「ご当地PRビデオ戦国時代」に予算をかけずに成果を上げる動画とは?

福島県公式YouTube「秋の裏磐梯 紅葉の中でバレリーナが踊ってみた」より

シンクロナイズドスイミングチームが大分県の温泉で演技を披露する「シンフロ」や、宮崎県小林市を一躍有名にした「フランス語に聞こえる方言の動画」など、いま地域PR動画が注目を集めています。先日のTBS番組「白熱ライブ ビビッド」の特集では「ご当地PR動画戦国時代」という言葉が使われていました。またつい先日のMXテレビのニュースでは、地方だけでなく東京でも区による動画プロモーションが盛んに行われているという報道がありました。

銭湯、ダンス… 自治体が動画制作で地域PR(10/29 TOKYO MX)

「ご当地PR動画戦国時代」到来の背景

地域PR動画が多数作られるようになった背景には、地方創生や地域活性化の流れに加えて「スマホの普及」があります。若年層を中心にスマホで情報収集をすることが常識化し、SNSやニュースサイトに最適化したコンテンツにして情報を生活者に届けることが必要になってきました。観光情報も、従来の紙媒体に加えてSNSでシェアされることを意識したコンテンツを作る必要が出てきたのです。

各地域が本気を出してクオリティの高いコンテンツを出してくる状況では、何もしなければ埋もれてしまいます。「観光資源をいかに魅力あるコンテンツとして見せていくか」というテーマに取り組む自治体が今後増えていくのは間違いないでしょう。その観光コンテンツの主軸となるのが「動画」なのです。

私は昨年から福島県のPR動画に関わる事が多く、この4月からは公式YouTubeチャンネル制作チームのアドバイザーをさせていただいていることもあり、全国の地域PR動画はこまめにチェックをしています。各地の動画を見ていて思うのは、地域PR動画と一口に言っても、「自治体のどこの課が担当するか」あるいは「どういう予算で行うか」によって様々だということです。敏腕クリエイティブディレクターによるバイラルを狙った動画もあれば、広報課などで内製し通常予算内で作られる動画もあります。「シンフロ」などは細かいところまでこだわった素晴らしいPR動画ですが、そこまで予算をかけられないところが大多数でしょう。では、限られた予算の中で、たくさんの観光資源を等しくPRしていきたい自治体はどんな動画を企画していったらいいのでしょうか。その一つの例になるかもしれなのが、福島県広報課が企画する「踊ってみた」シリーズです。

福島県の持続可能な「ご当地ダンス動画」

東日本大震災からの復興を目指す福島県は、応援してくれる方々への報告や風評対策、県の魅力PRなどの目的で、震災の翌年(2012年)に公式YouTubeチャンネルを開始しました。これまで、県内で活躍する女性や若者のインタビュー、マスコットキャラクター「キビタン」関連、農産物の生産地レポート、相馬野馬追のドキュメンタリーなど様々なテーマの動画を制作してきました。本年度も県の広報課のもと2名の専属の制作スタッフが年間15本を目標に動画を企画、制作を予定しています。

本年度から新たに観光PRを目的とした「踊ってみた」シリーズが開始し、好評を博しています。これは、季節ごとに代表的な観光地でロケを行い、県内の様々なジャンルの若い踊り手が踊るダンス動画です。一昨年のAKB48「恋するフォーチュンクッキー」、昨年のファレル・ウィリアムス「HAPPY」のご当地版が大ブームになったように、ダンス動画はテンポよく気軽に見ることができるためYouTubeときわめて相性が良く、なおかつ地域色を出しやすいという特徴があります。あまり予算をかけなくても踊りがよければ十分見応えのあるコンテンツになりますし、音の録音の必要がないなど撮影スタッフも機材も最小限での制作が可能です。

現在福島県が配信している「踊ってみた」は3本。福島市の花の名所「花見山」で女子大生がボカロ曲で踊る「春編」いわき市の水族館で中学生ストリートダンサーが踊る「夏編」、そして先日、裏磐梯の紅葉をバックにバレエダンサーが優雅に踊る「秋編」が公開されました。

「水族館動画」はヤフートップに掲載、入館者数が前年比10倍に

「踊ってみた」に限らず、動画は切り口が面白いとメディアに取り上げられやすくなり、思わぬ大ヒットになることもあります。8月にリリースした夏編は、「制服を来た普通の中学生が水族館でいきなりキレキレのダンスを踊り出した」という意外性と、出演した中学生ユニット「Force Elements」がEXILE主催のコンテストで優勝したなどの話題もあり、「ヤフー映像トピックス」をはじめ多数のWebメディアに掲載されました。リリースして数週間後にはヤフートップを飾り、現在再生数は19万回を超しています。

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水族館で踊りだした中学生がスゴ過ぎた(ヤフー映像トピックス)

この動画の影響は数字にも表れました。ロケ地となったいわき市の水族館「アクアマリンふくしま」の今年のシルバーウィークの入館者数は、前年比10倍になったとのこと。もちろん、すべて動画の影響ではないと思いますが、たくさんの人の目に触れることで誘客にもつながる効果があると言えるでしょう。

「ご当地ダンス動画」はどう作っていくか

企画のすすめかたは、まず場所の雰囲気にあった季節とダンスのジャンルを選び、その道で頭角を現している若者を探して出演依頼をします。たとえば秋編は、福島県の代表的な紅葉スポットで知られる「裏磐梯」を選び、ダンスは芸術の秋らしくクラシックバレエに決定、ダンサーは実績のあるバレエ教室に協力を依頼し、推薦してもらう形をとりました。

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今回は初めてストーリー仕立てにし「13歳の少女が夢の中で美しい紅葉の中バレリーナになる夢を見る」という内容で、折々に裏磐梯の紅葉シーンを入れる構成。最後は撮影地の解説を加え、興味を持ってくれた方に情報を提供しています。また、動画では伝えきれない情報は制作チームのブログ記事で補完しています。秋編はまだ公開されたばかりですが、すでに「うっとりします」「裏磐梯に行ってみたくなりました」など多くのポジティブな感想が寄せられています。

美しい景色を映しただけでは冗長になりがちですが、そこにダンスという動的要素を加えることで、「エンターテインメント」となり、見ている人により興味を持ってもらえます。どの観光地とどういうダンスを組み合わせるか、そのバリエーションは無限にあり、「ネタ」は尽きることがありません。

ご当地ダンス動画に興味のある方は、まずは地元にどんな人材がいるのか、日頃から地元誌や口コミなどを使って情報を集めておくことをおすすめします。