じました。
たとえば、この写真は動画からの切り出しですが、ドライバーからは写真のように眼下に紅葉が広がっている様子を見ることはできず、ドローンだからこそ可能になった表現です。

ドローン撮影は、何を表現したいのかの明確な意図によって飛行ルートを決めたり、カメラの向きや露出調整、バッテリー交換のタイミングなど、細かい技術と知識が求められます。
一人でもできますが、理想的にはドローンを正確に動かせるオペレーターと、モニターを見ながら指示するディレクターの2名いると完成度の高い映像を撮ることができて事故も防げます。
今、農業用や配送など様々な分野に活用されているドローンですが、プロモーション動画での使用はいわば王道。ビデオカメラでは表現できなかったシーンで地域の魅力をどんどん伝えていきたいものです。