YouTubeによる地域発信の挑戦~「サムライガール 相馬野馬追」公開

相馬野馬追のみどころ「甲冑競馬」

ファレル・ウィリアムズの「HAPPY」福島バージョンをYouTubeに投稿したのが6月2日だから、もう4ヶ月以上になる。

あれから日本全国でご当地HAPPYが盛んに作られるようになったが、さすがに一巡した感がある。

HAPPYの流行は終わりが来てしまったが、動画そのものに関してはこれからが本番だ。HAPPYブームの副産物は、「動画による情報発信」の有効性に気づいた自治体が確実に増えたこと。

これは、とてもよいことだと思う。YouTube動画は地域振興や観光PRのための情報発信ツールとして、実に適しているからだ。

動画は、視覚と聴覚に訴えるので共感されやすいし、YouTubeは世界につながっているから国内外に向けて一度に発信できる。

さらに旅行者の情報収集の主流になりつつあるモバイル機器との親和性も高い。自治体に限らず地域振興を考える人はどんどん使うべきだろう。

私自身、動画で何を伝えていくか試行錯誤を続けてきたが、たまたまHAPPYが多くの人の注目を集め、福島の風評払拭への手応えを感じたこともあり、いま、地域振興×YouTube動画をひとつのテーマとして取り組んでいる。

HAPPYにつづく福島の魅力発信のテーマは、相馬地方に1000年伝わる伝統行事「相馬野馬追(そうまのまおい)」。

HAPPYは自主制作だったが、今回は福島県の観光交流課より依頼を受け、海外向けPR動画として制作することとなった。

野馬追は、鎧兜を着た武者たちが、馬に乗って行列や競馬、旗の争奪戦を行う荒々しくも神聖な祭りである。

武者たちは自宅から行列をして競馬などが行われる雲雀ヶ原祭場に入る
武者たちは自宅から行列をして競馬などが行われる雲雀ヶ原祭場に入る

国の重要無形民族文化財に指定されただけあり、まるで戦国時代にタイムトリップしたかのような迫力シーンが繰り広げられる、ほかに類を見ないスペクタクルな祭りなのである。

ご存じのようにこの地域は、地震、大津波、そして原発事故のトリプルパンチの大災害を被った場所だ。

津波で家を流されたり、亡くなった人もあった。馬が流されたり、放射線で避難を余儀なくされた人も大勢いる。野馬追の継続は難を極めた。

しかし人々の多大な努力により、縮小規模ではあるけれど震災4ヶ月後の2011年ですら開催し、伝統を守り抜いている。

相馬市の立谷市長は、「大津波は400年前にも来ている。今回は原発が加わったが、それごときで1000年続く野馬追をやめるわけにはいかない」と言い切った。

津波ですべて流されてしまった沿岸部。水田に見える緑の部分は草だけで何もない。
津波ですべて流されてしまった沿岸部。水田に見える緑の部分は草だけで何もない。

取材で何度か相馬を訪れ、様々な方とお話を聞いたが、

これほどひどい目に遭いながらも、みな普通に、淡々と生活していることに驚く。

そして野馬追の開催、出陣に関しては、妥協せず従前通りに行っているのだ。

震災が。。。放射線が。。。といった愚痴のようなものを聞いたことは一度もなかった。

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相馬の人たちの強さに私は驚いた。

ここで生まれ、ここで生きると決めた人たち。

そして野馬追を続けていくという責任を負っていると感じた。

カッコいい、さすがサムライだと思った。

これこそ世界に伝えるべきことだ。

しかし、ここで疑問があった。

これほどすごい祭りが青森ねぶたや仙台七夕よりも知られていないのはなぜか。

決してこれまで発信をしていないわけではなく、記録DVD、参加者が撮った動画、テレビ番組など、野馬追を描いた映像はたくさんあるにもかかわらずである。

もしかしたら、野馬追はそのまま伝えたら重々しすぎて、知らない人にとっては他人事のようになってしまうのからではないか。共感を得られなければ特にYouTubeでは見てもらえない。伝え方の工夫がいるのではないだろうか。

そこで、記録動画でも解説動画でもなく、視点を変えてストーリーを織り交ぜて描くことにした。

最初で最後の野馬追参加となる19歳の女性エミヤさん(野馬追は女性は19歳までしか参加できない)と、コーチ役の前田さんの協力をいただき、野馬追前日から撮影を行った。

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追加撮影が台風で順延になったり、音楽選びで難航するなどハプニングが多々あった。

当初は海外向けにと思って英語の曲を使っていたが、歌詞の軽さと映像が合わず断念。地元福島のソウル歌手「Shimva(シンバ)」の「リチャレンジ」という曲を採用した。結果的にこれがピタリとはまった。日本語の歌のほうが外国人の受けもよかったのは意外だった。

動画が完成したのは10月6日。その日は、南相馬市で常磐道開通に向けての会議があり、私はそこで情報発信のテーマで講演をした。

観光関係者の方、一般の方を前に、出来たてほやほや、YouTubeに上げたばかりの動画をお披露目することができた。

沿線一体で情報発信 常磐道全線開通前に南相馬で交流会議(福島民報)

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20141007-00000036-fminpo-l07

奇しくも野馬追の町でこの動画が初披露となったのは何かご縁を感じる。

まだYouTubeにアップして1日しかたっていないが、もうすでに、たくさんの反響をいただいている。

武者たちがカッコいい!迫力!という感想が一番多い。その部分にはこだわったのでうれしい。

海外からも、「ゴージャス!」「美しい」「日本人のプライドとスピリッツを見せてくれる動画」などのコメントが。伝えたいことが伝わっていて本当によかった。

そしてうれしいのは、地元相馬のみなさんの応援。

外から見れば同じ福島の人かもしれないが、野馬追に関してはあくまで部外者の私としては、地元のみなさんの賛同を得られてほっとしている。

南相馬市小高区(避難地域であり、騎馬武者が多い町)出身のHさんからのメッセージ

サムライガール、涙が止まりませんでした。後から後から。

自分のルーツがあの土地であることを

誇りに思いました。

あらためて、お礼申し上げます。

素晴らしい野馬追を、ありがとうございました。

動画リンク:

Samurai Girl ~ One Girl's Story of becoming a Samurai(サムライガール~相馬野馬追)

お祭り、特産物、名所旧跡など、地域の魅力を動画で表現し、YouTubeで広く伝えていきたい人はこれから増えてくるだろう。

経験上思うのは、動画を直接の宣伝ツールと思わないことだ。誘客とか送客とかあまり欲張らず、良さをただ「伝える」ことに徹するほうがうまくいくと思う。まずは存在を知ってもらうことがYouTubeの役割なのだ。

とはいっても、伝えるという単純なことは意外に難しい。音楽選びひとつで違ったメッセージになったりもする。

でも「表現する」ことは楽しいし、動画を作ることで地元のみなさんが喜んでくれることも地域活性という点で大きな意義があることだと思う。

※動画を良いと思ったら、ぜひシェアしていただけるとうれしいです。