20年前、私たちが言論NPOを立ち上げたのは、「言論の力」で、当時の閉塞した状況を変え、この国の民主主義を強く、機能させるためだった。

その当時のことは、鮮明に覚えている。日本は多くの課題を先送りし、未来が全く見えない状況だった。

その時に、私たちが呼びかけたのは「私たちが強くなれば未来は変えられる」である。

多くの人が当事者として、課題に向かって議論し、その解決のために取り組む。その覚悟を固め、少しの勇気を出し、行動することでしか、閉塞した日本の状況を立て直すことは困難だと考えた。

それから、20年。私たち言論NPOは人生で言えば成人になるが、その節目で設立時の訴えを逆にして再び、こう提起したい。「私たちが強くならなければ未来は変わらない」である。

つまり、私たちが強くならなくては、世界の歴史的な変化の中で、日本は未来を描けない、そんな切羽詰まった状況に今があるということである。

この20周年、私たちが活動の原点に戻って、当事者としての覚悟を固め直そうと考えたのは、私たちが守るべき世界の自由が不安定化し、世界の多くの国で民主主義が後退し始めているからだ。

この日本でも、民主的な統治が後退し、政治への不信が市民層の中で構造化している。

私たちが突き付けられたのは、こうした世界の歴史的な変化や、日本の民主的な仕組みの信頼の修復に本気で立ち向かうことである。つまり、世界や日本の自由と民主主義の現状が、私たちに設立の意義を問うている。

私がこの20周年に、これまでにない覚悟を持って臨んでいるのはそのためである。

世界の中で自由と民主主義の価値を守り、その影響力を高める方法はたった一つしかない。

世界には様々な異なる政治制度がある。これまでの世界も、政治システムの違いを乗り越えてグローバル経済の運営や平和を管理してきた。

しかし、米中対立が深刻化する現在、価値観が異なる二つの大国の対立が世界の経済や技術、安全保障に及んでいる。この対立がこのまま続くのであれば、世界の分断が現実的なものになる可能性は極めて高い。

この状況下で、私たちが貫くべき立ち位置は二つである。

一つは、私たちが直面する、国境を越えた課題は世界の協力でしか、解決を描くことができないということにある。

地球はすでに狭くなり、多くの困難や利益で世界が繋がっている。感染症や気候変動などの地球規模の脅威は、米中も含めてどの国にも影響を及ぼしている。

私たちに問われるのは、世界の分断のこれ以上の悪化はなんとしても食い止め、世界の協力発展に向けて努力することである。

問題は、その力がこの日本に残っているのか、なのである。

もう一つ、私たちが覚悟すべきは、米中という二つの大国の対立や競争は今後、かなり長期化するということである。

長期にわたって続く対立の局面で私たちが、自由と民主主義の価値を守り、世界の中でその影響力を高める方法はたった一つしかない。

それは、それぞれの国で民主主義を修復し、民主主義の有用性と市民の信頼を高めることにある。

ここで理解すべきことは、民主主義の有用性である。

米国のバイデン大統領は、21世紀は民主主義の有用性と専制主義の戦いだと言っている。この有用性とは、人々にとって役に立つということである。人の役に立たない民主主義は信頼を失うだろう。もし、民主主義が市民に信頼されず、人権が尊重される国でなければ、どうしてその価値を世界で守れるのか。

つまり、専制主義に勝つためには西側が結束するだけではなく、それぞれの国で民主主義が強く機能しなくてはならない。

つまり、我々の強みをより強化することに私たちは集中すべき今がその局面なのである。

私たちに今、問われているのは、この国の民主主義と将来のために、声を上げることである。

私たちが民主主義で目指すのは、自己決定できる自由と責任を持つ社会である。そうした社会を守り抜くためにも、私たちは市民として強くならなければならない。

民主主義の困難は、異なる政治制度の国の台頭だけにあるのではない。技術の進展もデジタル社会への急速な展開も、民主主義の構造を揺さぶっている。個人情報の奪い合いの中で人権の問題がなおざりにされ、AIの急激な発展は人間の判断を奪い始めている。

管理されない自由な社会が、管理する社会に課題解決で優位に立つためには、多くの市民が当事者として課題解決の意志を持つしかないのである。

民主主義の未来で、私たちが強く意識しているのは言論空間の在り方である。

世界では、インターネットやSNSの発達で個人攻撃やフェイクニュースが溢れ、権威主義的なリーダーがそれを多用し、民主主義を攻撃し、多くのリーダーが落選に追い込まれている。

この問題では、世界の多くの政治リーダーと話し合ったことがある。私の友人でフィリピンの前上院議員、バム・アキノ氏が言った、言葉が私の新しい覚悟となった。

「SNS上の暴力的な表現を怖れて黙ることはない。課題を考え、感じていることで声を上げるべきだ。民主主義に多くの人が参加できるように議論の基盤を広げることが、言論NPOの課題だと思う」

私たちのこの20年間で行ったマニフェスト評価の取り組みや、北東アジアの平和のための日中対話を始めとする「民間外交」、世界の自由と協力のために世界と始めたシンクタンクとの協力も、民間として、課題に挑む取り組みである。

だが、私たちに今、問われているのは、この国の民主主義と将来のために、声を上げることなのである。

私たちが、この20周年に向けて「知見武装」を呼び掛けたのは、世界や日本のこの歴史的な変化や課題を、自分で考える力を鍛えるためである。そのために、世界の課題や民主主義の将来で多くの議論を始めている。

私たちが強くなれば未来を変えることができる。私たちは一度もぶれずに、そのための取組みを行っている。

20周年後のこれからも言論NPOは、私たちにとって何が大切で、何にために力を合わせるべきか、それを再確認できる議論の舞台であり続けるつもりである。

今年10月末、私たちは世界でも初めての本格的な中国との対話を行ったが、その際に、私は共同宣言に次のような一文を入れ込んだ。

「歴史的な困難な広がる中で、民間の取り組みが勢いを失うことは致命的である」

これが、20周年を迎えた私の覚悟である。

⇒20周年を迎える言論NPOの代表・工藤に聞く5つの質問①②