【対談】「今回の選挙で各党は日本の課題にどう向かい合っているのか」笠井亮氏(共産党政策委員長)2/2

言論NPO撮影・作成

 第一部で、笠井氏の公約の説明を踏まえつつ、共産党の公約に代表の工藤泰志が切り込みます。加えて、言論NPOの評価にかかわっていただいている湯元健治氏(日本総研副理事長)にも加わっていただき、共産党の公約を掘り下げてみたいと思います。

国民の不安に対して、共産党が進める共闘のポイントは

工藤:ありがとうございました。かなり体系的に説明してもらったので、これをどう有権者サイドで議論していくかという知恵が必要ですが、何点か聞きながら、我々目線で共産党の政策を読み直していきたいと思います。

 まず今、立憲民主党と選挙協力して共闘しているということですが、この政党と、共産党の持っている政策の何を合意したのか。先ほどの5本の柱のどこが共通しているのか、教えてほしいと思います。

笠井:冒頭でも、私たちの総選挙への姿勢を二つ示しました。一つは、安倍政治に退場の審判を、ということ、もう一つは、市民と野党の共闘の大義を掲げて、力を合わせて安倍政権に立ち向かうということです。市民連合として、(共産・立憲民主・社民・自由の)野党4党の共通政策として、7項目の提案をしています。

 一つは憲法9条改正への反対。二つ目は、秘密保護法、安保法制、共謀罪法など、安倍政権が行った立憲主義に反する諸法律の白紙撤回。三つ目は福島事故の検証を経ない再稼働を認めず、新しい原発ゼロの社会をつくる。四つ目は森友、加計、南スーダンの日報隠ぺいについて徹底的に追求して、透明性の高い行政を実現する。五つ目にこの国の全ての若者、子供が健やかに育って働くための保育、教育。六つ目は雇用の不安定化とか強制労働を促す働き方改革に反対して、8時間労働をすれば普通に暮らしのできる社会を実現する。七つ目にLGBT(性的少数者)への差別撤廃、女性への雇用差別、賃金格差を撤廃して、選択的夫婦別姓、議員男女同数などを実現。この7項目を、市民連合として野党に一緒にやらないかと言って、立憲民主党も「これでいいですよ」と合意しました。したがって、このような大義で安倍政権に立ち向かうという点で一致しています。それを具体的に、共産党ならではの点も含めて、政策として掲げているということになります。

工藤:少なくともこの7項目で共闘しているということは分かりましたが、少なくとも国民が一番不安に思っているのは、それらの項目とは違うと思います。言論NPOの世論調査では国民の6割が日本の将来に不満を持っていますが、理由として一番多いのが、人口減少、高齢化に対する有効なプランが政党から出てこないこと、それから、財政再建、経済の問題、北東アジアの北朝鮮問題も含めた安全保障の4つです。国民の6~8割がそう思っているのだから、それに対して選挙で競うべきだと思っています。今の安倍政権の諸問題を変えるというのは筋としては成り立つので、それはそれでいいのですが、まず我々はその四点を聞きたいと思っています。

「対話のための対話は無意味」という安倍政権の姿勢を共産党はどう見るか

工藤:まず北朝鮮について、少し安倍さんへの認識が違うのではないでしょうか。安倍さんは「対話のための対話はダメだ」と言っています。昔、北朝鮮と色々な対話をやったのに、その間にどんどん核兵器を作った、と。圧力を通じた対話のあり方は考えているはずですので、対話を否定しているわけではありません。

笠井:安倍首相自身が「対話のための対話は意味がない」と言ったのは良いのですが、では、どういうふうになったら対話するのかというと、「北朝鮮が非核化の約束をしない限り対話は一切ダメだ」という話を強調しています。94年のクリントン政権では本当に危ないところまで行ったので、金泳三大統領が「そんなことで軍事を使ったら大変な犠牲が出るからやめてくれ」というプロセスがありました。2000年代にもそのような状況があって、6か国協議の合意などがありました。

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 結局、アメリカはそのような合意をし、北朝鮮の側でもその約束を裏切ってきたということはありますが、その後を見ると、オバマ政権になって8年くらい、戦略的忍耐ということで、北朝鮮が非核化するまで話し合いは一切しないという態度を取りました。それによって事態が悪化してきた。安倍さんはその延長にいるので、「北朝鮮が完全に核開発をやめるまで話し合いをしない」というなら、これは相当大変な話です。偶発的であっても、ひとたび軍事衝突に至ったら、お互い自制するのだと。挑発をやめて、米朝が話し合うということでやっていかないと、圧力、圧力と言っているだけでは効果ないのではないでしょうか。

工藤:圧力というのは国連決議による圧力です。これに基づいて、今度は中国が原油をはじめいろいろなものの輸出を抑えていっている。そうしないと北朝鮮は対話に乗らないだろう、ということが国際社会で言われているのです。

笠井:私も衆議院の外務委員会、拉致問題特別委員会、その問題に関してはけっこう議論してきたのです。まず、国連の経済制裁は、抜け穴なく十分にやるべきです。それがないと、結局、抜け穴から北朝鮮の核開発を助けることになるから、それは必要です。それと一体に対話することもやらなきゃダメだろうということです。国連も、マクロンも、メルケルも、そのように言っている。安倍さんにはそれがない。

工藤:安倍さんは経済制裁についてはかなり頑張ってるいますよ。

笠井:でも、対話はやっていない。

工藤:対話は制裁によって圧力をかけた結果です。彼らは核兵器を持っていて、もう核不拡散の段階ではありません。核を持っている国に対話だけというのは私は賛成できない。

笠井:経済制裁と一体でやらないといけません。安倍政権は制裁一辺倒で、軍事的手段もOKだと言っているのがダメです。

大企業・富裕層への増税と歳出改革、経済成長で「全世代」への社会保障給付は賄える

工藤:マニフェストと全体の立て付けとしては、我々の評価基準にかなり合致しています。つまり、財源問題もあるし、政策メニューもあります。

 団塊の世代が後期高齢者になる2025年問題で、社会の光景が一変します。どんどん高齢者が増えてきて、それを賄うための財源があるのか。さらに、彼らは育児だけでなく、介護もしなければなりません。国民はそこに不安を抱えているのですが、それに対して何をするのでしょうか。10項目の重点目標においても、社会保障と高齢化、人口減少に対して共産党はこうします」というのが弱い気がします。

笠井:この辺はかなり力を入れたつもりで、社会保障については、税金の改革、それから、予算の改革というところの中で、「社会保障、教育、子育て、若者優先」というふうにしています。

工藤:今年から、団塊世代の介護・医療給付だけでも2兆円ぐらい増えます。その金を誰がまかなうのかということで、自公政権では、消費税が一つの財源だと言っていますが、共産党はそれを凍結して、別の形だと言っているのでしょうか。最終的に政権ができてこのようなことをするというのは良いのですが、今、財源捻出に向けた時間がない中で、消費増税という政策手段はやらなくていいのでしょうか、。

笠井:先ほども、2%の増税はする必要がないということで、1兆円と4兆円の減税の話をしたが、そこは全体の中でも力を込めてやっているところです。財源確保で、社会保障、教育、暮らしに向けていくという話では、大企業・富裕層優先の政治を改めれば、歳出改革と合わせて17兆円確保できる。財源提案では細かく書いてありますが、それと合わせて、「景気回復によって国民の所得が増え、社会保障の抜本的改革に取り組む段階では、所得税に累進的に上乗せして6兆円、安定的な経済成長で20兆円程度の税収の増加が見込める」と書いています。

 先ほども、高齢者への社会保障が削られていると申し上げました。安倍さん自身が全世代型の安心感と言ったりしていますが、高齢者に偏った社会保障ではなく、高齢者にも、勤労世代にも、全世代に冷たい政治になっています。それを安倍政権が酷くした。介護の問題も、介護をする現役世代は仕事も子育てもしながら親の介護もするので、これは高齢者だけでなく全世代にわたる問題です。また、現役世代もいずれは高齢者になるので、それを見越した社会保障がどれだけ裏付けを持つかというのが重要だと思います。

工藤:今の話は分かりますが、全世代、将来の世代も含めて対応するというのでは財源が持ちません。その中で、どのように社会保障を行い、財政を効率化し、イノベーションを起こすかというのが課題ですが、共産党としては、全世代を対象としても対応ができるというのでしょうか。

笠井:そのつもりです。

経済の安定成長を進め、財政収支の対GDP比に目標を置く

工藤:もう一つ、財政再建について、現実としてこの国は1000兆円の債務を抱えていて、それで日銀の金融政策によって金利が抑えられているという異常な状況の中で経済成長を図ろうとしています。ここで消費増税をやらないとなると、また赤字国債を出すことになります。そうすると、プライマリーバランス(PB、基礎的財政収支)の黒字のめどがなくなると思いますが、どうでしょうか。

笠井:ここについては、「暮らしの充実と、財政危機打開の両立を図る」と言っています。税制と歳出削減で財源を確保しつつ、社会保障と教育の改革を進めれば、消費増税に頼らずともいいし、経済成長が起きれば、税収増で赤字国債を減らすこともできます。もちろん、これだけで毎年の財政赤字ゼロは無理だから、絶対額では、政府債務残高は増えていきます。しかし、安定的な経済成長が続けば、対GDPで見た債務残高を減少させられます。安倍首相は、2020年度のPB健全化が絶望的になったと言いましたが、大企業や富裕層への優遇税制、大軍拡によって、5兆2000億円の支出増になっています。このようなところに手を付けずに財政健全化を図れば、社会保障の乱暴な切り捨て、消費増税につながります。これは、逆に財政危機を深刻化します。したがって、共産党は、大増税にストップをかけて、財源を別の道で確保しようということを言っています。長年の自民党政権の中で無駄遣いをし、仕組みを歪めてしまったということについてはどう考えているのか、と、安倍首相自身に問いたいと思います。

内部留保の取り崩しで賃金を上げ、内需拡大による持続可能な経済成長を

工藤:もう一つ、安定的な経済成長という言葉は、自公政権、その前の民主党も使いましたが、かなり同じような成長戦略をやっています。そして、自公政権では、異次元の金融緩和に加えて、財政政策も付加しながら行ってきました。それでも、経済成長の目標を達成できていません。今のような、大企業を優遇して経済成長を高めるような仕組みでも、安定成長が図れないという中で、共産党はどうやっていくのでしょうか。

笠井:安倍政権は、アベノミクスで顕著ですが、株価つり上げと、輸出主導の成長のみでやってきました。日本は国力、国民の勤勉性というものがありますから、内需拡大で国民の懐を温めて、それで持続可能な経済を築いていくというのが大事だと思いますが、それがないがしろにされています。実質賃金も消費も減るということで、国内は冷え込んでいます。

 今、大企業に「ちゃんと税金を払え」と言えば海外に逃げてしまう、ということがよく言われます。しかし、実際に大企業が出て行くかどうかは、需要があるかないかです。やはり、企業は需要があるところに行くので、もっと国内に需要があることが大事です。そこでは、働き方の問題も出て来ます。人口減少、少子化の話もありますが、それに対しても「働き方はこれでいいのか」という問題があって、正社員は長時間労働、他方で非正規は給料が安くていつ首を切られるか分からないという中で、なかなか結婚して子供ができないということで、働き方も改める必要があります。

 あと、内部留保で実際には賃金に回さないというのではいけない。具体的に計算しましたが、安倍政権は賃上げを言いながら、逆に実質賃金を低下させました。そして、内部留保は労働者1人当たり825万円です。年平均で200万円増えています。増えた分を1~2割、賃金に回しただけでも、月額1~2万円の賃上げになるのではないでしょうか。内部留保を全部取り崩せと言っているのではなく、増えた分の1~2割だって、1~2万円の賃上げになるではないか。そのような形で政府が持続可能な目標を立ててやっていくことが、打開するカギだと思う。

北東アジアの環境変化の中でどのような立ち位置を取り、国の安全を守るために外交力をどう展開するか

工藤:結局私が何を聞いているかというと、政権を批判するだけでなく、実際に共産党が政権を取った場合に、その政策が妥当なのかを聞いています。安全保障について、北東アジアの安全保障のメカニズムは、やはり日米同盟を使ったハブ・アンド・スポークスの構造になっています。中国は中国で台頭していて、不透明な軍事拡大をし、内陸部で別の安全保障の仕組みを作り上げています。つまり、対立構造がある。そこに、さらに北朝鮮があるとなると、やはりアメリカと組んで、抑止的なものを持たないと、現実的にダメです。もしアメリカと組まないなら、中国など他の国があるが、その中でどういう立ち位置を取るのでしょうか。それから、志位委員長はこの間、自衛隊について「あくまで党の主張はあるが、最終的には国民に委ねる」と言いました。そう言う理解でよいでしょうか。

笠井:北東アジアでは、大国もあり、核兵器やミサイルを持つ国もありますが、だからこそ、この地域で平和協力をしていくということは大事で、そのときに軍事という要素がどれだけの位置を占めてくるかです。「アジアにはこういう国があるから、軍事同盟を結んで核の傘に守られた国にする」という抑止力は議論になりますが、抑止力はいざというときに使えるということと一体だったので、そうすると、お互い軍事対軍事のエスカレーションになっていると思います。

工藤:現実を見ると、南シナ海も尖閣問題も、日本がある程度発言力を持たないと飲み込まれるという危険性を感じないでしょうか。

笠井:だから、最終的にどういう発言力を持つかというと、やはり外交力が大きいと思います。軍事対軍事では戦争と破滅への道になります。なので我々は9条の精神にのっとった平和構想ということで、関係国との間で北東アジアの平和構想を提案しています。東南アジアでは実際にそういう取り組みがされていて、我々も実際にインドネシアに行ってそのような取り組みも聞いてきました。彼らも、東南アジアでできたことを東アジアレベルで、という意識を持っていて、我々もそれを踏まえて、北東アジアの平和協力構想を4項目にわたって出しました。

 一つは、紛争解決のルールなどを定めた、北東アジア規模の紛争解決平和条約。二つ目は、6ヵ国協議について、今は枠組みだけあって進んでいないということになりますが、米朝間で話が進んできたときに、これを担保するという意味での6ヵ国協議がありえるし、それを地域の平和の枠組みに発展させることも可能でしょう。三つ目は領土問題で、外交的規範を確立し、紛争をエスカレートしない。四つ目に、侵略戦争と植民地支配の反省が欠かせません。やはり、東南アジア、中国、韓国との間には、歴史問題が傷の癒えない問題としてあるので、そこは日本としてしっかりとした立場を取り、そうしたように展望をするということです。日本は複雑な状況の中でもイニシアチブを取っていくし、それができる国だと思っている。

 それから、自衛隊の存在は、我々は違憲だと思っていますが、実際に作られたものをなくすかどうかというのは、国民の合意の中でやっていくことだと思います。そういう中で、市民と野党で共闘して「安倍政権に代わってどうするか」というときに、私たちで合意してやっていたのは、憲法違反で安保法制を強行した、集団的自衛権を容認したということを、それ以前に戻そうという合意です。そういう形で野党が一致してやろうということです。

原発再稼働を認めない中、共産党は日本の電源構成をどう考えているか

工藤:あと一つ、原発の問題について、公約には「福島の事件の総括がない限り再稼働しない」と書いてありました。ならば、総括があれば再稼働していいのでしょうか。それから、再稼働は認めない、新設も認めないとなれば、原発はなくなります。そうすると、そのときの日本の電源の構造をどう考えているのでしょうか。再生可能エネルギー100%は無理です。

笠井:まず、福島原発事故の検証がないままに再稼働は認めない。検証があればいいのかという以前に、まずは検証が必要だということです。これは新潟県の米山知事も、柏崎刈羽の再稼働に当たって、検証もないのに再稼働の議論はできないと言っています。検証があったから再稼働がいいということにもならない。先ほど言ったように、避難計画がどうかという問題もあるし、自治体合意があるのかというのもきちんとしないといけませんが、少なくとも、検証のないままに再稼働は認めないというのは一致しています。

 それから、エネルギーについては、これから市民と野党で大きく議論していきますが、一つの問題として、福島原発事故から6年半経ちましたが、その間、全く原発が停止した時期も2年半あったということがあります。それでも電気は足りているということが、国民的に実感できています。節電の努力もあるし、そのような中で原発に頼らずともやっていけると分かったし、再生可能エネルギーについては、100%とはいきませんが、市町村レベルで言えば、高知県など、本当に賄えるところもあります。大分の地熱発電も、地域の必要量をはるかに上回る量を持っています。それから、再生可能エネルギーもいろいろあります。太陽光、風力、地熱、水力などありますが、大規模というよりも、それぞれの地域レベルで特性を生かした再生可能エネルギーというものを大いに生かして工夫していけば、かなりやれます。

工藤:石炭火力はどうするのでしょうか。

笠井:これは温暖化とも関連する問題です。本当に少ない量でミックスということはあり得ると思いますが、再生可能エネルギーの割合は、ヨーロッパなどと比べても日本は低すぎるので、もっと引き上げていくことが重要です。政府も、再生可能エネルギーに対して、最初は支援していたが、それが減っていって、逆の方向になってしまいました。

工藤:それでは湯元さん、専門的に突っ込んでください

人口減少により内需だけでの税収確保が難しい中、高齢化で自然に増えていく社会保障財源をどう賄うか

湯元:日本経済の問題を見ると、一つは、先進国の中でも最高のスピードで高齢化が進んでいます。今の高齢化比率も26%で先進国最高だし、これから2060年代にかけて40%までいくということですが、他の諸国でも30%まで届かないということなので、これからの数十年間は物凄い高齢化で社会保障が足りないという状況が、どの党が政権を握っても起きてきます。

 二つ目に、社会保障の財源をどう確保していくかについて、基本は経済成長、あるいは増税をして税収を増やすしかないと思いますが、増税に耐えられるだけの経済強化をしなければなりません。その点、日本の場合、内需拡大は重要ですが、それは簡単ではありません。なぜなら、人口が減っているからです。そうすると、内需を強化しながら、外需も強化する。そのためには企業の国際競争力も強化していく必要があります。そうしないと、中国、韓国、台湾などが追い上げてきて、日本もうかうかしていると大変だという局面にあります。

 そんな中で、共産党のマニフェストを見たとき、確かに消費増税には反対ですが、他の増税によって17~23兆円の財源を確保しています。これだけ財源を明確に掲げている政党は他にはないので、これは評価できます。しかし、共産党が掲げている17兆円というのは、自公政権が削った社会保障を元に戻すとか、格差を縮小するとか、教育無償化するとか、そういった課題に対する対応を意識して書かれていると思いますが、それプラスαで、本来何も改革をしなくても、高齢者数が増えるだけで増える財源というのがあります。これは、17兆円を消費税換算すると、7~9%規模です。ということは、消費税は17%。何もしなくても、私の計算ではそれくらいにまで上げる必要があるということですが、どうなのでしょうか。

笠井:まず、健康で長生きし、高齢者が増えることは良いことだという認識が前提にあります。それに加えて、少子化によって支える側が少なくなるという問題はありますが、まず、少子化の克服については、雇用とか、働き方とか、そのように少子化の克服ができる施策が必要です。

 海外に調査に行ったときにも、フランスで少子化が本当に深刻になったときは、第3子に対する支援を強めるということをはじめとして、政府が支援に乗り出したということも効いていました。当時厚労省から出向でフランスに調査に行った専門家がいますが、それらも含めて、少子化をどうするかという国家規模の取り組みが必要です。

 それから、今、社会保障について、政府が行っている自然増の抑制の4600億円だけでいいというわけではなく、年金の問題もあるので、そこのところはしっかり考えたい。

 それから、そうは言っても高齢化で社会保障がかかるだろうということですが、その財源として、消費税なのかということも問われます。消費税は、所得の低い人に負担が重い、良くない税制だし、立憲民主党も、10%は今はダメだと言っています。一方で、法人税はどんどん下げている。財源提案でも書きましたが、景気回復して、国民の所得も増えて、社会保障の抜本的改革をやれるということになると、消費税よりも、累進的(所得の低い人ほど負担が軽い)という点で、所得税となります。所得税で6兆円、安定的な経済成長により10年間で20兆円。景気回復で国民所得が増えたところで、所得税を上げて累進にするということで、消費増税をしないということです。さらに、先ほどの、大企業や富裕層への優遇税制をやめて応分に負担を求めることを考えています。

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法人税の引き下げ競争をやめるよう国際協調すべき

湯元:では、何の税で増税していくのでしょうか。日本は非常に厳しいグローバル競争にさらされていて、ヨーロッパも法人税を下げて競争力強化をしてきました。アメリカもトランプが20%まで下げると言っていて、イギリスも大きく下げました。その中で、社会保障を元に戻すということを提案されています。

 社会保障の財源はどこから生まれるかというと、グローバル競争に勝ち抜いて、外から相当の金を稼いで、経常収支を生み出していくことで、初めて家計にも所得が生まれるのです。そうすると、所得の源泉である企業に重い負担を課すと、国際収支上非常に厳しくなるし、難しいと思います。スウェーデンは社会保障がものすごく充実していますが、その源泉は消費税の25%、あるいは住民税である。非常に高いが31%もある。国民がこれに耐えられるかはまた別ですが。一方で、法人税は22%まで下げています。

 つまり、スウェーデンでは国民が納得していると思いますが、企業が稼いでくれて初めて社会保障が成り立つという考えです。他の社会保障が充実している国も基本的にそのような考えを取っているので、法人税を増税している国はほとんどありませんが、どう考えているのでしょうか。もちろん、格差の是正の観点からはあり得ますが、国際競争力を落とすという観点はどうでしょうか。

笠井:法人税については、実質的な企業負担は、世界的に見ても非常に軽いと思います。それから、法人税も各国がお互いに下げ合ってやっていくのはどうなのかという問題も、これは日本だけでなく国際協調も出てくると思うので、そこは日本政府も役割を果たすべきです。どんどん下げればいいというものでもないし、その部分で努力すべきです。

湯元:大企業への優遇税制で一番大きいのは研究開発税制ですが、こういうものこそ本来イノベーションを起こし、国際競争力をつくるために必要だと思います。それを全廃でいいのかは本当に議論が必要です。

笠井:全廃かどうかは別として、今のやり方は相当優遇しています。

実質賃金上昇に必要な生産性向上をどう実現するか

湯元:共産党の切り口は、マニフェストを見ると一番重視しているのは、格差の拡大にどう対応していくか、所得をどう再配分していくかということで、これは国民の中でも意識が強いので良いと思います。一方で、格差は是正しつつ、一定の成長もする必要があります。実質賃金が減っているということも事実ですが、実質賃金を上げるには、理論的には生産性を上げるしかありません。どうしたら生産性を上げられるか。働き方改革は、従業員の過重労働を抑える目的もありますが、単純業務に時間をかけすぎて付加価値が出ない今の状況に対して、生産性をもっと引き上げろということが、それが働き方改革の最大の目的だと思いますが、そういう意味で、どのように生産性を引き上げれば良いかについてお聞きしたいです。

笠井:やはり、そこで働いているのは人間なので、きちんと休息も取って、(退社から翌日の出社までに一定間隔を空ける)インターバル規制などもありますが、それも含めて一日の労働時間とか、人間らしく働けるようにすることが必要です。今は逆に、長時間の過密労働で生産性が低いという問題が起きています。普通に8時間働きながら、生産も増やしていくという社会になることが必要です。

グローバル化は否定しないが、経済主権を守るためルールは必要

工藤:昔は共産党の考えがかなり現実離れしているという考えがありましたが、今は現実をぶつけているので、納得できる議論もあり得ます。ただ、そのつじつまが合っていないということに疑念があるだけです。例えば、共産党は、開放された自由経済を認め、グローバル化の中でも、それを維持しつつ、国内の利益のために、格差を是正したりするために動いています。それは世界もそうです。ただ、貿易の入り口のところを保護的にするとなると話は違いますが。

笠井:我々はグローバル化は否定しません。ただ、その中でも経済主権はあるし、この前TPPでさんざん議論になりましたが、そのあたりでの調整は必要です。全部投げ出して、農業を投げ出してしまってどうするのか、と。逆に資本主義国の中でもきちんと農業をやっていけるということで、それを保護主義だからダメだと言うのではない、グローバル化の中でやっていくというのだから、各国それぞれ得意の分野があり、お互い調整しながらやっていくということなのです。ただ、少なくともルールは必要です。強い輸出国から入ってきて、一気につぶされてしまいます。

 だから、TPPでもアメリカ主導でどんどんやっていっていいのかということで議論があり、実際にアメリカが脱落してもう入らないということになりました。トランプ政権は、むしろ二国間でやって自分たちがもっと有利な形になるようにということで、二国間FTA(自由貿易協定)などを進めています。それから、トランプ政権になってから最初の日米首脳会談がありましたが、実際には、より強い国が自分たちの国に有利になるように圧力をかけるのが現状です。それに対して、これだけは譲れないということで頑張るというのは重要だと思います。

工藤:あと、国際的な秩序については、グローバルな自由とか多国間主義は守ろうという意思でしょうか。つまり、民主主義、自由といったところです。例えば、中国が南シナ海で問題を起こしていますが、法の支配などについてはどうでしょうか。

笠井:これは当然守ります。国際的な秩序は守った上で、どうするか、ということになります。それから、市場経済の中で私たちがどのようにやるかという問題があって、同じ資本主義でもヨーロッパでできてなぜ日本でできないのかという問題があります。EUは苦労もしていますが、働き方の問題とかいろいろあって、フランスやドイツで勉強しても、欧州でできてなぜ日本でできないのかという問題があります。将来どのような社会体制になるか分かりませんが、そこでルールがある資本主義というか、国民一人一人がきちんと生きていけるような社会経済を目指すのは当然のことです。

工藤:かなり現実的な話ができて驚いています。共産党が本当に政権を取るとき、綱領の問題があって、志位委員長は綱領をかなり柔軟にしていると聞いていますが、共産主義といっても世界にそのような国はなく、実際には宗教のようになっています。

まず安倍首相の横暴を正した後、どんな社会をつくるか国民合意で考える

笠井:今までに共産主義国があったかというと、自分は違うと思います。ソ連も共産主義ではありません。ソ連でも議論しましたが、社会主義の名でこんなことをされたらたまらないと批判していたら、結局ソ連も崩壊しました。歴史上、共産主義の国はありませんでした。我々は、科学的社会主義とも言っているが、かつてのソ連型とか、中国型とも違う考え方です。これまでの日本の経済社会を踏まえながら、どうなるかを考えたときに、将来的に、科学的社会主義、共産主義ということがあるだろうと思います。生産手段の社会化ということをやっていくことも考えていますが、それは将来の話で、まず現実的には、国民合意でどのような社会をつくるかは考える必要があるし、意見を出し合う必要があります。今度の総選挙では安倍さんの横暴を正して、政治、民主主義を国民の手に取り戻すのが出発点です。その先どうするかは、また意見を交わしながら考えたいと思っています。

工藤:特に2025年問題に対するプランも出してほしいと思います。

笠井:それは先ほどもけっこう言いましたが、みんなで考えながら出していきます。経済活動の中で企業の役割と責任ということもあります。私は、大企業にとっても我々の提案がプラスになると思います。働き方なども含めてそうだし、大企業への応分負担の問題によって、国民の懐も温まり、内需も増えるということもあります。それから、この国でこれだけ人口と勤勉さがあって、その日本の経済力を生かすということはあります。そのことは大企業にもプラスになります。

工藤:長い時間ありがとうございました。

【対談】「今回の選挙で各党は日本の課題にどう向かい合っているか」

⇒和田政宗氏 (自民党広報本部副本部長)

⇒石田祝稔氏(公明党政調会長)

⇒細野豪志氏(希望の党)

⇒福山哲郎氏(立憲民主党幹事長)

⇒笠井亮氏(共産党政策委員長)