【対談】「今回の選挙で各党は日本の課題にどう向かい合っているか」福山哲郎氏(立憲民主党幹事長)2/2

第一部で、福山氏の公約の説明を踏まえつつ、立憲民主党の公約に代表の工藤泰志が切り込みます。同時に、言論NPOの評価にかかわっていただいている湯元健治氏(日本総研副理事長)、小黒一正氏(法政大学経済学部教授)にも加わっていただき、立憲民主党の公約を掘り下げてみたいと思います。

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工藤:どうもありがとうございました。では、ちょっと厳しい言い方にもなるのですが、評価の視点から質問させてもらいます。我々は2004年からマニフェスト評価をやっています。確かに立憲民主党の結党の経緯とか目的は非常に納得できるところがあるのですが、評価体系から見ると、マニフェスト自体は非常に抽象的で具体性がない。つまり評価がなかなか難しい状況になっているわけです。結党して時間がないからということであれば、いずれそれを具体化したものをどこかで発表しなければいけないだろうし、それとも、きちんと考えていない状況の中で何かを集めただけだということも言えると思うのですが、このマニフェストの作り方はどういうことなのでしょうか。

福山:具体的な政策の項目は、民進党時代も含めて、かなりいくつか準備ができています。それを出すことも必要だと思ったのですが、今回はそれよりも政策理念、党の考え方としてどういうことを具体的にやっていきたいのか。今、具体的なものがないというご指摘がありましたが、実は、かなり細かい項目では具体的なものが入っています。私は他党のことを批判する気は全くありませんが、自民党の政権公約を拝見しますと、具体的なことは確かにたくさんあります。IoT(モノのインターネット化)とか生産性を上げるとかありますが、あれは分かりやすく言えば概算要求の予算項目が並んでいるだけで、私も予算をつくってきた経験がありますので、予算要求の項目を並べるのが具体策だといわれると、若干、違和感があります。別に「出せ」と言われると出さないわけではないのですが、そのことよりも今回の選挙の争点、そして国民が求めていることからすると、こういうかたちで、国民に自分たちの政策理念、立ち位置をはっきりさせる方が、この選挙においては優先だと考えました。

「個人の生活」を守るための課題である人口減少への対応は

工藤:立ち位置の問題なのですが、立憲民主党というものを考えたときに、例えば個人の自由とか、少数者であっても権利を守るとか、差別や個人の生活の改善といったものを位置づけているのは、立憲民主党の性質に合っていると分かるわけです。しかし、個人の生活を考えるならば、一番皆が気にしているのは、人口減少・高齢化・団塊世代が後期高齢者になる2025年問題があり、課題が目前に迫っていて悩んでいるということです。それから、経済がどうなっていくのだろうという話があります。そういうマクロ的な問題に政策で触れていないというのは、それよりも党としての立ち位置をはっきりさせることを優先させたという理解なのでしょうか。

福山:冒頭申し上げた「生活の現場から、暮らしを立て直す」という項目は、まさに国民の生活に根差した問題に対して、可処分所得を上げていこうというものです。我々が政権のときにやらせていただいた子ども手当や高校無償化、いつの間にか各党が言い出しましたが、当時は「バラマキだ」と散々批判されました。まず、国民の皆さんの生活の中に安心を持っていただかなければ消費につながらない。マクロで言えば、消費はGDPの6割を占めるわけですが、その消費がアベノミクスで全く改善してこなかった中で、我々はこのことを言っています。

 ここに書いてあります「全ての子どもの育ちを支援します」というのは、我々が政権で子ども手当や高校無償化を実現したとき、若干、出生率の下げが止まったのです。実は自殺者も、10年以上ずっと3万人台が続いていたのが、我々が政権のときに初めて3万人を切って2万7000人になって、そこから先は2万人台前半になり、ある意味では自殺する方々が減っているのです。つまり、そういった中で、我々はまず経済の下支えをしなければいけない。

異次元緩和の出口戦略を示さない政権与党は無責任

 それから、マクロ経済の話でいえば、別に他党を批判するつもりはありませんが、「アベノミクスを加速する」というくだりが今回も自民党の公約にあるわけですけれど、日銀ですら異次元緩和がこれ以上にっちもさっちもいかない状況なのに、これ以上の緩和をするのか。これ以上GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)で株価を維持するということがアベノミクスの加速なのか。現実問題として物価上昇率目標は達成しなかった。あれだけ「輸出の総量が上がる」と言っていたのに、上がらなかった。マクロ経済の目標も私は大切だと思いますが、それよりも、今の異次元緩和や日銀のやってきたことに対し、それを補完するために、結果としては伝統的な財政政策もやってきた。このことに対する出口戦略を示せない方が、政権与党としてよほど無責任だと思っています。この出口戦略は非常に難しいと思います。急激に量的緩和を引き締めるということになると、国民生活が痛みます。まさに国民生活とコミュニケーション、対話をしながら出口戦略を考えなければいけない。アメリカはそういったかたちで、「(緩和を)やるぞ、やるぞ」と言いながら、実はうまく見ながら、徐々に金利が上がる状況をつくろうとしています。日本は出口戦略が今のところ全く見えません。

 その中で、今、野党で、ましてや78人しか候補者がいない我々が出口戦略を言っても、それは国民生活を直接痛めつけることになります。我々が政権を取っても、出口戦略はそう簡単ではないと思います。そのことを示さないこと自体が、今の政権与党としては非常に無責任だと考えています。

工藤:今の話は非常に納得できるところがあるし、マクロ経済運営についてある程度見識を持っていることは分かりますが、マニフェストにそういう話が入っていないということは、そういうことを国民にいま説明しなくてもいいという判断をしているわけですか。

福山:説明しなくてもいいとは思いません。そこは問題意識として非常にありますが、では、今、この量的緩和、「異次元緩和」という言葉はいいですが、分かりやすく言えば異常な緩和です。このことの出口をどのようにつくっていくのかというのは、野党がスローガン的に「こうやればいいんだ」という簡単な話ではありません。まず国民生活の中で安心を持っていただいて、その中で経済が安定的に回るようにしていく。私は「GDP600兆円」というスローガンも「本当にどうかな」「そういう時代ではない」と思いますが、その中で国民と対話をしながら進めていくというのが、経済の運営の仕方だと思います。

今は消費増税の時期ではない。

  将来の増税時は国民との対話の仕方を改め、まず使い道の信頼を得る

工藤:あと、消費税の問題です。立憲民主党は、一応消費税を上げる方向はあるのだけれど、今はその時期ではない、という判断に見えます。ただ、ここで一つ聞かなければいけないのは、三党合意の問題です。あれは民主党政権のときですよね。立憲主義というのであれば、国民の民意を問いながら法律をつくり、今もその法律は残っています。それに関しては、景気弾力条項の問題はあるかもしれませんが、今のタイミングではないと判断されているものと、法律で決まっていることとの間に齟齬はないでしょうか。これはもう反故にしていいという判断なのでしょうか。

福山:私は、そもそも三党合意は安倍政権がつぶしたと思っています。二度にわたって消費税を上げることを延期したのは安倍政権です。安倍総理は、三党合意の相手方である当時の民主党に何ら説明したわけではありません。そして今回、自民党の政権公約は「消費税の使い方を変える」と言ったわけですから、三党合意などどこに行ったのかという話です。「三党合意、三党合意」とよく言われますが、向こうは勝手に引き延ばしたし、中身は変えると言っているわけです。さらに言えば、国民生活と対話をすることは重要だと思います。これは、消費税を上げないための議論だという批判は覚悟のうえで言えば、森友学園問題で追及されていた佐川理財局長が国税庁長官になるわけです。国民からすれば、今この状況で「税を上げてください」と言っても、どう考えても国民の理解を得られないし、国民生活それぞれを見れば、これだけ分断が進んでいて、年収300万円の方が圧倒的に増えていて中間層が激減している中で、消費税を上げる環境にはないと思います。

工藤:それは、経済的な要素だけでなく、人的な信任の問題なども絡んでいるという話なのかもしれません。しかし、ではいつになったら上げられるのか。そして、財政再建の問題がマニフェストに全く書いていないのですが、これについての問題意識はそれほど強くないということなのでしょうか。

福山:現状では、まず国民生活を豊かにする、安定させる、安心を持っていただく、ということが優先だと思います。財政再建は否定はしません。しかしながら、今の状況ではその時期ではないと思います。一方で、消費税をいつ上げるのか。私たちは財源の議論から逃げる気はありません。しかし、社会保障・教育分野への財源は、全てが消費税とは限りません。先ほど申し上げたように、所得税や相続税や金融資産課税も含めて、日本の人口構造が変わり、それから経済の状況が構造的に変わっている中で、本当に経済成長型の税構造がそのままでいいのかという議論は必要だと思います。その議論を含めて、我々は財源の議論から逃げるつもりはありません。

 将来的には消費税を上げざるを得ないと思いますが、そのときには必ず国民に「このサービスがあるから消費税を上げさせてください」、もしくはサービスを経験していただいて、「このためには財源が必要です」と言う。今までの国民との対話の仕方を逆にしていかなければいけない。国が上から「税を上げるよ、サービスはこれだよ」と言ってもそのサービス通りにならなかったり、消費税が何に使われているのか分からなかったり、消費税を上げたけれど国民の生活は全く豊かになっていなかったり、という、不信感の中で税を上げる議論はもう国民には通用しないのではないかと思います。

原発ゼロへの工程表は、政権を取ればただちに作成する

工藤:立憲民主党は原発ゼロについてもかなり強く打ち出しています。他の政党もこういうかたちで打ち出していて、基本的に同じことを聞くのですが、いつまでにそれを実現したいのか、工程はあるのか。そして、その時に目指しているエネルギーミックスのイメージは、原発がない場合どのように考えているのでしょうか。

福山:原発ゼロの年次ですが、安倍政権が原発をベースロード電源にしているということは、安倍政権が続く限り原発は稼働し続けるわけです。ベースロードですから20数%でずっと維持するということは、動き続けるわけです。我々が政権を担わせていただき、その時点で、経産省も原子力規制委員会も、立地自治体の状況も含めて、ロードマップをつくらなければいけません。「何年にゼロ」ではありません。我々が責任を持った立場になれば、1日も早く、原発ゼロというのは稼働ゼロですが、稼働ゼロにしていきたいと考えています。

工藤:そのときの電源構成はどういうかたちなのですか。

福山:基本的には石化燃料も3割くらいは必要です。LNG(液化天然ガス)を中心にしなければいけないと思いますし、再生可能エネルギーも3~4割に構成していかなければいけない。いろいろなものの組み合わせの中で、最も重要なのは、省エネと、ライフスタイルを変えていくということと、それぞれの地域での電源をちゃんと融通できるということが、構造的には必要だと思います。今年、既に九州全体では、再生可能エネルギーだけで電力需給ができるようになったのです。そのくらい、再生可能エネルギーの可能性は広がっているので、そういったものを組み合わせてロードマップをつくっていきたいと思います。

工藤:急増する社会保障関連費をどう負担するか、という大きな問題が将来あるのですが、今、全世代型社会保障という考えが出ています。つまり、現役世代も、引退する世代も、そして将来世代も保障の対象にするということです。立憲民主党はその全てを守るのでしょうか。全てを守るのか、それとも「こういうところに特化したい」というのがあるのか。それについてはどういうかたちでしょうか。

福山:「全世代型社会保障」は我々が言い出しているのです。我々が政権のときに初めて消費税を上げさせていただく中、社会保障と税の一体改革の中で、子ども支援システムというのを入れさせていただき、今まで子どもが置き去りだったものを、子どもの学びも含めて全世代に対しての安心を、というのは我々がもともと言い出しています。

 実は、我々のときには成長戦略もつくっています。例えば、よく誤解があるのですが、「観光立国」は我々が言い出しました。原発はもう輸出することはあり得ないと思っていますが、インフラ輸出の話も我々のときに言い出しています。これは今、課題がいろいろと出てきていますから乗り越えなければいけませんが、サ高住(サービス付き高齢者住宅)も我々のときに言い出して、それが地方で、公共事業のようなかたちで一定程度、経済を潤すことにもなっています。

 つまり、我々はもともと、「全世代型」を地域も含めてどのように新たなかたちでつくっていくかということについて、政権のときにトライしだしたのですが、途中で頓挫しているわけです。我々は民主党政権のことが全ていいとは思いません。失敗したことも含め、そのことも受け継ぎながら、と考えています。別に与党側の「全世代型」に我々が合わす必要はなく、もともとは我々が言い出したという認識でいます。

北朝鮮を核保有国として認めない場合に起こりうる、軍事行動の可能性にどう対処するか

工藤:ということになると、それを含めた財源をどうしていくかという話を出していかなければいけないことになります。 

 あと二つ、北朝鮮と憲法改正の問題についてお聞きします。立憲民主党は「北朝鮮問題の平和解決」とおっしゃっているのですが、ここまで非常に大きな、つまり北朝鮮が事実上の核保有国になってしまっている状況の中で、これをどのように平和解決していくべきだと思っているのでしょうか。また憲法改正については、「国民との約束」を読むと、否定しているわけではないのですね。

福山:北朝鮮の問題は、国際社会が、アメリカも中国も韓国も、国連も含めて、核開発も含めた北朝鮮の挑発行為、脅威に対しては非常に難しい局面を迎えています。そのことに対して、私たちも現実的な安全保障環境の中で対応していきたいと思います。平和的解決というのは、ただ「対話がいいのか、圧力がいいのか」という二者択一の問題ではありません。少なくとも、例えばアメリカが軍事的オプションを取れば、一番被害が出るのは日本と韓国・ソウルになるわけです。そのことは、これまでのレポート、そして1994年に北朝鮮とアメリカの関係が大変緊張したときにもあるように、今ですと数十万人規模で日本もソウルも被害が出る可能性がある。このことは避けなければいけないということは、第一の問題だと思います。

 これを避けるために何をしていくかということだと思いますが、ウルトラCのような解決策はありません。日米韓の防衛協力を含めた体制をつくらなければいけませんし、中国に対して北朝鮮に圧力をかけるような制裁を求めることも重要です。しかしながら、例えばロシアとの関係でいえば、あれだけ安倍総理がロシアと何度も対話している割に、今回の北朝鮮への制裁についても、ある意味ではロシアにあっさり袖にされたわけです。ああいったことも含めて、安倍政権の北朝鮮政策について、難しい局面ですが、全てが全てうまくいっているとは限りません。そういう安全保障状況の現実的な対応の中で、我々はやっていきたいと考えています。

工藤:確かに、戦争という最悪の状況にならないというのは分かるのですが、北朝鮮問題で、党としての基本的な姿勢を知りたいと思います。北朝鮮を核保有国として認めるということはありえないわけですよね。では、それを認めないための圧力という話になります。その圧力を強めた結果、平和が脅かされる可能性があるかもしれない。それに対しては、どんなことがあっても戦争は党としては認めないということなのですか。

福山:今の「どんなことがあっても」という仮定がよく分からないのです。アメリカがシリアにミサイルを撃ち込んだときも、日本に事前に協議があったかどうか、はなはだ分からない。アメリカは今、マティス国防長官とマクマスター大統領補佐官という軍人が意思決定に一定の影響力を持っていますが、軍人ほど、戦争に行くことに対する一定の制約が働く可能性はあると思います。私は、軍事的オプションを取れば日本とソウルに非常に被害が出る可能性があるし、そのことは、経済的にも、今の経済の前提は完全に崩れることになります。そのことに対しては、避けるために何をするかを考えるのが筋だと思います。

工藤:いや、万が一の話をしているのではなく、政策目標の優先順位を「核保有国として認めない」ということに置くのであれば、様々な可能性がありうるということを言っているのです。

福山:様々な可能性があることは否定しません。していないけれど、そのことの中で、軍事的オプションを取るとソウルや東京に被害が出て、経済もぐちゃぐちゃになるので、それは避けなければいけない。一方で核保有国として北朝鮮を認めることはできないというのも、当然、隣に核保有国ができるなどというのはありえないことですので、それについてははっきりしていると思います。

工藤:それでは、まず湯元さんからどうでしょうか。

湯元:一番目の公約である「生活の現場から、暮らしを立て直す」というところを拝見しますと、与党側の政策とけっこう類似しているところもあると思います。長時間労働規制、最低賃金引き上げ、同一労働同一賃金、あるいは保育士・介護士等の給与引き上げなどです。これはやるべき良いことなので、同じだから悪いという意味では全くないのですが...。

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教育への支援を通して、生活の現場から個人消費を回復する

福山:与党側が我々の政策に寄ってきているのです。我々がもともと持っていた政策に与党側がすり寄ってきて、類似のことを言い出しているというのが我々の認識です。

湯元:逆に、与党側と違う政策として、診療報酬・介護報酬の引き上げとか医療・介護の自己負担軽減、あるいは赤字・中小企業に対する社会保険料の負担減免。高校授業料無償化も所得制限を全て撤廃するということですから、全国民、子どものいる家庭に無償化するというお話だと思うのですが、これらの政策は今の社会保障財源がさらに膨らんでいくことを意味します。公約の最後に、「所得税、相続税、金融資産課税といった所得再配分の強化」」と書かれていて、これは増税だろうと思いますが、この増税によって、今、立憲民主党が掲げている政策の財源に充てるという理解でよろしいのでしょうか。

福山:趣旨としてはそういうことです。おそらく、消費税を将来的に上げさせていただかなければ財源としては不足するという認識でありますので、将来的には、財源として消費税も含めて、今、湯元先生がおっしゃった再分配機能の強化をしていかなければいけないと考えています。

湯元:特に、安倍政権の下では、十分賃金が上がらず個人消費の回復が進んでいないというご指摘がありました。その通りだと思うのですが、立憲民主党としては、金融・財政政策ではなく他にどういうやり方で、個人消費などを着実に回復していくような姿を考えておられるのでしょうか。

福山:児童手当とか、大学授業料の減免なり奨学金の強化とか、就学前教育の無償化がどこまでできるかは分かりませんが、そういったことは、各家庭に対しては消費の意欲を促す一つのきっかけになると思います。もう一つ、高校の無償化で所得制限を廃止するということですが、この財源はたぶん500億円以下になるので、実は財源的には全体から見ればそれほど大きい比重ではありません。これは私たちと自民党とが最も考え方の違うところです。

 例えば、お金持ちのお家があって、授業料を払っている。所得の低いご家庭があって、授業料を払っていない。子どもの世界で、「あいつは授業料を払っていない家だ」「あいつは授業料をちゃんと払っている家だ」と。子どもの世界に、親の所得によって区別や差別を持ち込むことを、我々は避けたいと考えています。例えば、今、お金持ちの家の子どもさんで授業料を払っていても、親の事業が失敗して授業料を払えない方の子どもになる可能性があるし、あるいは親が離婚、また死別をするとか、人生はいろいろな状況で変わるわけです。そういう状況の中で、まず子どもたちに対しては、親の年収や地位といったものに対して子どもの世界で区別、差別の状況をつくらない。子どもたちの可能性については社会全体で応援をするというのが私たちの考え方なので、そこで所得制限する考え方をとらないというのが我々のもともとの理念です。そこが最も自民党とは違うことだと思います。

工藤:それは私立も同じですか。公立だけですか。

福山:私立も全額ではありませんが補填します。私立は自分で選択していることがありますから、公立高校の無償の分について、私立については補填をするというのが、我々のときの高校無償化のスキームでした。私学でも公立でも、うちの家庭は高校無償化だといって、来年、高校の授業料はこれくらいかかるなと算段していた。少し貧しめの所得の低いご家庭があったとして、来年、高校の授業料が要るなと思っていたものが要らなくなるとなれば、この分は他の消費や、他の子どもたちや、ひょっとしたら二人目の子どもを産みたいというような気持ちになるかもしれない。私たちとしては、そういう考え方の中で安心や消費を促していきたい。それが、ある意味で言えば、生活の現場から消費を上げていくという考え方です。

低所得者への支援だけでなく、中間層も含めたユニバーサルな社会保障を提供する

小黒:憲法における首相の解散権制約と、経済の循環との関係でお伺いします。前置きとしては、「立憲」という名前にある通り、憲法があって、それに従って法律が議会に上がってきて、可決して回っていく。政府が従来やってきたのは憲法9条などもそうですが、憲法の枠内かギリギリのラインか、少し超えているケースもあると思いますが、そこで法律を通していって現実に適応していくという流れがあったわけです。しかし、基本的に憲法の役割を考えると、憲法というルールがあって回っていく。

 そうすると、解散権などもマクロ的な景気変動と関係していて、自分の政権にとって一番いいタイミングで解散すると選挙に勝ちやすくなるわけです。今回、各党が出しているマニフェストもそうなのですが、最初に選挙をやって、通常は抜き打ち解散さえできなければ、任期を全うしたかたちで、最後にパフォーマンスを評価できるわけです。各党もそれに従って動いていて、最終的に公約を出していく。そのような循環になると、もう現実に起こっていることですが、だいたい、解散総選挙が終わると補正予算が組まれたりして、財政が膨らむわけです。公約には解散権の制約と書いてあるわけですが、そういうことを全て意図したかたちで考えているのか。その背後にあるのは、要するに市民が政策を統制していく。どこのところをターゲットに置いているのか分からないのですが、中間層の崩壊とか分断という話があるので、どちらかというと、困っている人たちがいて、そこにどんな人も制度をスムーズに利用できるユニバーサルのような社会保障を構築していく。財源もある程度限られているから、全部を見ることはできない。でないと歳出がすごく膨らんでしまうので、最低限ここをやっていく、と。

 そういう意味では、どちらかというと限られたターゲット層を向いているのだけれど、政治との関係でいうと、市民が直接コントロールしながら、景気変動なども含めて今起こっているいろいろな歳出膨張についても全体として統制していきたい、と。そのような方向性を持っていると理解してよろしいですか。

福山:非常に適切なコメントをいただいたと思います。一点だけ申し上げれば、困った人を助けるという発想よりも、ユニバーサルの方がどちらかというと我々のイメージとしては強いです。つまり、中間層も含めて一定のサービスを安定的にお渡しする。

小黒:社会の変動が、正規とか非正規とか、会社をクビになるとか、あるいは高齢者で仕事をしている人もしていない人もいるのですが、いろいろな環境変化があって、これからグローバル化の中で非常に変動が激しくなっているので、ユニバーサルのような社会保障を、薄いけれど安心できるセーフティネットを主体につくっていきたいということでしょうか。

福山:セーフティネットというと、日本の社会の中では若干誤解があるのですが、まさにおっしゃる通りで、ユニバーサルに、中間層も含めてサービスを提供したいと思っています。つまり、民主党政権当時の子ども手当と高校無償化は所得制限がありませんでしたから、中間層と言われている、例えば年収400~700万円の層も、子ども手当や高校無償化の対象になったわけです。逆に言うと、「こんなところに渡す必要はないじゃないか」と言う議論があるかもしれませんが、そこにも渡すことによって、その子どもたちの可能性、また、そこでの可処分所得が増えることによって旺盛な消費意欲が出てくる。

 もっと言えば、中間層から税を取って、低所得者とか困っている人に何らかのかたちの福祉をするという発想ではないのです。そうすると、中間層の方と低所得の方との分断が行われるわけです。「中間層は一生懸命働いて稼いでいるのに、低所得者へ持って行くのか」と。そうではないのです。我々は、もちろん負担もいただくのですが、その分は中間層の方も含めてユニバーサルにサービスを提供してきたいと考えています。

高齢化の中で最適な税負担の組み合わせをこれから議論する

小黒:そこは核心になるのですが、そうすると、所得が高い人たちに負担してもらって...

福山:その中でいう消費税というのは...

小黒:消費税ではなく、所得税とか相続税などの累進的(高所得者ほど負担が重くなる)な税ですよね。負担をそれなりにできる人に負担してもらって、それを薄くユニバーサルでまいていくということでしょうか。

福山:消費税は負担できる人を限定していません。だから、消費税も所得税・相続税も含めて、組み合わせは何が最適かをこれから議論しなければいけないのですが、今、法人税を「下げる、下げる」という議論があって、消費税だけを上げるという議論はちょっとアンバランスだと思っています。だからといって、今のように内部留保が高まっているところにいきなり税金をかけるというのは、二重課税で良くないと思っているので、そのことも含めて、トータルで、何がこの高齢社会で、最終的には財源が膨らんでいくことがある程度見える中で、最適な税の構造はどういうかたちなのか。サービス、出口はユニバーサルなのです。でも、その財源は、今のような構造ではちょっと国民の理解が得られにくいと思うので、そこの構造についてもメスを入れて財源の議論をしていきたいと考えております。

工藤:最後に、たぶん多くの人たちが関心を持っているのは、今回の結党の経緯です。つまり、我々が思ったのは、民進党の議員が皆で希望の党に移るということでした。ただ、そうはならず、そこに政策的な縛りがあった。皆で移るというやり方について、過大に期待していたということなのか、それが今の状況を招いたのか。それとも、今回の状況によってある程度考えが整理できたというかたちで、良いかたちで政治勢力が新しくバージョンアップし、より性格が鮮明になったのか。どのようにご覧になっていますか。

福山:今のお話は、外からご覧いただいた方がそのことを議論されるのは、どのようにされても仕方ないと思います。しかし、今、立憲民主党を結党して選挙で前に進んでいる我々からすれば、今申し上げたように「右でも左でもなく、前へ進む」ということですから、過去の経緯とか、今結果として出てきたものが良かった悪かったのかを私たちが当事者として申し上げるのは、今はあまり適切だと思いませんし、今はとにかく、立憲民主党の結党理念や政策を国民の皆さんに訴えていくだけだと思っています。

工藤:分かりました。今日は早朝から来ていただき、どうもありがとうございました。

【対談】「今回の選挙で各党は日本の課題にどう向かい合っているか」

⇒和田政宗氏 (自民党広報本部副本部長)

⇒石田祝稔氏(公明党政調会長)

⇒細野豪志氏(希望の党)

⇒福山哲郎氏(立憲民主党幹事長)

⇒笠井亮氏(共産党政策委員長)