おもてなし?クールジャパン?海外観光客が日本に求めるのは本当にそこなのか。

会津鶴ヶ城(Dave Powell氏撮影)

東洋経済オンラインのこの記事が、昨日からネットで大きな反響を読んでいる。

身勝手な日本人が、日本の国宝をダメにする 漆塗り老舗を率いる英国人社長が見た真実

国宝や重要文化財の修復を手がける小西美術工藝社社長、デービッド・アナキンソン氏のインタビュー記事だ。370年の歴史を持つ老舗の経営改革を進めるアナキンソン氏は元ゴールドマン・サックスのアナリスト。裏千家で茶名を持つほどの日本文化通で近著に『イギリス人アナリスト 日本の国宝を守る』 がある。

昨年から流行語になっている「おもてなし」が実は日本人の自己満足ではないかと疑問を投げかけ、訪日客が増加したことに関しても「ビザを緩和して1000万人を超えたという数字に意味はない」など、観光立国を目指しながらも現状はほど遠いと指摘している。

最近では例の「おもてなし」です。日本では財布を落としてもほぼ確実に戻ってくるってよくいうでしょ。でも警視庁の数字では、現金では届け出があった額の40%にすぎない。

日本の鉄道は定刻運行、犯罪も少ないなどと自慢しますが、それは単なる住民目線でいいだけで、それがおもてなし? それを確かめるためにわざわざ外国から観光に来たりしないでしょ。本当に観光立国を目指すなら、住民目線で見た日本のよさと、観光の魅力とを結び付けるのは違う。

実に的を得た内容にツイート数2500、Facebookのいいねは1万に届く勢い。私も自分のFacebookで紹介したところあわせて100件以上もシェアされた。そのほとんどが「耳が痛いけどその通り」といった反応。

テレビでもネットでも書籍でも、最近は「日本すごい」がテーマの自画自賛コンテンツが急増し、人気を得ている。隣国との比較によるものも多い。

自分の国を愛し誇りを持つことはとても大事だけれど、身内で褒め合ってばかりいていいのだろうか。日本から遠く離れた国、たとえばヨーロッパの人から見て、日本という国は本当に大枚の旅費をはたいて出かけていくほどの魅力があるのだろうか。

そこに疑問を持つ人が多いからこそ、この記事がたくさん読まれたのだろう。

調べてみたら、日経ビジネスオンラインでもアトキンソン氏の同様のインタービュー記事があって、こちらは観光地としての日本のポテンシャルにさらに踏み込んでいて参考になった。

お・も・て・な・しは日本人の自己満足か 日本の観光産業はGDP38兆円分の成長余地がある

記事によると、現在、日本のGDPに対して観光業が占める割合はわずか2%。国連のデータによる世界の平均は9%と比べてかなり低く、これが平均なみに成長するだけで、なんと毎年38兆円にもなるという。

想像を超えたポテンシャルだが、現状は海外からの観光客が求める建物や文化財など歴史ある観光資源の修復整備が立ち後れ、英語による案内や解説も不十分。

よく「クールジャパン」でアニメやマンガなどを挙げますが、観光=ポップカルチャーでも、文化財でもない。アニメ、和食、歴史、自然と多様な選択肢がそろって、初めて観光立国は成り立ちます。2000年の歴史がある国で感動したのが自販機、コンビニ、アニメ、それだけ? 日本の魅力ってこの程度? って思う。見てると悲しくなるんですよ。

出典:http://toyokeizai.net/articles/-/55068?page=2

そう、アピールするところがズレている。例えれば、老舗の料亭に懐石を食べに来た客に、人気ですからとB級グルメをおすすめしたあげく、うちは仲居の対応がいいでしょう~自慢なんですと言っているようなものかもしれない。

「一部には、地元の取り組みで訪日客を大きく増やした地域もあります」との問いに対してアトキンソン氏は、

お言葉ですが、大きく増やしたといっても大したことないですよ。例えばフランスは、自国の人口以上の観光客が毎年来ます。先日、高野山にフランス人がいっぱい来ているという報道がありましたが、では実際に何人来ているでしょうか。京都は世界一の観光スポットだと言われるけど、なぜ年間200万人しか来ないのか。あれほどの文化財を有しているのに、大英博物館に来る外国人の数の半分にもならないですよね。

出典:http://business.nikkeibp.co.jp/article/interview/20141021/272867/?P=6

さて、福島に住み、「地方からの情報発信」をテーマに福島の魅力を伝える動画を作っている私にとって、アトキンソン氏の指摘は実感として日々感じている。

11月、私は東京在住のフォトグラファー、デービッド・パウエル氏を福島に招き、福島の魅力を撮ってもらう「Shoot Fukushima」というプロジェクトを行った。海外目線で見た福島の魅力を広く世界に発信したいという私の投げかけに、ソーシャルメディアで大きな影響力を持つデイブが全面協力してくれたのだ。

この記事のトップ写真はデイブ撮影による会津鶴ヶ城。ほかにも多数のすばらしい写真を撮ってもらい、ブログ記事にまとめてくれたのでぜひ見て欲しい。

Shoot Fukushima

飯盛山の白虎隊の像
飯盛山の白虎隊の像
喜多方の酒蔵で水を汲む人
喜多方の酒蔵で水を汲む人

特に飯盛山は、歴史を知らなければ単なる墓があるだけの地味な場所だ。現地にちゃんとした英語の表記があればと思ったが何もない。大河ドラマ「八重の桜」で最近有名になった場所だが、それでも外国人対応は全くなされていない。

そこで私のつたない英語の解説で、デイブに戊辰戦争で自死した少年戦士の悲劇を伝えた。つたないなりにも歴史を伝えたおかげで、銅像の意味、そして墓の意味を感じてくれたと思う。

特にこの写真は、ただ墓を写しただけだが、非業の死を遂げた少年たちのストーリーを感じることができて私は感動した。

画像

デイブのブログ記事「The White Ttiger Corps(白虎隊)」にも白虎隊の歴史について触れてくれている。

再びアトキンソン氏の記事の引用。

観光立国するなら発想の転換が必要ですよね。京都に来た外国人観光客の不満は「英語が通じない」の次が「解説がなく何を見ているのかわからない」。そうした表記や街のゴミ箱、道標、食事場所やトイレの整備などに配慮し、楽しく過ごしておカネを落としてもらって初めて観光立国。ビザを緩和して1000万人を超えたという数字に意味はない。

出典:http://toyokeizai.net/articles/-/55068?page=2

歴史的な文化財があるのは何も京都だけではない。日本全国に山のようにある。そう、地方にこそ素晴らしい宝が眠っている。それこそが外国人にとって足を運ぶ理由であり、現地にとっては観光誘致のための資産でもあるのだが、今の現状ではその存在に気づかないまま、あるいは軽視したまま、英語での解説を加えることもなく放置されているのである。

2020年に2000万人の海外からの訪問客誘致。その目標に向けて、行政や観光業に関わる方には一刻も早くアトキンソン氏の指摘に対して行動を起こしてもらいたいと思う。